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2016年3月11日 (金)

欺瞞

 今日行われた東日本大震災五年追悼式において総理大臣は,

被災地では、いまだに、多くの方々が不自由な生活を送られています。原発事故のために、住み慣れた土地に戻れない方々も数多くおられます。被災地に足を運ぶたび、「まだ災害は続いている」、そのことを実感いたします。その中で、一歩ずつではありますが、復興は確実に前進しています。住まいとともに、なりわいの再生も本格化しています。
(時事通信 2016/3/11 15:47配信)

と述べた.

 また追悼式に先だって THE HUFFINGTON POST は,東電福島第一原発に勤務する井手愛里という女性社員にインタビューし,

井手さんは廃炉に向けて少しずつ前進していると強調した。
「『あの地域は、放射線量が高くて被曝するんだろう』と思われるかもしれない。でも、APD(線量計測器)では計測されないほど低い数値のところもあるんですよ」

(2016/3/7 17:46)

との発言を掲載した.
 東電福島第一原発は,どのような状態にすれば「廃炉」としてよいのか.またその状態にするための技術を我が国は開発可能なのか.この基本的な問題について政府は議論すら行っていないのが現状だ.
 東電に廃炉化を進める技術がないことは,この五年の時間経過の中で明白になってしまった.しかるに総理大臣は追悼式辞で《一歩ずつではありますが、復興は確実に前進しています》と語った.原発事故処理はあの日から一歩も前に進んでいないことが誰の目にも明らかだろうに.
 また,発言に責任持つ立場にない一介の東電社員が《廃炉に向けて少しずつ前進している》と語り,またそれを THE HUFFINGTON POST は無批判に掲載した.「廃炉」とはどのような状態を言うのか.そのために必要な技術はどうやって開発するのか.目的地が不明なのに,到達手段が不明なのに,人は《前進》できるものなのか.それを THE HUFFINGTON POST と井手愛里氏は国民に説明する義務がある.

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