『日本人はどこから…』
先日 (2/14),テレビ東京で「林修が驚いた!46億年の地球博物館 ~恐竜vs人類~」という特別番組があり,その中で,出演者の海部陽介氏 (国立科学博物館人類史研究グループ長) の新刊著書『日本人はどこから来たのか?』が紹介されていた.
それで早速読んでみたので,以下に感想.
人類学や考古学に特別な関心のある人は除いて,自然科学に関するニュースには一通り目を通しているというレベルの人 (私と同じような一般人) は,自然人類学においては,とっくの昔に「アフリカ単一起源説」が定説になっていると思っているのではないだろうか.一般向けの科学書やこれまで放送されたNHKの科学番組で「多地域進化説」(Wikipedia【人類の進化】参照) に立っているものは一つもないと思われる.
しかるに『日本人はどこから来たのか?』に
《「最初の日本列島人は海を越えてきた」。地図上の遺跡分布を分析すれば自明とも言えるこの興味深い事実は、最近まで見過ごされてきた。その理由は、おそらく学界にホモ・サピエンスのアフリカ起源説が浸透していなかったことにあるのだろう。》(下線はこのブログ筆者による)
と書かれているので大変に驚いた.(同書 p.128 ほか) それで Wikipedia を調べてみたら,今でも「多地域進化説」を主張する研究者がいるらしい.それどころか,Wikipedia は「多地域進化説」は少数意見と書いているが,上の引用のように,海部氏によると「最近まで」「ホモ・サピエンスのアフリカ起源説が学界に浸透していなかった」というのだから驚天動地だ.人類の起源探求における遺伝学的アプローチがあげた華々しい成果が,実は本家本元である人類学の学界に「浸透していなかった」というのは本当なのだろうか.
その点は「へえ~」と思ったが,海部陽介氏はフィールドワークをする研究者ではないようで,それ以外の記述で『日本人はどこから来たのか?』に感心するところはなかった.
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