恋累心中
週刊文春 (1/14号) の「ミステリーレビュー」(筆者は千街晶之) は三上延『江ノ島西浦写真館』と米澤穂信『真実の一○メートル手前』を取り上げていた.このレビューで紹介された作品をいつも買うわけではないが,今回は二冊とも買うことにした.『江ノ島西浦写真館』は単行本を,『真実の一○メートル手前』は Kindle 版である.
千街晶之の採点はどちらも★★★★で,あまり高い評価ではない (絶賛お薦めの作品は大抵の場合,評点★★★★1/2がつけられる) が,米澤穂信は読んだことがないので,まあ試しに読んでみようというところ.(三上延の『江ノ島西浦写真館』は,レビューの評点は無視して著者買いだ)
さて『真実の一○メートル手前』.
例によっての小言だが,どうして「十」を「一○」と書くのだろうか.なぜ「十」ではいかんのか.
しかも『真実の一○メートル手前』の副題が “How Many Miles to the Truth” だと.表題と副題のニュアンスが違いすぎて,読者は首を傾げざるを得ない.
それから,この短編集『真実の一○メートル手前』に含まれる六つの短編のうち,「恋累心中」と「名を刻む死」には,致命的ではないが,必要な説明が欠けているという瑕疵がある.千街晶之は「ミステリーレビュー」の中で《著者は三十代にして、何を書いても上手すぎるという恐ろしい境地に達したようだ》と褒めているが,ちょっと褒め過ぎだろう.もう一,二冊読んでみるが,そこにも同じ種類のミスがあるようなら,米澤穂信はミステリー作家としてはだめだろうと思われる.短編で瑕疵があるようでは,長編はボロボロで破綻してしまうからだ.
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