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2016年1月31日 (日)

飲食店の素人批評

 例えば私が「今日は電車やバスを乗り継ぐなどして一日中あちこち散歩してみようか」と思いついたとする.そんな時,昼飯なり夕飯なりをどこで食うかと思案する際に,ネットの情報サイトを覗くことが多い.「食べログ」とかだ.
 料理ジャンルや○○駅周辺などの条件を指定して検索し,結果を閲覧するとレビュアーの投稿した記事が掲載されている.全国どこでもそうだと思うが,私の住む地方でも常連の投稿者がいて,そのうちの一人がかなり高く評価している店があったので,先日出かけてみた.そしてその店の戸を開けて入ったとたん,私は思わずオッと声を出しそうになった.店の中に異臭が立ち込めていたのである.

 私は食品企業の現役会社員のとき,各工場における食品衛生を統括する本社部門の長をしていた.どこの食品会社でも同じだと思うが,本社の部門長とはいえデスクに居てばかりでは仕事にならない.品質事故が発生すれば徹夜してでも製造現場で陣頭指揮をする.これがいわゆる現場主義というやつで,従って指揮官が部下たち以下のスキルしか持っていないのでは,戦闘部隊に信用されない,ただのお飾りになってしまう.
 私は定年退職した身だが,そういうスキルは簡単には錆つかないものらしく,上に書いた店の中に立ち込めていた異臭が何であるかを即座に判定した.それはある種の昆虫の死骸から生じる悪臭であった.

 ありがちなことであるが,食事を提供する店の経営者や従業員に衛生観念が欠けていて,その昆虫が大発生したのに放置して適切な対処を怠ると,天井や仕切り壁などの中の空隙に巣を作り,そこに大量の昆虫死骸が蓄積していく.そして極めて特徴的な臭いの揮発性イオウ化合物が室内に発散するようになるのである.
 そこまで事態が悪化することは希であるが,もしもそうなってしまったら,仕切り壁や天井をはがして清掃しなければならない.
 この清掃は衛生専門業者にやってもらう必要がある.屋内工事が必要だからといって,そこら辺の工務店に事情を説明しても引き受けてはもらえないだろう.大量のあの虫の死骸を見たら,男でも気の弱い人なら卒倒しかねないからだ.

 かわいそうだが,上に挙げた店はいずれ客足が遠のくであろう.
 そもそも私の見たところ店主も従業員も,客に食事を提供する者としての基礎ができていないようであった.特に店主だが,私が店に入った時,まるでどこかへ遊びに行くような洒落た格好をしていたのである.
 いや,店の者がいくら洒落た格好をしても構わぬが,それは衣服が清潔で店内が衛生的であってのことだ.テレビに出てくる一流の料理人が,フレンチだろうが和食や中華だろうが,白い厨房服を着てきちんと帽子を着用しているのは,清潔ということの大切さを熟知しているからである.

 「食べログ」の話に戻るが,昨年末や今月の投稿で件の店に星四つの高い評価をつけているレビュアーたちがいる.あの酷い異臭が発生してから数ヶ月は経っていると思われるのに,そのレビュアーたちは異臭のことに触れていない.ほんとに店に行って書いてるのか? 元々私は「食べログ」を店のある場所と営業時間などのデータを確認するために閲覧していて,素人たちのレビューは信用していないのでどうでもいいのだが.

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