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2016年1月19日 (火)

猫本と蕎麦 (二)

『江の島ワイキキ食堂1』(岡井ハルコ,少年画報社) と『猫なんかよんでもこない。』(杉作,実業之日本社) を入れた有隣堂の袋を下げて,私は蕎麦屋「あいづ」のドアを開けた.
 それは丁度正午であった.
 しかし日曜日の広~い店内に客は二人 (二組ではなく) しかおらず,私が三人目の客なのであった.
 ざっと四十席はあろうかという店内に客三人.この静かな店内を見渡して,店に入る直前までは天丼を食うと決めていた私は突然に考えを変えた.
 酒を飲むのである.
 普通,蕎麦屋の昼飯時というものは,客が入れ替わり立ち替わりして店員も忙しく働いていて,そんな時に酒を飲むのは変人である.迷惑な人である.
 しかしこの蕎麦屋「あいづ」は,注文の品が運ばれてくるのを静かに待つ先客が二名いて,二人の若い女性店員は伏し目がちに奥の壁際に立っているのであった.
 千載一遇.
 蕎麦屋で酒を飲むのによろしいのは昼飯の客足が途絶えた午後三時から,夕刻五時頃にかけてである.それを過ぎると夕食を求める客が店に入ってきて,のんびりと昼酒を飲んでいる客は,彼ら真っ当な人々の目障りとなる.
 つまり要するに,蕎麦屋の酒は飯時を避けるべきものなのである.
 なのに昼飲みの機会が,私が望んでいたわけではないのに,向こうからやってきたのである.
 去る天丼を追わず.来る正一合は拒まず.
 蕎麦茶を運んできた若い女性店員に私は言った.
「あー,菊正の一合と板わさをください.それから天ざる」
(続く)

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