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2015年12月14日 (月)

片岡義男『歌謡曲が聴こえる』(補遺)

 少し前に書いた記事《片岡義男『歌謡曲が聴こえる』()》で,書き落としたことがあったので補足しておく.

『歌謡曲が聴こえる』(新潮新書) の p.231 で片岡義男はこう書いている.
そのようにして彼 (江分利万作註;ピンク・マティーニトマス・M・ローダデイル) は、美輪明宏の『黒蜥蜴の唄』や由紀さおりの『夜明けのスキャット』、さらにはマヒナ・スターズの『菊千代と申します』を、発見した。

 ここにある由紀さおりの『夜明けのスキャット』は,Wikipedia【夜明けのスキャット】
盗作説
1970年、日本テレビ系『巨泉×前武ゲバゲバ90分!』にて、大橋巨泉は「夜明けのスキャット」と「いいじゃないの幸せならば」をピアニスト中島一郎に弾かせた上、サイモン&ガーファンクルの「サウンド・オブ・サイレンス」とサンバの名曲「クマーナ」を弾かせ、「これは明らかに盗作である」と言った。対象が1969年のレコード大賞受賞曲だったため、巨泉のこの指摘は大きな話題を呼んだ。
1970年3月28日付の新聞で、作曲家の塚原哲夫は「もし盗作でないというなら、訴えたまえ、いずみ君。それが出来ないならレコード大賞は辞退すべきだ」と呼びかけたが、いずみたくは何も反応しなかった。巨泉は2004年の自伝の中で「今やいずみさんもこの世にないが、これもボクは主張を変えていない」と記している。

と記述されている.ネット上でも『夜明けのスキャット』は盗作であると書いたブログやサイトがゴマンとある.
 しかし片岡義男は『歌謡曲が聴こえる』の中で,このよく知られた盗作説を無視している.私も片岡義男と同じで,『夜明けのスキャット』は盗作だとは思っていない.楽譜上では似ていても,これだけ曲想が異なれば盗作云々は問題にならないと思う.

 ところが世の中には鬼の首を取ったように『夜明けのスキャット』盗作説を振りかざして由紀さおりを罵倒している人がいる.
 その一つが《澎湖島のニガウリ日誌》.
 このブログから一部を引用しよう.
これを見ると、私の意見は、独りよがりではないことが分かる。由紀さおりが歌う「1969年」は、「夜明けのスキャット」がヒットした年。この年は、学園紛争が最高潮に達し、東大、東京教育大学(現・筑波大学)の入試が中止になった。このころ、青春時代を送った世代にとっては、「夜明けのスキャット」は懐かしい歌というよりも、悪夢を思い出させる亡霊のような歌と言っていい。しかも、当時の日本は、今の中国のように平気で米国産品をパクッていたという、動かぬ証拠がこの曲だ。今になって、由紀さおりが外国で「夜明けのスキャット」を歌うことは、「国辱」に近い行為だと言っておく。このことを当時を知らない世代に伝えなければならない。

 「国辱」とはまた随分と大時代な言葉を使うものだ.これだけで頭の中身が見て取れるが,しかも《このころ、青春時代を送った世代にとっては、「夜明けのスキャット」は懐かしい歌というよりも、悪夢を思い出させる亡霊のような歌と言っていい》などと見てきたような嘘を書いている.そんなことを誰から聞いたんだ.少なくとも私の高齢な友人たちは『夜明けのスキャット』を懐かしみこそすれ,誰も《悪夢を思い出させる亡霊のような歌》だなんてことは言わない.

 ま,それはそれとして,若いやつが勝手なことを書いているなあというだけのことだが,この《澎湖島のニガウリ日誌》なるブログの筆者は,『夜明けのスキャット』盗作説を補強するために,記事中に YouTube から動画ファイルを違法に二つ貼り付けている (2015年12月14日現在;当該ブログの筆者が修正したときのために事実確認した日時を記しておく).サイモン&ガーファンクルの『サウンド・オブ・サイレンス』と『夜明けのスキャット』だ.この二つを聴き比べれば盗作だとわかるというわけだ.
 ところがこの動画『サウンド・オブ・サイレンス』は元の投稿から音源が削除されてしまっている.また動画『夜明けのスキャット』は著作権法違反であるとして投稿が丸ごと削除されている.
 つまり《澎湖島のニガウリ日誌》の筆者は『夜明けのスキャット』が盗作であることを主張するために,盗作で作られた動画ファイルを,さらに盗用しているわけだ.(爆笑)
 馬鹿につける薬はないなあと,爆笑しつつしみじみ思う次第である.

 ちなみに,由紀さおりとトマス・M・ローダデイルのコラボCD『由紀さおり ピンク・マルティーニ 1969 』が米国で盗作を指摘されたとは寡聞にして聞いていない.また米国音楽事情に詳しい片岡義男が『夜明けのスキャット』盗作説に与していないところをみると,米国人は『夜明けのスキャット』盗作説を問題にしていないと思われる.

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