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2015年12月 4日 (金)

時には

 NHK山形放送局から放送された夕方のニュース内の天気予報で,気象予報士の岡田みはるさんが泣きだして原稿を読めなくなったという事態が発生した.
 動画を見ると,事前の打ち合わせと全く異なるカメラ操作が行われ,そのために岡田さんは原稿が読めなくなったと思われた.
 そしてこのことがネット掲示板などで流布され,ちょっとした話題となった.
 掲示板の書き込みによると,局内で岡田みはるさんはいつもイジメにあっていて,今回の異常なカメラ操作に混乱して,とうとう泣いてしまったのだとの憶測が流れたのである.
 泣いている岡田さんの姿を晒し者のようにして放送し続ける番組スタッフの態度は私にも異常と思われた.

 ニッポン放送のワイド番組『垣花正のあなたとハッピー!』でもこのことが取り上げられ,リスナーの反応を紹介していたが,垣花正アナによると,ほとんどの男性リスナーの反応が「めげずにがんばれ応援するぞ」というものであるのに対して,女性たちは圧倒的に「仕事中に泣くなんて甘えがすぎる」と岡田さんを批判し,男女ではっきりと事件への反応が異なったという.
 まあ何十年も仕事をしてきた私のような年寄りの見解では,やはり「仕事中に泣くなんて甘えがすぎる」という女性たちの反応が正しいように思われる.

 それはそれとして,これをmsnニュースはこう伝えた.
NHKお天気キャスター、生放送中に号泣 予定と違う画面に… 山形放送局 》(記事タイトル)

 しかし実際の放送をアップした動画では,岡田さんは涙ぐんではいたが号泣なんかしていなかった.
 数年前から,泣くことを「号泣」と表現する誤用がネット上で一般化していたが,遂にニュースでもこの誤用が使われるようになったのである.

 しかもmsnニュースは,記事本文で次のようなことも書いている.
NHK山形放送局で1日、夕方のニュース内の天気予報コーナーで気象予報士の女性が号泣で原稿を読めなくなり、あわや放送事故というハプニングが起きた。

 放送事故とはどういうことかというと,Wikipedia【放送事故】に次のようにある.
放送事故ではないもの
いわゆる「NG集番組」等で取り上げられる映像は、あくまでも正常な範囲の放送である(NGを参照)。
バラエティ番組等では、タレントがハプニングを指して「放送事故」と揶揄するシーンがあるが、放送として当然支障は起きておらず、放送事故として扱われない。

 つまりmsnニュースは,バラエティ番組に出てくる馬鹿タレントと同じレベルであるわけだ.

 言葉の誤用に関する私の小言幸兵衛的意見はそこまでとして山形放送局のことに戻ると,岡田さん,めげずにがんばってください.応援してます.こらこら.
 さっきと言うことが違うが,正しい意見が良い意見であるとは限らぬ.リチャード・キンブルによれば,正しかるべき正義も時として盲しいることがあるのだ.なんだそれは.

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