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2015年12月11日 (金)

ふるさとへ

 毎日放送のテレビ番組『プレバト』がおもしろいので,欠かさず録画して観ている.
 昨日の放送には宝塚男役のトップスター (といっても私は宝塚出身の女優さんをほとんど知らぬのであるが) だった姿月あさとさんが俳句のコーナーに登場した.美人だなあ.
 お題は雪景色の中を走る列車である.
 姿月さんの作品は
    大晦日 古里向かう 母想い
であったが,これを夏井いつき先生は酷評してから添削し,
    古里へ向かう車窓や 大晦日
とした.

 この添削句だが,誰でも次の句を思い起こすだろう.
    古里へ回る六部は気の弱り
句の調子がこの古川柳に似ている.例えば
    古里へ向かう六部や 大晦日
でも,なんとなくありそうな雰囲気がする.

 それはともかく「故郷へ回る六部は気の弱り」の解釈だが,YAHOO知恵袋で,この川柳の意味を訊ねた質問にこんな回答がベストアンサーになっていた.
(六部は) 六部僧ともいう。
若いころ古里で良くないことをしでかして
罪滅ぼしに諸国行脚に修行に出かけます
お経を故郷のお寺に納めないといけない
ところが近所の人には会いたくない
気が弱くなります

 この回答者は自分が何を書いているのか理解しているのだろうか.《若いころ古里で良くないことをしでかして》だの《罪滅ぼし》とか《お経を故郷のお寺に納めないといけない》はどこから出てきたのか.《ところが近所の人には会いたくない 気が弱くなります》に至っては妄想としか言いようがなく,しかるにこれをベストアンサーにした質問者は思いっきりの大馬鹿野郎のコンコンチキである.知恵袋の質問を読むと発作的に嘘を回答してしまう阿呆には「気が弱る」の意味くらい調べてから書けと言いたい.

 このブログで口がすっぱくなるほど書いてきたが,現代日本のネットで最悪の嘘情報発生源は読売の『発言小町』と,この『YAHOO知恵袋』だ.
 諸国を廻って霊場に法華経を納める修行を積んできた六部であっても,高齢になると気が弱り,旅の野に行き倒れるならやはり古里の近くで死にたいと思うようになる.
 そういう,軽い調子の中にもしみじみとした味わいの川柳が,知恵袋に巣食う「教えて君」と「教えたい君」の手にかかっては完膚なきまでに破壊されてしまうのである.

 藤沢周平に随筆集『ふるさとへ廻る六部は』がある.
 上に述べた『YAHOO無知袋』の馬鹿者二人だけでなく,『ふるさとへ廻る六部は』を紹介したブログも,川柳の意味を取り違えている.このブログの筆者は《この川柳は、その六部がふるさとへ向かうのは気の弱りからだ、と揶揄しているのだと思います》と書いているが,そうではない.揶揄ではなく,人生の終末が近くなると六部でも気が弱るものだ,仕方がないよ,人間はそういうものなんだからという温かい眼差しがこの川柳の価値なのである.

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