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2015年11月15日 (日)

郡司騒動

 つい先日,このブログへのアクセス数急増したと書いたら,waiwai さんから郡司和夫の書いた文章が原因かもという情報を頂いた (このブログの当該記事). いかにもありそうなことである.

 その Business Journal の記事《コンビニおでんは絶対に食べちゃダメ 》 に以下のように書かれている.

6~7年前のことです。焼きチクワやハンペンなどをつくる三陸海岸のある老舗の練り製品メーカー社長に、こんな話を聞きました。

と書いたのに続いて,

その練り製品メーカーは、大手コンビニチェーンとおでんの練り製品を納入する仮契約を結びました。仮契約には「仕様」という品質についてのさまざまな取り決めがあり、それらをすべてクリアできて本契約となります。当然、練り製品メーカーでは、仕様に沿った製品づくりを始めました。しかし、どうしてもクリアできなかったのが、「練り製品はおでんのダシ汁の中で8時間浮いていること」という仕様でした。
そこで社長は恥を忍んで知り合いの同業者に相談したところ、その人はこともなげにこう言ったのです。
「簡単なことだよ。原料のすり身にリン酸塩とソルビットをたくさん使えばいい。そうすれば、すり身の比率は下がり、おでんの汁も吸いこみにくくなる。使った添加物はキャリーオーバーということにしておけば表示の必要はないから、コンビニチェーンにも消費者にもわからないよ」
 大半のすり身は船上でつくられます。その際、品質保持や増量のためにリン酸塩やソルビットが添加されますが、使用した食品には影響が出ないということで添加物の表示は免除されます。これをキャリーオーバーといいますが、この制度をもっと利用しろというわけです。

としているが,これは郡司和夫が,どこかで聞きかじったネタをもとに頭の中で作った創作である.取材して書いたものではない.これが創作だという理由を以下に述べる.

 練り製品を製造する際に,当該業者がリン酸塩等を使用しない場合は,船上で製造されるすり身に加えられたリン酸塩等は,当該業者が自社製品を販売するにあたっては「キャリーオーバー」として表示義務の対象にならない.
 Wikipedia【キャリーオーバー】には簡単に次の説明がある.
食品業界において、原料中には含まれるが使用した食品には微量で効果が出ない為、法律によって表示を免除される添加物を指すのに用いられる。
 この引用文中の「原料」を「すり身」に,「使用した食品」を「練り製品」に置き換えて読むとわかりやすい.

 さてところが,この当該業者が練り製品を製造する際に,購入した原料のすり身に,自社の工程でリン酸塩等を添加した場合は,表示義務が生じる(*).おでんの出汁の中で八時間浮いているという効果が発現するからである.Wikipedia【キャリーオーバー】に《原料中には含まれるが使用した食品には微量で効果が出ない為、法律によって表示を免除される》と書いてある通り,逆に効果がある場合は「キャリーオーバー」に該当しなくなるからである.

 上に述べたことは食品製造のイロハであって,《知り合いの同業者》が《「簡単なことだよ。原料のすり身にリン酸塩とソルビットをたくさん使えばいい。そうすれば、すり身の比率は下がり、おでんの汁も吸いこみにくくなる。使った添加物はキャリーオーバーということにしておけば表示の必要はないから、コンビニチェーンにも消費者にもわからないよ」》と言うはずがないのだ.
 「キャリーオーバー」の意味は法律上明確に定められており,一介の事業者が《使った添加物はキャリーオーバーということにしておけば》などと恣意的に使うことができない用語なのである.ある食品製造業者が製造するところの,ある食品に含まれている添加物に関して,これがキャリーオーバーとして表示を免除されるか否かは,その事業者の所在地を所轄する保健所が判断する.当該保健所にて判断がつかない場合は,厚生労働省が判断する.しかるに郡司は《これをキャリーオーバーといいますが、この制度をもっと利用しろというわけです》と書いているが,これはもう消費者と行政の双方を愚弄する悪意のデマとしか言いようがない.

 さらにいうと,コンビニと練り製品メーカーの間には,おでんを製造するベンダーが存在する.練り製品メーカーはこのベンダーに製品を販売するのだが,製品納入にあたっては品質保証書をベンダーに提出しなければならない.そしてこの品質保証書には使用添加物を詳細に記述しないといけない.上の(*)に「表示義務が生じる」と書いたのは,正確には包装食品における原材料表示のことではなく,取引先から提出を求められる品質保証書に記載しなければいけないという意味である.
 日本の大手コンビニは販売する商品の品質について非常に詳しく把握している.そして時々は食品製造業者を査察して,原料メーカーから提出された品質保証書に虚偽の記載がないか確認している.この査察は,食品製造業者の査察を専門とする会社に委託して行われ,不合格ならバッサリと契約を打ち切られことになっている厳しいものである.
 従って《コンビニチェーンにも消費者にもわからないよ》ということはあり得ないのである.
 確実に,郡司はこのコンビニ商品の製造と流通の事情を知らないと思われ,郡司の書いた記事が取材と調査によるものでなく,頭の中で作ったものだと断定する所以である.

 ちなみに,ここまで郡司和夫のペテン師ぶりを明らかにしてきたが,コンビニ側は,コンビニ仕様のおでん向け練り製品に使用されている添加物の種類と添加量は承知している.場合によっては,中小の製造業者に対して,価格だけでなく使用原材料も指定してくることすらある.
 しかるになぜ郡司は,あり得ない嘘,つまり練り製品メーカーがコンビニに隠れて添加物を使用している (つまりコンビニ本部側は騙されている) と書いたのであろうか.練り製品メーカーは攻撃できても,コンビニ本部を批判できない後ろ暗い事情が何かあるのだろう.

 ついでに書くと,私はコンビニのおでんを一度しか食べたことがない.さして美味しくもない,むしろまずいのに価格が異常に高くてコスパ悪すぎだ.とてもじゃないが買う気になれない.
 高くてもいいなら,私は飲み屋に行く.若者よ,おでんを食うなら良心的な飲み屋に行こう .よい飲み屋さんなら,八時間も出汁に入れて煮ている (=味と食感の低下が甚だしい) なんてことはしないからである.
 ただし,飲み屋に行って酒を飲まずにおでんを食って帰るのは甚だしい営業妨害である.飲み屋のおでんは,酒を飲む客に対するサービス価格となっていて,利益がほとんどないからだ.下戸の向きは,ぜひとも普通の人の二倍は飲む大酒飲みに連れていってもらおう.あまり酒を飲めない若い娘さんがおいしいおでんを食べたいなら,この方法がおすすめである.

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