« イムジン河 (十二) | トップページ | イムジン河 (十四) »

2015年10月25日 (日)

イムジン河 (十三)

 前稿まで,金日成北朝鮮による帰還事業の目的の一番目として [1.韓国包囲網の形成] を長々と説明した.次は今も続く北朝鮮のタカリ体質についてである.

[2.同胞を金ヅルとして]
 (1) 「帰還事業」の窓口となった朝鮮総聯は,在日朝鮮人の北への「帰還」に際して,日本から持ち出してよい金額を一人四万円に制限し,それ以上の財貨は全額を朝鮮総聯に寄付させた.これにより金日成/朝鮮総聯は,「帰還事業」終了までに「帰還」した者約九万人四千人×寄付金という莫大な財産を労せずして手中にした.
 上にカッコ付の「帰還」としたのは,「在日朝鮮人の帰還事業」に応じた者のほとんどが半島南部の出身者であったとされており,実際上は異国への渡航であったため,「帰還」としたものである.
 (2) 「在日朝鮮人の帰還事業」が開始されて暫くすると,渡航した人々から日本にいる親族に奇妙な手紙が届くようになった.手紙には,北朝鮮は豊かなすばらしい国だと称賛しつつ,その一方で石鹸や古着などの生活物資を送ってほしいと懇願し,またなぜか日本に残った人は北朝鮮に来ないようにと書かれていたのである.
 後に北朝鮮からの脱出に成功した人や,日本共産党を除名された元党員などの証言,また事実を過たずに観察する見識を持った人の書いた出版物などによれば,「在日朝鮮人の帰還事業」によって北に渡航した人々は,北朝鮮社会の最底辺で差別,貧困,暴力の辛酸をなめた.
 この手紙に書かれた矛盾は,貧窮を強いられた「帰還」者の悲鳴と,それをあからさまに書くことができないという事情を示すものだった.もし書けば一家全員が殺されるという証言がある.
 こうして「帰還」者からの不思議な手紙の真意がやがて知れ渡り,北朝鮮の実態が明らかになって,「在日朝鮮人の帰還事業」は急速に終焉を迎えたのであった.
(続く)

|

« イムジン河 (十二) | トップページ | イムジン河 (十四) »

新・雑事雑感」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: イムジン河 (十三):

« イムジン河 (十二) | トップページ | イムジン河 (十四) »