琴線に触れられて激怒してどうするのか
先ずは,日刊SPA! (2015/7/16) からの下記引用をご覧頂きたい.
《ツイッターで話題の“童貞女子”。男性からは「バカにするな」と怒りの声も
◆男性から怒りの声が出た「童貞女子」
○○女子 ひぐちさとこ氏のギャグマンガ『そういや私、女子だった!』(メディアファクトリー)から生まれた言葉で、ツイッターで1万回以上もリツイートされ、話題となったのが「童貞女子」。
女子力がなく異性にはモテないが、自分の好きなことにのめりこみ、人生を思い切り楽しんでいる女子のことを指しているんだとか。
オタクな女性からは「共感できる」「あてはまった」という声が多いのだが、「童貞」という言葉が男性の琴線に触れた。
男性からは「ただのガサツな女」「童貞をバカにしてんのか」と残念ながら怒りの言葉が……。
どうやら、「童貞」は、他の何よりもナイーブでデリケートな最後の男の「聖域」であったようだ。》
上の引用の後半に《男性の琴線に触れた》とあるが,記事中では「逆鱗に触れた」の意味で使用している.
このように最近のネット上では,「琴線」と「逆鱗」を取り違えるという高校現代国語のレベル以下の誤用が大手を振ってまかり通っているのである.
投稿者の年齢層が比較的高いと思われる読売新聞の『発言小町』も例外ではなく,『発言小町』の無教養な編集者は,投稿内容の改竄は平気で行うが言葉の誤用は垂れ流しにしているから,そりゃもう酷いものだ.
新聞や出版社には校閲係がいるはずだが,この校閲係がまた不甲斐ない人間であることは,高島俊男先生が著書で何度も指摘していらっしゃるところである.
新聞でいうと読売と産經に情けない誤用が多く,記者の教養の程度があからさまである.新聞でその有様だから,まして SPA!を出版している扶桑社のごとき三流出版社は言うにや及ぶ.
「琴線」「逆鱗」の誤用は教養の問題だが,実は現代日本語の重大な問題として,「恐るべし」と「恐るべき」のような終止形と連体形の混乱,取り違えが進行中なのである.
このことは私は以前から薄々感じていたが,最近酷くなっているように思われる.ネット上の文章だけでなく,紙媒体でも散見されるようになってきたのだ.
能町みね子も,週刊文春の先週号(9/24号) で,三流紙日刊スポーツの記事を例にしてコラムを書いている.能町みね子はそのコラムの終わりにこう書いている.
《この誤用はいずれ定着する。そのうち「その恐るべし実態を~」なんて言い回しまで横行しそう。新聞記者の方々はこの間違いを感覚レベルで分かる人であってほしい!》
まあしかし,日刊スポーツやそれと同程度の読売や産經の三流記者にそれを求めるのは,ちょっと無理ではないかと思われる.
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