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2015年9月 9日 (水)

甘藷と馬鈴薯 (四)

 白土三平作『はごろも』は『忍法秘話 四』(小学館文庫,全六巻) に収録されている短編である.
 時は永禄五年 (1562年) すなわち川中島の戦い(*) の翌年,どことも知れぬ土地が物語の舞台である.

 (*) 戦国時代に武田信玄と上杉謙信との間で何度も戦われた合戦のうち,最大の激戦となった永禄四年の四度目の戦いが千曲川と犀川が合流する川中島を中心に行われたことから,北信濃で行われたその他のいくさも総称して川中島の戦いと呼ぶ.

 その土地の南側に,東西に連なる鬼面山という険しい山脈がそそり立っていた.
 白土三平の作画を見ると鬼面山はまるで逆断層によって生じた断崖絶壁のようであり,これが東西に走っているのは日本の地形として実際上あるのか.南北に連なるとしても支障はないと考えられるのに作者がなぜそのような土地を設定したのか,必然性が (リアリティが) よくわからない.

 ともあれ,山脈によって断絶された南北二つの地方があり,北側ではある年に旱魃が発生して大凶作になったというところから話が始まる.
 その年のある日,鬼面山の絶壁から一人の男が北側に転落した.男は手に何かの苗を持っており,「米のかわりになる草」と言い残して死んだ.
 作中の説明を引用する.
この名も知らぬ男のもたらした事実は、人々の心のなかに、いままで、たんなる憶測にしかすぎなかった「山の向こうがわには、米のかわりになる作物が、あるのではないか」ということを、確固とした真実としてうけとめさせたのである

 こうして絶壁の麓の村の人々は,鬼面山を越えた向こう側にある「米のかわりになる草」を手に入れることを試みることとなった.
(続く)

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