ノビル
有川浩さんのかなり前の作品『植物図鑑』(2009年,角川書店) が映画化されるんだそうだ.本屋に幻冬舎文庫版の『植物図鑑』が平積みになっていて,その帯に主演の岩田剛典,高畑充希の二人の写真が載っている.作品中のカップルそのままのようないい感じの二人だ.
作中に,一緒に暮らし始めたばかりの「イツキ」と「さやか」が河川敷にノビル (野蒜) を採りに行く場面がある.
《ノビルは本当に強敵だった。
イツキですら途中で「ああ畜生!」と根を切ってしまうことがあった。特徴的な丸い球根は、細い茎で石をよけ砂利をよけながら、一体どこまでと思うほどに深く土の中に潜っている。整地されていない土手だから素直な伸び方はしていない。》
私はここの描写に少し違和感を持っている.
というのは,私が育ったのは前橋市内の利根川河川敷に歩いていけるほどのところであるが,河川敷になんかノビルを採りに行った覚えがないからである.
私の記憶にあるノビルは,作付けしなかった畑とか,田の畔とか,つまり石ころなんかない柔らかな土に生えるものだから,採るのに苦労したことはなかった.
『植物図鑑』のイツキはスコップを使って難儀しながらノビルを掘ったのであるが,子供の頃の私たちは大人の使う道具なんか持っていないから,そこらの木端とかあるいはせいぜい竹を割ったものでノビル採りをしたものだ.
大学を出たあと私は長いこと静岡県に住んだが,ノビルは静岡県人にとってかなり身近な食材で,採れる季節になるとノビルの和え物は飲み屋の定番酒肴であった.
飲み屋のおかみさんに「これ,どこで堀ったの?」と訊くと,やはり「そこら辺の畑に生えてるよ」と教えてくれるのだった.
ただし Wikipedia【ノビル】には
《葉とともに、地下にできる鱗茎が食用となる。鱗茎は地下5 - 10cmにできるため、スコップなどで掘り起こさなければならない》
とあるから,地方によってノビル採りには色々なやりかたがあるのだろう.
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