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2015年3月 5日 (木)

裏メニュー「フグ肝」

 読売新聞 (Yomiuri Online 3/2 7:33) などが伝えたところによれば,和歌山市黒田の飲食店「創作料理赤心」でトラフグの肝臓を食べた四十~五十歳代の男性三人が嘔吐や呼吸困難など意識不明の重症に陥った.

 

 トラフグの肝臓を食べて死んだことで有名なのは,八代目坂東三津五郎だ.昭和五十年一月十六日のことである.享年六十八.
 Wikipedia【坂東三津五郎 (8代目)】から引用する.
 《フグ中毒[編集]
八代目三津五郎の急死は、以後「フグ中毒」といえば「三津五郎」の名が必ず例に挙げられるようになるほどの大事件だった。この事件は、危険を承知の上で毒性の高い肝を実に四人前も食らげた三津五郎がいけなかったのか、フグ調理師免許を持っているはずの板前の包丁捌きがいけなかったのかで、従前にはなかった大論争を引き起こしたことでも名高い。法廷では、「もう一皿、もう一皿」とせがむ三津五郎に板前が渋々料理を出したことが争点となった。当時はまだフグ中毒事件を起こした調理師に刑事裁判で有罪判決が下ることは稀だったが、結局この事件では「渋った」板前が調理を「しくじった」ことに変わりはないとして、業務上過失致死罪及び京都府条例違反で執行猶予付の禁固刑という有罪判決が出て、世間を驚かせている。

 

 この事件の刑事裁判判決文がみつからないので,元々の判決の誤りか Wikipedia の記述の間違いかわからないが,引用文中の下線部は明らかに誤りである.トラフグなどフグの毒は微生物が生産したテトロドトキシンが生物濃縮によって体内に蓄積したものと考えられ,「調理を失敗したために」無毒な肝が有毒化するのではないからである.(毒の強弱はテトロドトキシン蓄積量によるため個体によって異なる)

 ともあれこの事件のあと,飲食店がトラフグ等の無毒可食部以外を客に提供することは食品衛生法で明確に禁じられた.客に提供してよい可食部が定められており,それ以外の部位の提供は,現行食品衛生法の第六条違反である.

 ところが,客が注文するとトラフグの肝を提供する料理店が全国各地で後を絶たないのが実情である (建前として,各地の保健所等の行政サイドは,飲食店によるフグ肝の提供はありえないと完全に否定するが,実際に発生する食中毒事件が建前を裏切っている).

 これは,食べた客が死ねば業務上過失致死罪に問われるが,死ななければ食衛法違反にすぎないため,提供する店側に法令遵守する気がないからである.

 フグ肝の食中毒が発生すると,店側は必ず「客が無理強いするので仕方なく提供した」と言うのだが,それが嘘であることは,口も下半身も軽い (どれくらい軽いかは週刊文春の報道に譲る…検索すれば容易にわかる) 元宮崎県知事の東国原英夫が漏らしている.東国原によれば,よく利用するフグ料理屋には「裏メニュー」にフグ肝があり,注文すれば食べられると発言している.

 

 元祖淫行タレントである東国原は,三年少し前のフグ料理シーズンに,ジョギング中に女性をナンパし,東京銀座の料理店「ふぐ福治」に連れて行ってフグ肝を食い,その女性は中毒を起こした.(J-CAST ニュース《銀座「フグ騒動」の主役は東国原英夫氏 「可食性フグ肝ある」と主張するが保健所は全面否定》)

 詳細はこの報道記事に譲るが,東国原が《九州の宮崎・大分では毒性のないふぐ肝が提供されることが多々あります》と発言していることは見逃せない.宮崎・大分にはそのような悪質な店が存在していて,みんなで公然の秘密にしているのに,口の軽い東国原がしゃべってしまったということだ.
 東国原の県知事時代,知事が率先してフグ肝を食っていたわけだから,宮崎県では食の安全安心もへったくれもないわけで,こういう男を選挙で選んでしまう宮崎の県民性は日本の笑いものだ.
 大分の保健行政はもっと笑いもので,ネット上では大分に行けばフグ肝が堂々と食えるとされていて,店の名も明らかなのに,県はこれを放置している.レベルが低すぎだ.

 一方,法違反を承知の上でフグ肝を出した「ふぐ福治」店主は取材に対して,例によって《こちらから進んで出してはいません。要求がなければ絶対に出しませんよ》と語った.
 しかしこれを言い換えれば,要求があれば提供する裏メニューであるわけで,語るに落ちるとはこのことだ.

 

 ところで週刊誌によれば下半身が軽いとされる東国原は,ナンパした女性が食中毒を起こさなかったら,食事のあとどうしたのであろうか.
 少し前のテレビ番組 (TBS「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」) で東国原は,若い東国原夫人の無駄遣いを懇々と道理を説いていさめていたが,自分の方はナンパした行きずりの女性に高級店でフグを奢っていて,これは無駄遣いではないようだ.なるほど.費用対効果ということか.

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