キヤベイジの葉は
読売の掲示板「発言小町」に,「キャベツを料理するときに,葉をはがして洗うか?」という趣旨のトピが立てられた.
トピ主自身は一枚いちまい葉をはがして洗う人であるが,回答レスは「洗わない」人のほうが多い.まあ,普通は洗わないだろう.
それはそれとして,「洗う」と答えた人の回答理由に次の三種類があるのがおもしろかった.
1.キャベツの中に泥が入っていたら嫌だから洗う.
2.以前からなんとなく洗っている.
3.料理の本に,キャベツの中の汚れ(土)を洗いなさいと書いてある.
問題は 1 の回答者で,この人たちは「キャベツはいったん全部の葉が開いたまま大きくなり,次に一番内側の小さな葉から結球が始まる.その小さな球を,すぐ外側の広がっていた葉が包み込む.それをまたすぐ外側の広がっていた葉が包み込む.このようにして小さな球が次第に大きく丸くなっていくのだから,その途中で当然中に泥が入る」と思い込んでいる.あの不気味なキャベツ畑人形よりも更にシュールなイメージであるが,そう思い込んでいるのだから仕方ない.
これに対してレスの多数派は「いったん大きく開いた葉の内側の葉から結球が始まるが,それからあとは結球を始めたときの固い葉 (非可食部) に保護されるような状態下に,その内側で,茎から出た若い葉が外側へ膨張するように大きくなって固く巻いていくのだから,キャベツの中に泥が入り込むことはあり得ない」と正しい知識を持っている.だからキャベツを料理するときに葉をはがして洗う必要はないのだと.
ただし,このキャベツ問題は発言小町の定番トピであり,前は「中に泥があるから洗う必要がある」という回答が多数派だったこともある.
発言小町の編集者がその時の気分でどっちを採用掲載するかを決めているから,そうなってしまう.発言小町の編集者は,一般常識よりも,トピが炎上するとか,盛り上がることを優先して投稿を取捨選択しているので,正しい知識をいくら投稿しても掲載されないことが多い (私はこれを実験して確かめてみたことがあり,その結果を示して「恣意的な編集が目に余る,社会の公器たる新聞が間違った情報を垂れ流すとは一体どういう了見だ」と編集者にクレームをつけたら,発言小町からバンされてしまった).
で,今回はこれでめでたしメデタシかというと,そうでない.
「チューさんの今昔ばなし」という個人サイトのコンテンツ「野菜のハテナ?Q&A」に
《今ではキャベツも結球ハクサイもレタスもしっかりと結球するのが当たり前のようになっていますが、これはここ数十年の品種改良によるものです。昭和の初めごろまでは、キャベツも結球ハクサイも2~3割くらいは畑でしっかり結球しないものでした》と書かれているのを見つけた.
このサイトの筆者は自己紹介によると国立大学農学部で教鞭をとっていたかたである.
《昭和の初めごろまでは、キャベツも結球ハクサイも2~3割くらいは畑でしっかり結球しないものでした》とは,戦後生まれの私は知らなかった.
調べたところ,確かに,キャベツの品種改良が進んだのは大正時代であった.
ということは,戦前の料理本には「キヤベイジの葉は剥がして洗ひませう」とか書いてあった可能性がある.それが現代の料理本にも伝承されている (上記の回答 3) のだろうか.
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