懐かしの塩味麺 (補遺二)
昔,谷内六郎という画家がいた.
絵本や漫画などの画業もあるが,全国にその名を知らしめたのは,昭和三十一年の週刊新潮の創刊号以来,二十六年間ずっと描き続けた表紙絵である.
今も横須賀美術館に谷内六郎館 (常設展示) があるためか,若い人にも人気があるようだ.
新潮社も,かつて山口瞳の連載コラムと並んで週刊新潮の人気を不動のものとしてくれた谷内六郎の画業遺産を,後世に伝えようとしている.
しかし明星チャルメラの初期のパッケージデザインに谷内六郎のイラストが使用されていたことは,意外に知らない人が多い.おそらく包装に描かれた谷内のイラストはそれだけだったはずである.
ところが明星食品の経営者は,谷内六郎の絵の価値がわからなかったのであろう.何度も包装デザイン (通称チャルメラおじさん) をリニュアルし,別のイラストレーターの手で,谷内のオリジナルとは似ても似つかぬもの (ほとんどパクリといっていい) に描き直してしまった.
ここまでオリジナルを改竄してしまうと,もう泉下の谷内六郎に申し訳が立たない.恥を知る会社なら復刻版のリリースはできないだろう.残念なことである.
資料を一つ挙げておく.チャルメラおじさんのオリジナルと現在はここ.
余談だが,食品包装に使用されたイラストや漫画としては,チャルメラおじさんの他に,「桃屋の江戸むらさき」に使われた喜劇俳優三木のり平の自筆似顔絵が有名である.三木のり平キャラは桃屋ある限り同社の財産であろう.
おおば比呂司画伯はいくつも商業デザイン作品 (株式会社巖手屋の南部せんべい,ホテイフーズのやきとり缶詰など) を残している.巖手屋は同社ウェブサイトにおいて今も,三十年近く前に亡くなった故画伯に対する謝意を表明している.人の世の中は,こうでなくてはいかんと私には思われる.しかるに明星食品 (以下略).
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