« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »

2015年3月

2015年3月29日 (日)

マック崩壊 (四)

 話は横に逸れるが,日本の食品産業全体を見渡すと,製造業のうちで比較的規模の大きい企業は,労働基準法や労働安全衛生法を遵守する姿勢ができている.これは戦後の労働組合運動が獲得した成果であるといっていい.
 その一方で,日本の食品産業の主体をなしている中小の食品製造業の場合は,労働組合と無縁な会社が多いために,経営に対する監視機能がなく,労働法どころか食品衛生法などの法律の遵法レベルでも,かなり問題があるだろうと推測される.

 食品製造業にはこのような二極分化構造があるわけだが,それでは外食産業はどうかというと,企業規模がかなり大きいにもかかわらずコンプライアンスに大きな問題を抱えている企業が存在する.これがいわゆるブラック企業問題で,その先駆けが日本マクドナルドの「マクドナルド訴訟/名ばかり管理職訴訟」であり,現在のワタミフードサービス株式会社や株式会社ゼンショーホールディングスに代表される悪質企業の存在に繋がっている.

 ブラック企業問題の全貌を語ることは私の短いブログ記事の手に余るので Wikipedia【ブラック企業】に譲るが,この「名ばかり管理職訴訟」によって,マックのイメージは「まずくて健康によくない上に従業員を使い捨てにする」となった.

 私の四十年以上の会社員人生で色んな会社のありかたを見聞してきたが,およそ人間でも法人でも,甲法律を守れない守らない者は乙法律も守れず守らない.
 我が国の労働法の隙間を突くような企業が,食品衛生法を軽んじるのは当然の帰結であった.
(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月28日 (土)

雑多感想 (3/28)

(一)
 大塚家具の経営方針を巡り,昨日の株主総会で大塚久美子社長が,創業者で父の大塚勝久会長に圧勝した.
 株主総会後の取締役会で大塚久美子社長の続投が決まり,大塚勝久氏は会長職を追われて無役となった.しかし大塚勝久氏は依然として筆頭株主であるため,創業家の内紛が収まったわけではない.
 知人とこの話題で話していたら,知人が「これってマスコミが大きく取り上げるような経済ニュースじゃないよね」と言った.その通りで,これは新聞の経済欄に載っているが,もちろん経済ニュースじゃない.よそのうちの中を覗き見る機会はそうあるもんじゃないから,それがウケたのである.

(二)
 一昨日,国の特別天然記念物で絶滅危惧種であるアホウドリが,小笠原諸島の媒島で戦後初めて繁殖したと環境省が発表した.朗報である.
 アホウドリを乱獲して絶滅寸前に追い込んだのは,明治二十年に鳥島に入った一組の夫婦であったと記憶しているが,その名が思い出せない.
 この夫婦は羽毛採取を目的として棒切れで島内のアホウドリを撲殺して回り,繁殖地をたった二人で壊滅させて巨万の富を得たはずだが,なぜかその名が Wikipedia【アホウドリ】に記載がない.
 こうして絶滅に追い込まれたアホウドリを救ったのが,東邦大学名誉教授の長谷川博先生であるのは周知の事実であるが,先生の名も Wikipedia【アホウドリ】に明記されていない.参考文献に記載されているのみである.この Wikipedia【アホウドリ】を書いた人物はどう考えているのであろうか.

(三)
 KDDI が広告に書道家の中塚翠涛さんを起用していて,ネットをブラウズしていると毎日この広告を目にするのだが,このかたの筆を持つ手のなんと美しいことか.
 KDDI の広告は,クラウドがどうのこうのと言っているが,そんなことはどうでもよくて,ただもう何度もなんども呆けたように私は動画広告をリプレイして見ている.他人に見られたら必ずや助平爺と言われるだろうが,いいんです.ほっといてちょうだい.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月26日 (木)

マック崩壊 (三)

 ハンバーガーのパテを製造するに際して,それに適した肉を挽肉にするのではなく,赤身肉と脂身を別々に挽き,これを混ぜる製法は特に企業秘密ではなかったようだ.私はこの製法を,日本マクドナルドと契約したことがある商品開発コンサルタントによる食品企業対象のセミナーで聞いて知った.
 講師は「この方法なら世界中で同じ味を提供できる」と胸を張っていたが,それはマックの顧客にとって何かメリットがあることなんだろうかと私は疑問に思った.
「この味はアメリカの人が食べているのと同じ味なんですよ」と言われても嬉しくも何ともない.
 そんなことよりも,食べ物はおいしいかどうかだ.

 はたしてこんな商品開発をしているうちに「マックはおいしくない」という評価が固まってしまった.
 そして「マックはおいしくない」に対しての日本マクドナルドからの回答は,メガマックとかクォーターパウンダーとか,もう本当に栄養バランス崩れまくりのジャンクフードメニューであり,「マックはまずくて健康によくない」ということになってしまった.

 そうこうしているうちに日本マクドナルドを襲ったのは,名ばかり管理職問題だった.
(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月25日 (水)

マック崩壊 (二)

 かなり前,モスフードサービスの櫻田社長が,村上龍の司会するテレビ番組に出演して色々と語っていたのだが,共感するところがあった.
 よく知られているようにモスは店舗従業員に年輩女性の率が高い.その女性店員が手の空いたときに店の前の道路を掃き掃除していたりする.買い物のおかあさんが子供連れで立ち寄ったり,高校生が気軽に入ってきたりする.そういう店でありたいとか言っていたような記憶がある.モスは,ファストフード業界で競争しているのではなく,町内の蕎麦屋さんとか定食屋さんとかがコンペチなのだというコンセプトらしく,なるほどねと思った.

 それに対するマックは,そもそもスタートが東京の銀座だ.第一号店は昭和四十六年に三越の店内にできた.(ちなみに,吉野家がチェーン展開を開始して新橋駅前に開店したのは昭和四十三年のことだった.銀座と新橋駅前では,目指すものが全然違っていたのだ)

 マックは今でこそジャンクフードだけれど,当時は,最近のパンケーキみたいな受け入れられかたをしたのだった.そろそろ新婚旅行で海外旅行するのが一般的になりつつあった時代で,マックにはハワイとか米西海岸の雰囲気がした.(私がハワイに出かけたのはそれから十年もあとだったけれど ^^;)

 それから経済成長と行き過ぎたバブリーな時代が始まって,日本人の暮らしぶりは随分と派手になったけれど,逆にマックは置いて行かれた.銀座に一号店を出したことをすっかり忘れたかのようにワンコインで買えるジャンクフード化していった.

 それで焦ったのかどうか知らないが,価格戦略の迷走が始まった.
 一つには,強引にセット化を推し進め,今でも古いギャグの一つとしてみんなが覚えている「ポテトはいかがですか~」の方向だった.しかしこれは客の「一個百円なのになんでセットにすると四百円になっちゃうわけ?」と,マックの理不尽な価格体系に対する不信感をあおることになった.

 もう一つは,品質低下をいとわないコストダウンの推進だった.
 マックの食肉調達力は大したもので,赤身のクズ肉とまったく使い物にならない脂身を集め,これを挽いてから混合してパテを作ることに成功した.この方法なら,堅くて歯が立たないような赤身クズ肉でも「ジューシィ」に見せかけることができる上に,「牛肉百パーセント」をうたうことができるのであった.
(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月24日 (火)

マック崩壊 (一)

 日本マクドナルドが危機的な状況にあることは,もう誰の目にも明らかになってしまった.
 昨年十二月期決算では,最終損益が二百十八億円の大赤字となったことにも驚かされたが,もっと衝撃的だったのは,年が明けて一月の既存店売上高が前年対比 38.6% 減となり,四割近くも落ち込んだことだ.店舗クルーの体感的には客が半減したように感じられるだろう.

 この悲惨な状態の原因分析が色々とビジネス誌でなされているが,私には日本マクドナルドの経営指標を分析する力がないので,一般市民の野次馬的観察でいうと,この没落は十五年前から予測できたことのように思う.
 十五年前というのは私のうちの子供たちが大学生だった頃のことで,その当時彼らが
「マックはダサい」
「マックはまずい」
「マックでお昼ご飯を買うくらいならコンビニのほうがずっと安くておいしい」
「ハンバーガー買うならモスにする」
と言っていたからである.
 その後も若い世代のマクドナルド評価が変わらなかったとすれば「一月の既存店売上高が前年対比で四割減」が,すごくよく納得できるのである.

 昨年のある平日,東京の某マクドナルド店舗に入ったら,一階レジカウンターにいたのはアジア系の娘さんで「コニチワーイラシャマセー」と笑顔で接客していた.そしてトレーを持って二階の客席に行ったときに私が驚いたのは,その店舗の客層の悪さであった.
 見るからに勤め人には見えない崩れた風体の老人たちが,競馬新聞を広げてワハハガハハと大声で笑いながらレース予想をしている光景がそこにあったのだ.まるで場末の居酒屋のようだった.
(続く)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月23日 (月)

服飾の先生の食事不作法

 週刊文春には,大和ハウス工業の樋口武男会長が著名人と対談するという企画の広告記事が連載されていて,三月二十六日号は料理研究家の土井善晴さんが対談相手であった.
 その記事の中で土井さんは次のように語っている.

グローバル化や何やいうても、やはり日本人はきちんとした日本語を話すこと、食にしてもお箸を正しく、お茶碗を持って食べることとか、あたりまえのことは伝えていかなあかんと思っています。

 土井善晴さんは,家庭料理研究家として著名であった土井勝先生の次男であるが,土井勝先生は,子息の土井善晴さんが語っているまさにその通りに,たいへんに丁寧で上品な日本語を話す人であった.

 さてその土井勝先生の薫陶を受けた土井善晴さんは,TBS系列津のテレビ番組『プレバト!!』にレギュラー出演している.
 この番組は,芸能人が生け花や料理の腕前,あるいは俳句の才能を競うという企画でなかなか楽しい.
 私は岡江久美子さんのファンなので,彼女が出演する回は,テレビ画面に釘付けだ.

 それはともかく,この番組で土井善晴さんは,女優さんたちの料理の盛り付けを採点評価しているのだが,料理ジャンルでは盛り付けの他に,蕎麦打ちの腕前とか出汁の採りかたの上手下手がある.
 採点者は,蕎麦打ちは東京にある「神田まつや」の店主・小高孝之さん,出汁の採りかたは京都の料理屋さんでミシュラン二つ星の「祇をん佐々木」の店主・佐々木浩さんである.

 ところがまことに残念なことに,テレビに映る佐々木浩さんの箸の持ちかたが大変に下手である.
 あるブログに佐々木さんの写真が掲載 (記事の中頃あたり) されているが,これを見るとわかるように,二本の箸が平行になってしまっている.一膳の箸の片方は親指の付け根と薬指とで固定し,もう片方は親指,人差し指,中指の爪先で保持して自由に動かせるようにするのが正しい箸の持ち方であるが,あろうことか佐々木さんの親指の爪先は人差し指の中ほどの位置にある.これでは箸先で小さなものをつまむことはできないのであり,その帰結として,料理の盛り付けは不得意なんだろうなということがわかる.
(2015年12月12日の追記;上のセンテンスのリンクが切れているが,同じ画像が他のサイトにあったので再掲する.最初にリンクを示したブログの画像はこのサイトからの無断掲載だったのかも知れない.)
 それでも佐々木浩さんの箸の持ちかたはまだ良いほうで,蕎麦屋の小高孝之さんの箸の持ちかたに至っては幼児以下,もうまるでデタラメである.これではせっかくの蕎麦を粋にたぐることは不可能である.テレビに出ないほうがよろしいというレベルだ.

 などとけなしてみたが,お二人とも料理や蕎麦打ちの才能は超一流なのであるからして,つまるところ,食べ物を作る才能と箸の持ちかたの上手下手は別のことであるということだ.すなわちこのお二人が食事作法について云々しない限りは全く支障はない.

 さて話は『プレバト』から離れる.
 昨日,服飾評論家の市田ひろみさんが,専門外のことなのに『市田ひろみ 恥をかかない和食の作法』(家の光協会) という本を出しているのを見つけた.
 市田さんについては,かなり前に私が書いたものがあるので,以下に再掲する.

--------------------------------------------------------
2006年3月14日
和装師


 先々週号の週刊文春を読んでいたら,途中に株式会社『点天』という会社のPRページがあった.カラー見開き2ページで,「ひとくち餃子」の宣伝をしている.うまそうである.
 それはいいのだが,このページに日本和装師会会長の市田ひろみさんが,そのスタッフお二人と餃子をおかずにご飯を食べている写真が掲載されていて,その三人の箸の持ち方が幼児のようなやり方なので驚いた.
 箸の持ち方は,正しくは親指,人差し指,中指の指先が接近しているのであるが,お三方は揃いも揃って親指の指先が人差し指の中程の位置にきている.箸には親指の関節が触れている格好で,従って親指は箸と直角となっている.こういう持ち方をする人の特徴として,人差し指と中指がすっとのびていないで,手のひら側に曲がっている.こういう持ち方の極端な形が「握り箸」である.

 株式会社点天は,このページの撮影が行われるまで,こともあろうに和装の権威である市田さんがまさか箸もきちんと持てない人だとは知らなかったのであろう.もしそうなら同情するが,次回のPRページにもそういう人が登場したら食品企業としての見識を問われると思うぞ.
 市田ひろみさんという方は,自分の箸の持ち方が握り箸だということに気づいていらっしゃらないのだろう.この歳くらいの人にも箸がちゃんと持てない人はいくらもいるが,普通はそれを自覚しているのであって,市田さんのように堂々とものを食っている様子の宣伝グラビア写真におさまったりはしないと思う.おまけに先生が先生なら弟子も弟子なので,私は腰から脱力した.
 彼女はかつてサントリー緑茶のテレビCMで評判になり,「日本の伝統美を守る女性」の一人として世間には認知されているはずであるが,それが握り箸.着付けの腕前はどうなのであろうか.
--------------------------------------------------------

 自分の握り箸を矯正できない人が偉そうに『市田ひろみ 恥をかかない和食の作法』を書くとは,悪い冗談としか思えない.市田さんには『プレバト』に出演してもらって,その握り箸を土井善晴さんのご覧に入れ,嘆いてもらいたいものだ.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月22日 (日)

雑多感想 (3/22)

(一)
 プロ将棋棋士と将棋ソフトの五番勝負「電王戦 FINAL」第二局が高知市の高知城追手門で行われ,永瀬拓矢六段が Selene に勝った.
 永瀬六段の勝勢であったが,Selene に不備があり,終盤の王手を放置するというアクシデントがあって Selene の反則負けになった.
 この対局は,永瀬六段がスーツ姿だったのに対して,ソフト開発者の西海枝昌彦さんが和服で臨んだのが微笑ましかった.
 プロ将棋棋士,二連勝の快調な滑り出しである.さあどうなるか.

(二)
 大塚家具の内紛が報道されるようになった最初の頃は,旧弊抵抗勢力の大塚勝久会長と企業革新派の久美子社長という図式を外野から比較して,久美子社長の言い分に共感したのだが,そのあとで双方の中傷合戦が始まり,久美子社長のパワハラが週刊誌報道されるに至って,こりゃどっちもどっちの経営者であると思うようになった.
 いっそ共倒れになって,つまり両方とも株主に見放されて,会社再建したほうがいいのではないだろうか.
 社員の気持ちを忖度するに,勝久会長の時代遅れの経営感覚は全社一丸となればなんとか変革できるだろうが,久美子社長のパワハラは改められる見込みがない (パワハラとかセクハラは加害者に自覚がない) わけで,多くの幹部社員は会長側だとされるが,まだしも今後に希望の持てる会長側についているのだろうと理解できる.
 私も長いこと経営者のパワハラを受け続けた経験があるのだが,ほんとにパワハラ野郎 (女も) というのは度し難いのだ.

(三)
 ニッカの「竹鶴17年ピュアモルト」が,テレビドラマの影響に加えて,英国のウイスキー専門誌主催の国際的コンテストである「ワールド・ウイスキー・アワード 2015」のブレンデッドモルトウイスキー部門で二年連続の最高賞を獲得したとかで人気沸騰し,入手困難になっている.
 Amazon をオークションだと勘違いした Wine garage TAKAHASHI という業者が一昨日,「竹鶴17年ピュアモルト」を五万九千九百円で出品したが,昨日の段階では四万八千円に値下げしていた.これの正常な価格は税込み五千五百円程度である.濡れ手で粟を企んだのだろうが,悪徳業者であることがみえみえだ.大震災のとき,こういうやつらが,単一乾電池とかランタンとかをそれまでの通常価格の何十倍もの値段をつけて Amazon に出品していたのを思い出す.
 ブラックニッカ復刻版は一万円の値段をつけている.これなんか,せいぜい千五百円がいいところだと思うが.

(四)
 別の意味だが,同じく悪徳業者の話.
 読売新聞 (Yomiuri Online 3/21) が報じたところによれば,一昨日,山口県宇部市のペットショップが火を出して木造二階建ての店舗兼住宅約三百平方メートルを全焼した.
 この火災で店舗内のケージに入っていた犬約三十匹が焼け死んだ.
 経営者の女性 (七十三歳) は普段から一人暮らしで,出火当時は商用で県外に出かけていたという.
 一人り暮らしの七十三歳の女が三十匹の犬の面倒を見られるはずもなく,これは最悪のペットショップであることが明らかだ.この女に,幼くして殺された犬たちが哀れでならぬ.

(五)
 海上自衛隊東京音楽隊の演奏と同音楽隊所属の自衛官三宅由佳莉三等海曹の歌唱によるアルバム「希望~Songs for Tomorrow 」がリリースされた.ええもちろん買いましたとも.このアルバムの収益の一部は日本赤十字社に寄付される.これを買わいでか.君も買いなさいっ.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月21日 (土)

風に立つライオン

 尾籠な話をを開陳してまことにお恥ずかしいのであるが,私は頻尿気味になって久しい.
 友人たちも皆おなじで,たまに会って酒を飲んでいると,頻繁に誰かしらがトイレに立つ.
 仲間の中では私はまだ長いこと我慢できるほうなのだが,それでもビールという飲料の威力は大したもので,一時間はもたない.

 話は一転して映画のことなんだけれど,洋画ではやたらに二時間を超える長尺物が多くて,だから,こういう作品を観るのは私にはもう無理なんだと思う.
 加えてこのところの腰痛だ.
 イスに腰掛けているときはいいのだが,長時間同じ姿勢でいると,そのあとが痛みに苦しむことになる.

 こんなことを書いたのは,いま三池崇史監督の映画『風に立つライオン』(原作;さだまさし,主演;大沢たかお) が上映されているからだ.
 観にいきたいなあ,と思うのだけれど,無理なのが私の現状だ.
 しかし,捨てる神あればなんとやら,いい時代になったもので,映画は上映終了後,しばらく待てばディスクに収められて発売される.それを待つことにしよう.

『風に立つライオン』は さだまさし の若いときの作品で,他のたくさんの曲と同じく物語性の高い歌だ.
 だが,この歌の背景にあるものがどんな物語なのかがわからず,長いこと知りたいと思ってきた.
 ところが,ひょんなことから,映画『風に立つライオン』の製作開始前,企画が持ち上がった頃に さだ 自身が語ったものを見つけたので,ここにアップしておきたい.

風に立つライオン (1)
風に立つライオン (2)
風に立つライオン (3)
風に立つライオン (4)
風に立つライオン (5)

 歌『風に立つライオン』は,さだ が若いとき (二十歳の時だそうだ) に知り合った長崎大学熱帯医学研究所の柴田紘一郎氏のエピソードに着想を得たものの,長い間そのままになっていたのを,ようやく1987年に一曲にしてリリースされたのだという.
 その後,さだ は多くの医療従事者と知り合うこととなり,その人々のエピソードも映画『風に立つライオン』に盛り込まれている.さだ の歌作りは,無名の人たちとのめぐり会いが原動力のようだ.

 さだ の歌を嫌う人もいるが,私は素直に,さだまさし はよい歌の作り手であり,優れた歌い手であると思う.
 私の青春時代の短い一時期,西日本とりわけ関西に,フォークソングと呼ばれたジャンルの歌が生まれて,それは直接的にあるいは間接的に社会へのメッセージを歌うことを特徴としていた.さだ の歌の物語性はフォークソングの直系子孫だ.(残念なことにフォークソングはすぐに,男女の愛だとか恋だとかばかりを歌う商業性の強いポップスによって駆逐されてしまったのだが)

 上に示した YouTube のトークの中で,さだ は漆塗り職人のことを話している.
 この国で連綿と伝えられてきた技術が,後継者がいないということで絶えようとしている.その理由は,その伝統技術ではもはや食っていくことができないからだ.
 それを さだ は,歌『風に立つライオン』と同じ言葉を引いて,《僕たちの国は残念だけれど何か大切な処で道を間違えたようですね》と言う.残念だけれど私もそう思う.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月20日 (金)

山パンからの連想で

 昨日の記事に《製造者は山崎製パン (以下,通称の山パンとする) 》と書いた.
 山崎製パンは,日常会話では「ヤマザキパン」と呼ばれるのが普通だろう.「山パン」は株をやっている人とか,食品業界の言い方かも知れない.一般の女性が「山パン」と呼ぶのは聞いたことがない.
 この「山パン」でちょっと感じたことがあるので書いておきたい.

 「山パン」の「パン」は食べものの名称そのまんまだから,私は山崎製パンを山パンと呼ぶのに違和感を持たないし,ショートパンツの場合はパンツを略して「短パン」と言ったりするのだが,最近のテレビ局 (主にフジテレビ) における女性アナウンサーに,愛称が「○○パン」である女性が何人もいて,これはちょっとなんだかなーと思っている.

 暇にまかせて調べてみたら,こんなにいた (↓) ことが分かった.
  [愛 称]     [本 名]
  チノパン     千野志麻
  アヤパン     高島彩
  ショーパン    生野陽子
  カトパン     加藤綾子
  ミオパン     松村未央
  ヤマサキパン   山﨑夕貴
  ミタパン     三田友梨佳
  ミカパン     三上真奈
  ユミパン     永島優美

 千野志麻アナがチノパンツの語呂合わせでチノパンと呼ばれたのは駄洒落だからともかくとして,他の人の「パン」は一体なんなんでしょうか.

 第二次世界大戦後の暫くのあいだ,主として在日米軍将兵を相手にした街頭の私娼 (街娼) を「パンパン」と呼んだ.他に「パンパン・ガール」や「パン助」「洋パン」とも言った.
 女性に投げつける最大限の悪罵であった.
 そのようなことがあったから,女性の愛称に「パン」をつけるなんてのは「洋パン」を連想させて,昔だったら言語道断のことであっただろう.

 だがしかし時代が変わった.
 高島彩アナをアヤパンと呼んで誰もあやしまぬ世の中になったのだ.アヤパンの愛称に眉をひそめる人たちはもういない.『星の流れに』の歌詞を知っている人々はもうすぐ死に絶える.松本清張『ゼロの焦点』は今はもう誰も読む人がいない.
 それでいいのだろうと,山パンから連想して昨日思ったのだった.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月19日 (木)

食の冥王たる山パン

 先日の日曜日,近所のショッピングモールに入っている食品スーパーに,食い物の買い出しに行った.
 このスーパーにはインストアの小さなベーカリーがあって,丸くて (直径十センチほどの大きさ) うまそうなデニッシュタイプの菓子パンがあったので買ってみた.レシートは捨ててしまったのだが,値段は確か二百四十円くらいであったと思う.

 しかしそのすぐ横にスーパーのパンコーナーがあり,そこで私は,ベーカリーで購入したデニッシュと似ているが,しかし大きさが直径二十五センチ近くはあろうかという巨大なリング状の菓子パンを発見した.製造者は山崎製パン (以下,通称の山パンとする).その値段は,ベーカリーのデニッシュ菓子パンよりズンと安く,百八十円ちょっとであった.

 ベーカリーのほうのレジはもう済んでいたのだが,この巨大パン (商品名は「デニッシュリングカスタード」という) にいたく興味をそそられ,私はこれをカゴに入れた.
 デニッシュリングカスタードは熱量が 1,429kcal もあり,ネット上では菓子パン界の核弾頭と呼ばれているようだ.

 で,帰宅して,購入した二つの菓子パンを食べ比べてみた.
 すると何とまあ,聞いて驚け (最近これが多いな),二つのパンはほぼ同じような食味であったのだ.

 食パン一斤を百円以下で全国津々浦々に怒涛のごとく供給できる山パンは,日本国庶民のパン食生活におけるインフラと言われている.誰が言っているかというと私だ.
 つまり山パンの製品は,いわば基礎食料とでもいうべきものであるからして,誰もその味を問うことはない.おいしさよりも,安価なパンをまるで水道水のように供給することが山パンのアイデンティティなのである.山パンは食品産業における松下幸之助なのだ.
 例えば,ミスドの商品を丸パクリしたとしか思えないドーナツをいくつも山パンは販売しているが,すべて本家ミスドに比べると,歪んだ外観からして粗悪品である.味も格下だ.
 これを比喩にしてみればミスドは,ペレンノール野の小さな砦に立て籠もり,冥王サウロンが放ったオークの大軍を迎え撃ったセオデン王と,ローハンの楯持つ姫君エオウィンである.
 対する山パンは,アングマールの魔王が率いて押し寄せた幾百万というオークとトロルの連合軍である.
 しかし,この戦の結果は,物量で勝てなくても味で勝てることを示したエオウィン姫の勝利であった.
 この比喩はデニッシュリングのリングから指輪を連想したのであって他意はない.意味不明だが,そういうことである.ヾ(--;)こらこら

 さて,件のインストアベーカリーのデニッシュ菓子パンは,正直な印象として,山パンのデニッシュリングカスタードに圧倒されていた.
 デニッシュリングカスタードなら,年寄りの一日当たりの必要エネルギーを百八十円ちょっとでまかなえるのである.
 主食費一日百八十円ちょっとだ.食費月一万円生活も夢ではないと言えるような気がしないでもない.
 恐るべし,山パン.食品産業の鑑,山パン.年金生活者の味方,山パン.(最近これも書いたなあ)
 さっき山パンは冥王サウロンが放ったオークの大軍と書いたけどね.すまぬすまぬ.まあいいや.ヾ(--;)こらこら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月18日 (水)

貧乏人はイモを食え,か(笑)

 農林水産省は昨日,「食料・農業・農村基本計画」の原案をまとめたが,まだ農水省のサイトに掲載されていないので,新聞報道をみると,これまで採用してきたカロリーベースの食料自給率目標を50%から45%に下げた.

 カロリーベース食料自給率50%は達成不可能と判断したのであろうが,もともと食料自給率という指標は,食料安全保障からの要請ででてきたものである.

 先進諸外国に比較して我が国のカロリーベース食料自給率があまりにも低いことから,仮に気候変動やその他の自然要因,あるいは戦争,さらにあるいは我が国の経済力低下によって食料の輸入が困難になった時に,国民の飢餓を回避するための政策を,カロリーベース食料自給率という指標を用いて推進しようとしたのである.

 従ってカロリーベース食料自給率の目標が50%というのは,言い換えれば国民の半分が飢えるわけで,そもそも無意味な数字なのである.つまり中間暫定目標を90%とか95%とかに設定したとしても,計画上の最終目標は100%であらねばならないのである.

 そのカロリーベース食料自給率の目標50%を,今度の「食料・農業・農村基本計画」は放棄するという.
 その代わりに,今度は「食料自給力」という指標によって政策立案しようとするのが今度の基本計画らしい.
 まるで言葉遊びみたいで何がなんだかよく理解できないが,朝日新聞DIGITAL の記事によると,現在の米作中心農業から芋類中心の農業に転換すれば,国民は一日に必要なエネルギーを確保できるのだという.
 しかし,上に「言葉遊びみたい」と書いたように,水田と芋畑はそんな容易に互換できないのである.
 すなわち芋類中心の農業などというものは非現実的なのである.
 とすると,この「食料・農業・農村基本計画」は,食料安全保障という思想そのものを放棄しますということが,計画の眼目であるのだろう.

 まあそれでも空理空論である「カロリーベース食料自給率の目標50%」をいつまでも掲げているよりはいいかも知れない.
 しかし,である.
 食料安全保障思想を放棄して,上に挙げた「気候変動やその他の自然要因,あるいは戦争,さらにあるいは我が国の経済力低下によって食料の輸入が困難」になったときにどうするのか.
 それがどう「食料・農業・農村基本計画」に書かれているか,注目したい.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月17日 (火)

あの三原じゅん子が

 昨日は確定申告を提出しに税務署に行ったくらいで何事もなく過ぎた一日だった.
 特に興味を引くニュースもなかったが,一つだけ,馬鹿は阿呆なことしか言わないのだなあと呆れたのは,あの三原じゅん子が参院予算委員会でした質問だ.

 慰安婦問題で完膚なきまでに叩かれて萎縮した朝日新聞は,今はもう当たり障りのないことしか書かない新聞になってしまったが,それでもかつての反戦DNAは残っていて,この三原じゅん子の質問は見て見ぬふりをできなかったのであろう.何の論評もなく,三原がこんな質問をしたとだけ短く報道したのが哀れを誘った.もちろん読売 (Yomiuri Online) は報道しなかった.

 どういう質問だったかというと,三原は,八紘一宇の理念の下に世界が一つの家族のように助け合えるような経済と税の仕組み (ブログ筆者註;意味不明である) を運用していく必要があるとして,これに対する見解を麻生財務大臣に求めたのである.(笑)

 三原は,議長の指名に応えて立ち上がると「そこで皆様方にご紹介したいのはですね,日本が建国以来大切にしてきた価値観,八紘一宇で,あります」と述べた.
 このときの彼女の様子を見ていると,なんだかすごく嬉しくてうきうきしているように見えた.
 そして,八紘一宇をご紹介したい,ときたもんだ.みんなは八紘一宇を知らないとでも思ったんだろう.
「どう,あたしは八紘一宇なんて難しい四文字熟語を知ってるのよ,すごいでしょ」みたいな.

 この空っぽ頭の女に八紘一宇なんてのを吹きこんだやつが誰だか知らないが,おそらく戦前戦中のことは何も知らないのであろう三原は,原稿を書いてきて棒読み質問をしたのであった.(爆)

 かわいそうなのは見解を求められた麻生財務大臣だ.
 三原じゅん子は,麻生大臣が「八紘一宇をご存じでしたか,それはなかなか立派なことです」と褒めてくれると思っていたフシがある.答弁を求めるときと麻生大臣の答弁中のうれしそうな顔と声はもう得意満面そのものであった.
 しかし,麻生大臣がそんな答弁をしたら大騒ぎになって予算委員会は止まってしまう.するわけがない.ていうか,与党議員が大臣を罠にはめてどうする.

 麻生大臣は答弁中で「万世一系の」とあやうく口をすべらせそうになったが,「こういう考え方をお持ちのかたが三原先生の世代におられるのに正直驚いたのが実感です」と,三原の質問に答えずに逃げ切ったのであった.

 さても自民党の女性議員は,暴行容疑で現行犯逮捕された凶暴な経歴を持つ三原女性局長といい,路上で濃厚接吻しているところを写真報道されたために病院に逃げ込んだのはいいが,病室のトイレで喫煙が見つかって追い出された中川不倫政務官といい,人材豊富ではある.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月16日 (月)

麺道

 前にも書いたが,袋入り即席麺の価格上昇が激しい.同時に特売価格と通常価格の差が著しい.
 私が食品の買い出しによく行く藤沢市のディスカウント店では,つい先週は一袋約三百五十円ほどで売られていた袋麺であるが,東洋水産の正麺などの人気商品はとうとう店頭売価四百円台に突入した.
 そんな状況下で奮闘しているのが,茨城県水戸市にある従業員二十七名の小企業である株式会社麺のスナオシだ.

 この会社の「しょうゆラーメン」は五袋入りのパックの希望小売価格は四百円で,一袋八十円であるが,直接同社から通販で買うと一袋四十五円である.
 ところが,これがディスカウント店では,五袋入りのパックが通常百五十五円 (つまり一袋たったの三十一円) で売られている.
 つまり明星チャルメラなど高価格帯品が現在は通常価格で一袋九十円くらい,一日限りの特売価格で一袋六十円ほどするから,これに比べると,一袋あたり三十~六十円くらい安い勘定だ.
 驚くべし,麺のスナオシ.小企業の鑑,麺のスナオシ.年金生活者の味方,麺のスナオシ.

 とはいえ,品質が悪ければいくら安くても何の意味もない.
 そこで私は上記の「しょうゆラーメン」を購入して食べてみた.
 そして,聞いて驚け.
 麺のスナオシ「しょうゆラーメン」は,サンヨー食品「サッポロ一番 しょうゆ味」と大差ない味であった.
 当然のことながら,最近の製法による「マルちゃん正麺 醤油味」の生麺うまいまま製法によるなめらかな食感の中太麺 〈 太字部分 (C) 東洋水産〉 と比較すると,いかにも古色蒼然たる昭和の即席麺と言わざるを得ないが,それは「サッポロ一番 しょうゆ味」とて同じこと.
 であるとすれば麺のスナオシ「しょうゆラーメン」は,サンヨー食品「サッポロ一番 しょうゆ味」をコストパフォーマンスで圧倒すると言っていい.パッケージは安っぽいが,パッケージを鍋で煮て食うわけではない.

 結論を言う.首都圏のディスカウンターで売られている麺のスナオシ「しょうゆラーメン」は,ラーメンのホームラン王です! 〈 太字部分 (C) 自由が丘亀屋万年堂〉

 ただし,麺のスナオシ「しょうゆラーメン」は郷愁そそる昭和の即席麺であるから,調理にはそれなりの技術が必要である.そこで,即席麺を食い続けて五十年の経験と品格に裏打ちされた私の調理法をここに公開しよう.

1.まず鍋にたっぷりの湯を沸かし,モヤシを投入し,ここに鶏卵を割り入れる.できればモヤシは,さっと下茹でしたものを冷蔵庫に常備しておき,それを使いたいものだ.なぜなら,生のモヤシをラーメンの鍋に直接入れると,嫌な青臭みがでるからである.鍋の中で卵とモヤシを別々にしてもよいし,卵の周りにモヤシを配置して,巣ごもり風にしてもよい.

2.次に卵の白身が固まりつつある時を狙って麺を入れる.

3.太葱でも細葱でも,好みの葱を刻んでおく.

4.そのまま麺を茹で続けると,浮いている麺の上下で固さが不均一になってしまうので,麺投入一分後にまだほぐれていない麺をひっくり返す.

5.麺のひっくり返しから一分後に,箸の先で少しずつ麺をほぐす.

6.麺がほぐれたら,あらかじめ別添粉末スープを入れておいた丼に,鍋から好みの量の湯を流し入れ,軽くかき混ぜて粉末スープを溶かす.ここまでの所要時間は二分三十秒である.

7.経過時間二分四十五秒で鍋を火からおろし,茹であがった麺とモヤシを丼に移し入れ,半熟卵をその上に鎮座させる.そして最後に薬味の葱をハラリ.ここで経過時間は三分きっかりとなる.鍋に残った茹で汁は食べ終わってから捨てればよいから,取り敢えずすぐ食べてしまうこと.

 即席麺を食い続けて五十年の経験と品格に裏打ちされた私の調理法のキモは,まず第一に鍋にたっぷりの水で作ることである.
 最初に鍋に入れる湯が丁度の量であると,鶏卵が鍋底に付着したり,麺が不均一に茹でられてしまうなど色々と不都合があるので,鍋の水量はとにかく多いほうがよい.
 第二に,麺を途中でひっくり返すこと.これをせずに自然にほぐれるまで麺を茹でると,大抵の即席麺はのびてしまう.

 以上で一応よいのであるが,世にプロ麺士と呼ばれた私は,魚肉ソーセージとメンマをトッピングすることが多い.
 魚肉ソーセージはマルハニチロでも何でも構わぬが,メンマは桃屋穂先メンマやわらぎ(辣油味) が私の好みである.
 この種の追加トッピングは,あらかじめ食卓に準備しておくこと.即席麺が茹で上がってから魚肉ソーセージの皮を剥いたりしてはいけない.

 即席麺は自分で調理するのが正しいあり方である.亭主関白を気取る男が妻に作らせ,「あなた~できたわよ~」とか「わたし作る人 あなた食べる人」とか妻が踊りながらテーブルにラーメン丼を運んでくるのを待っているのは,麺道に反する仕業と言わざるを得ない.
 私のように二十三歳になるまでに日本麺院の院生を経て麺道四段となったプロ麺士は,絶対に他人に即席麺を作らせない.麺がのびるからである.
 プロ麺士でもタイトル保持者クラスともなると,麺がのびるのを回避するために台所で立ったまま鍋から直接麺をすする.鍋のフチで唇を火傷しているようでは,まだまだ精進が足りないのだ.
 さらに,タイトルホルダーでも別格の麺因坊位の保持者は,麺を茹でることすらせず,ばりばりと麺をそのまま食うという.これなら絶対に麺はのびない.自分でも何いってんだかよくわからないが,そういうことである.ヾ(--;) こらこら

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月15日 (日)

ダンジョン飯

 先月の記事「はじめての電子書籍 (一)」に
さて先日,Amazon を徘徊していたら,「この商品を買った人はこんな商品も買っています」であったか,何かの拍子に『ダンジョン飯』というコミックを Amazon に薦められた.このコミック,大好評絶賛増刷中のようで,紙の本は予約受付中だが,Kindle 版はすぐ買える (当たり前だけど).
購入したコミック
  久井諒子『ダンジョン飯』
  久井諒子『ひきだしにテラリウム』
  久井諒子『竜の学校は山の上』
  久井諒子『竜のかわいい七つの子』
  吉本ますめ『くまみこ 3』

と書いた.

 そのあと,週刊文春 (3/19号) 連載「漫画の時間」で いしかわじゅん が『ダンジョン飯』と,作者の久井諒子を絶賛していた.
 いしかわじゅん のその原稿が書かれたのは,たぶん単行本『ダンジョン飯』がリリースされた直後で,私が Kindle 版を買って読んだのとほぼ同時期だろうと思う.私はなかなかいい選コミック眼をしていたのだ.ヾ(^ ^;)

『ダンジョン飯』の紹介は いしかわじゅん に譲るとして,これは笑えるコミックだ.おそらく,あと二,三冊は続く中編になるんじゃなかろうか.

 昔,Windows95 の頃だが,主人公の勇者に「何か食べないと戦えない」という設定のあるファンタジー系PCゲームがあった.
 このゲームは途中でセーブできない仕様であった.普通にプレイしているとラスボスにたどり着く前に腹が減って死んでしまうので,武器よりもポーションよりも,何よりも飯をたくさん荷物袋に詰め込んで旅に出なければならないという意味不明の糞ゲーで,私のキャラは空腹で野垂れ死にして,遂にラスボスと戦うことなく終わった.今思い出しても腹が立つ.

『ダンジョン飯』は,食料を買うお金がない勇者のパーティーが,倒したモンスターを料理して食べながらダンジョンを進んでいくという斬新な設定で,これを いしかわじゅん は《ああっ、そうだった、と秘孔を突かれた気分になって倒れ伏す設定なのだ》と書いている.いやほんとそのとおり.

 『ダンジョン飯』に触発されたわけではないが,先日からネットゲームの “Master of Epic” をやっている.この生活系RPGもキャラに「何か食べないと腹が減って動けない」という設定があり,いま私のキャラは,初心者キャラでも倒せる大ネズミの肉を焼いて食いながらスキルを上げているところだ.
 ヘビとかネズミのステーキならいいが,もう少し剣スキルが上がってゾンビを倒すと,同じようにゾンビ肉が手に入るのだろうか.ゾンビステーキを食うのは食品衛生法第六条違反かも知れないのでかんべんして欲しいのだが.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月14日 (土)

鳩山元総理のクリミア訪問に関する青山繁晴氏の発言

 ニッポン放送 (3/12) の「ザ・ボイス そこまで言うか」で,木曜日担当コメンテーターである独立総合研究所所長の青山繁晴氏が,元総理大臣鳩山由紀夫氏の資産について驚くべき発言をした.

 まず,あるブログ記事《鳩山一族が大金持ちである理由》を一読して頂きたい.
 ここに書かれていることが,世間一般が莫大な鳩山家の資産について知っていることだろうと思う.要領よくまとめられている.

 ところが青山繁晴氏が番組中で列挙した「鳩山家が大金持ちである理由」はこれと全く異なる.
 政治家としての鳩山家嫡流は代々,旧ソビエト連邦から莫大な資金援助を受けていたからであるというのだ.
 そして,プーチンは旧ソ連の情報機関出身であるから,旧ソ連の資金が鳩山家の財産になったことを知っている.だから鳩山由紀夫氏は,プーチンに指示されれば否応なくクリミヤに行き,ロシアのクリミア編入を肯定する発言をせざるを得ないのであると語った.
 すなわち青山繁晴氏の発言が正しいとすれば,鳩山家代々は旧ソ連・ロシアのスパイであり,鳩山由紀夫政権はロシアの傀儡政権であったということになる.これが本当なら日本の戦後政治史における一大スキャンダルである.旧ソ連のスパイとして日本共産党に潜り込んで党首となった野坂参三どころの話ではない.

 私が冒頭に「驚くべき発言」と書いたのは,これが右翼街宣車のスピーカーではなく,公共のラジオ電波を使って全国に生放送されたということである.
 番組司会をしていたニッポン放送・飯田浩司アナウンサーは肝を冷やしたのではなかろうか.

 よく知られているように青山繁晴氏は安倍総理のガチガチの応援団であり,宣伝マンである.この「ザ・ボイス そこまで言うか」でも常日頃露骨にそれを示している.
 ということは,青山繁晴氏の「鳩山由紀夫のクリミア訪問はプーチンの指示による」説は安倍総理の意向に沿ったものであると推測される.

 テレビのニュースショーでコメンテーターたちが「鳩山さんがなぜクリミアに出かけてこんなことを言うのか,全く理解できません」と異口同音に言う中で,青山繁晴氏が「鳩山由紀夫はプーチンに弱み (鳩山家代々がソ連の資金援助を得ていたこと) を握られたロシアの傀儡だからである」との説を大胆に打ち出したことは,芸能人化した他のコメンテーターにはなかなかできないことであるとは思うが,それならそれでその説の詳細と根拠を,口頭ではなく文章で,可能なら総合雑誌に論文として示さねばならない.それがジャーナリストの責任というものだ.口先で憶測を言いっぱなしにするだけなら私にだってできる.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月13日 (金)

カチューシャ

 東海林さだお『ゆでたまごの丸かじり』(文春文庫) に収められている「再びがんばれ!デパート大食堂」に,昔のデパートの食堂のことが書かれている.

 その中に
「わたしがいまでもよく覚えているのは大食堂のウェートレスです。紺の制服のエリとエプロンが白くて、頭には白いカチューシャ」
「あれって、いまのアキバのメードスタイルの原型じゃないですか」
とある.

 メイドさんの原型か.そういわれりゃそうだ.スカートの丈とフリル以外は.
 ていうか,純正メイド→大食堂のウェイトレス→アキバのメイドのような気がする.
 試みに秋葉原のメイドさんの画像を検索してみた.
 確かにほぼ全員が引用文にあるように《白いカチューシャ》をしている.わずかにカチューシャなしのコがいるが,なんとなくメイドさんっぽくない.白いカチューシャはアキバメイドさん必須アイテムのようである.
 ただし,ここでいうカチューシャは本来のカチューシャではなく,広義のカチューシャで,布製のものをいっている.デパートのウェイトレスさんがしていたのはこのヘアバンドみたいなもののはず.東海林さだおもそれをイメージして書いていると思われる.

 ところで,あのカチューシャは何故にカチューシャというのかがわからない.
 カチューシャという名のロシア娘が髪に飾っていたとかいう「いわれ」でもあるからなのか.あるいは全然関係ないのか.それとも,片仮名で書けば一緒だがそもそも別の言葉なのか.
 大正二年,トルストイ『復活』の主人公であるカチューシャを演じた松井須磨子が劇中でしていた髪飾りが,当時の本邦婦女子の流行となり,それをカチューシャと呼ぶようになったとするサイトがあるが,残念ながらその説の出典が明らかでない.もしこの説が正しいとすれば,髪飾りのカチューシャは和製ロシア語であるが,歌のカチューシャはロシアの女性名であることになる.
 しかし,Wikipedia【ヘアバンド】には
だが『復活』の演劇が大人気となったことは事実であり、カチューシャや松井と何の関係もないにも関わらず、カチューシャの名を冠した便乗商品が当時は多数出現したと言われる》(引用文中「松井」は松井須磨子のこと)
と書かれている.これによれば,松井須磨子演じたところのカチューシャと髪飾りのカチューシャは無関係である.

 さて私たち高齢者は,カチューシャと聞いて先ず何を思い出すだろう.
 ロシアの流行歌「カチューシャ」だろうか.
 それとも作詞は島村抱月と相馬御風,作曲が中山晋平にして松井須磨子が歌う「カチューシャの唄」だろうか.
 私自身はロシアの歌のほうだ.大学に入ったばかりの頃,新宿の歌声喫茶へ同級の女性活動家 (余談だが一浪二留で年上の人だった.一年生のオルグ担当だったために二留したという噂だった) に連れられて行ったことがある.それでこの歌を覚えた.

 それから時が過ぎて,新宿の「歌声喫茶カチューシャ」(既に閉店して久しい) にはニフティのオフ会 (FS20;昭和20年代フォーラム) でも一度行った.その時も「カチューシャ」を歌った記憶がある.あの時の皆さんは今もお元気だろうか.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月12日 (木)

雑多感想 (3/12)

(一)
 埼玉県川島町の越辺川で,クロスボウ (報道はボウガンだとしている;矢で製造者が特定されたのかも知れない) の矢が刺さった状態で発見されて手当てを受けていたコハクチョウが八日夜に死んだ.このコハクチョウと行動を共にしていた四羽のコハクチョウは,帰らない仲間を待つようにして未だ旅立っていないという (3/10現在).胸痛む事件である.
 クロスボウ (主にボウガンらしい) は,これまでにも動物虐待にしばしば使われてきた.一定の刃渡りの刃物を刀剣と見做すように,クロスボウの所持を届出制にできないものか.

(二)
 塩月弥栄子氏が逝去された.氏の『冠婚葬祭入門』は昭和四十五年に出版されたミリオンセラー.
『冠婚葬祭入門』は,地方における大家族制から逃れ,伝統的な冠婚葬祭知識を持たずに都市勤労者となった団塊の世代に「しきたり」を教えるものであった.
 今になって振り返ると,日本各地に様々な冠婚葬祭の「しきたり」があるわけで,しかるに『冠婚葬祭入門』は塩月弥栄子氏流の知識作法を全国に広めた弊害もあったといえよう.
 今は『冠婚葬祭入門』の代わりにテレビやネットがあるのだが,しかしこれは逆に,出処不明の事を勝手に流布(*註) していることがあり,実際の冠婚葬祭にあたって迷うことがある.
 「しきたり」には地方地域による特色の他に,時代による変化もある.先月の雛祭りのときの新聞記事で「内裏雛の男雛女雛の左右はどう配置する」というものがあった.
 男雛女雛の配置は明治と大正以降で左右逆転した.これは結婚式における新郎新婦の立ち方にも影響するのであるが,『冠婚葬祭入門』ではどう書かれていたのだろうと,ふと思った.
  (*註) 「あんた地獄に落ちるわよ!」で有名な女占い師が,柏手について,男は音を立てて打ち,女は音を出さずに打つのが正しい作法だとテレビで発言したため,葬儀でもないのに忍び手を打つ女性が増えてしまったのはその例である.反対に神葬祭なのに音高く柏手を打ってしまう男も増えたらしい.ついでだが,この女占い師は「あんた地獄に落ちるわよ!」がテレビでウケたため,図に乗って「あんた地獄に落とすわよ!」と言い放ち,世の常識人の嘲笑をかった.

(三)
 大震災から四年の月日が流れた.
 もはや政府は被災地のことなど眼中にないかのようだが,震災に無関係な林道整備など,全国各地で震災復興予算にみせかけた乱費が行われたことはどうなったのであろうか.
 来年三月で「集中復興期間」が終わるが,福島第一原発では汚染水処理という賽の河原の石積みがいつ果てるともなく行われている.
 原発事故発生のプロセスは推定されるものの,現状では福島第一原発が不可触であるために,事故原因解明の見通しが全く立たない.すなわち福島原発の現状は,あの日から一歩も先に進んでいないのである.
 昨日,天皇は大震災で亡くなった人々とその遺族に向けて追悼の言葉を発せられた.これを聞いた国民は多かろう.大震災発生の直後から天皇は,被災地に国民皆が心を一つにしてより添っていこうと,一貫して国民に訴えかけてこられた.しかるに,天皇の呼びかけに応え,率先してこの国難にあたるべき国会議員の中に不逞の輩がいる.(四へ)

(四)
 昨年の十月三日,中川昭一元財務相の五年目の命日に,妻の中川郁子農水政務官が産経新聞の取材に答えて,平然と亡夫の思い出を語っていたが,その陰で,いわゆる路チューはまだよしとして,時と場所をわきまえずに不謹慎極まりないことをしていたのではないかとの疑惑が報道されている.この女は (相手の男もそうだが) 恥というものを知らないのだろうか.品性下劣は更迭の理由にならぬとみえる.

(五)
 「イスラム国」に殺害されたジャーナリスト後藤健二氏に関して,殺害時の様子を,落ち着いて自己責任をとる姿が立派だと評した時事評論家がいる.
 時事通信が,「イスラム国」による後藤氏殺害の現場を目撃した元「イスラム国」通訳の証言を伝えている.(以下の《》は 2015/3/10 21:55 配信記事からの引用)
 同通訳によると,《外国人人質に対しては殺害前に何度も「模擬処刑」が行われ、「ビデオ撮影だけで、殺すことはない。(出身国の) 政府がシリアを攻撃するのを止めさせるだけで、あなたはわれわれのお客だ」と言い聞かせることになっている》という.
 このインタビューを行った英スカイテレビは《映像の中で多くの人質が落ち着いた様子に見えるのはこのためとみられる》と報道したとのことである.うかつなことは言えないものである.

(六)
 コンビニエンスストア業界三位のファミリーマートが,同四位のサークルKサンクスを吸収することになった.
 来年九月以降,順次店舗名を統一するという.セブン―イレブンと同規模のコンビニが誕生することになる.さあ,どうするローソン.
 話は唐突だが,うちの近所のファミマに行き,レジ横のケースの中の骨付きレッドチリチキンを指さして「これ二本ください」といったら,バイトの女の子が「レッドホットチキンですね」と言った.それはケンタッキーだ.
 それはそれとして,ファミマのチキンはプレミアムもレッドチリもケンタッキーよりうまい.最近ハマっていて,昨日なんか朝昼晩で四本も食った.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月11日 (水)

松谷みよ子さん逝く

 新聞各紙が,松谷みよ子さんの訃報を伝えた.

 各紙とも,松谷さんの業績として民話の採録と民話を元にした創作活動を挙げている.しかし私は松谷さんの読者ではないので,著書は『日本の伝説(上)(下)』(講談社文庫) しか持っていない.
 この『日本の伝説(上)(下)』は「狐・狸・蛇の話」とか「長者・姫君などの話」のように民話を分類していて,それはそれで結構なのであるが,「」でくくった会話文は方言を模した言葉混じりの共通語で,地の文は全くの共通語で書いてあることに私は違和感を覚えた.それは文学的創作の手法のように思われたのである.

 また各民話の末尾に,例えば (長野県) などと書かれているが,それでは余りにも大ざっぱすぎると思われる.そもそも各地の民話ができた時代に,後の世になって政治的に作られた「長野県」などがあったわけがないからだ.

 さらには,全国にその名がよく知られている伝説,例えば酒呑童子の話でも,色んなバリエイションがあるにもかかわらず,一つしか収載していないということも問題だ.そのことによって,豊かな内容を持つはずの酒呑童子伝説が,たった一つに固定されてしまっているのである.

 もう一つ大事なことがある.この二冊に収められている民話が松谷さんの創作ではないとの確証が持てないのだ.
 松谷さんは驚くべきほど多くの著書を残したが,その中には日本の民話の形を正しく伝えた本 (どこの誰から実際に採話したものであるかが示されているもの) はあるのだろうか.少なくとも講談社文庫版『日本の伝説(上)(下)』を私は信用できない.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月10日 (火)

プレゼントにちょっといいかも

 少し前のことになるが,JR東日本が「東京駅開業100周年記念 Suica 」を発行枚数限定 (一万五千枚) で発売しようとしたところ,購入希望者が殺到したために発売延期になった.

 JR東日本は方針を急遽変更して限定販売をやめ,ネットと郵送で予約受け付けを開始し,予約した購入希望者全員に「東京駅開業100周年記念 Suica 」を届けると約束した.
 これはオークションでこの記念 Suica が暴騰取引されるのを防ぐためである.
 しかし製造枚数のキャパは大きくなく,この三月までに発行可能な枚数は約十万枚であるという.

 中には複数枚の購入希望者もいるから,この記念 Suica を予約した人の総数はわからないが,総枚数でいうと,聞いて驚け,約四百九十九万枚だ.

 なんでそんなことを知っているかというと,実は私も予約した (しかも三枚も ヾ(--;) ) のであり,昨日JR東日本から予約者宛の通知がきて,それに書いてあったのだ.
 私は予約するのが遅かったが,現物発送は予約の先着順ではなく,ランダムであるというから,早ければ今年の六月,遅ければ来年三月に現物が届くことになる.
 来年三月というと一年先の話だ.生きる楽しみができた.よかったよかった.ヾ(--;)

 この Suica は千五百円のチャージと五百円のデポジットが入っている.これを機会に複数枚所持者が増えると予想され,そうするとJR東日本は [その枚数 × 五百円] の資金を集めたことになる.
 JR東日本としては「東京駅開業100周年記念 Suica 」をユーザーサービスのつもりで企画したのだろうが,ちょいとした経済効果もあったということである.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 9日 (月)

キヤベイジの葉は

 読売の掲示板「発言小町」に,「キャベツを料理するときに,葉をはがして洗うか?」という趣旨のトピが立てられた.
 トピ主自身は一枚いちまい葉をはがして洗う人であるが,回答レスは「洗わない」人のほうが多い.まあ,普通は洗わないだろう.

 それはそれとして,「洗う」と答えた人の回答理由に次の三種類があるのがおもしろかった.

1.キャベツの中に泥が入っていたら嫌だから洗う.
2.以前からなんとなく洗っている.
3.料理の本に,キャベツの中の汚れ(土)を洗いなさいと書いてある.

 問題は 1 の回答者で,この人たちは「キャベツはいったん全部の葉が開いたまま大きくなり,次に一番内側の小さな葉から結球が始まる.その小さな球を,すぐ外側の広がっていた葉が包み込む.それをまたすぐ外側の広がっていた葉が包み込む.このようにして小さな球が次第に大きく丸くなっていくのだから,その途中で当然中に泥が入る」と思い込んでいる.あの不気味なキャベツ畑人形よりも更にシュールなイメージであるが,そう思い込んでいるのだから仕方ない.

 これに対してレスの多数派は「いったん大きく開いた葉の内側の葉から結球が始まるが,それからあとは結球を始めたときの固い葉 (非可食部) に保護されるような状態下に,その内側で,茎から出た若い葉が外側へ膨張するように大きくなって固く巻いていくのだから,キャベツの中に泥が入り込むことはあり得ない」と正しい知識を持っている.だからキャベツを料理するときに葉をはがして洗う必要はないのだと.

 ただし,このキャベツ問題は発言小町の定番トピであり,前は「中に泥があるから洗う必要がある」という回答が多数派だったこともある.
 発言小町の編集者がその時の気分でどっちを採用掲載するかを決めているから,そうなってしまう.発言小町の編集者は,一般常識よりも,トピが炎上するとか,盛り上がることを優先して投稿を取捨選択しているので,正しい知識をいくら投稿しても掲載されないことが多い (私はこれを実験して確かめてみたことがあり,その結果を示して「恣意的な編集が目に余る,社会の公器たる新聞が間違った情報を垂れ流すとは一体どういう了見だ」と編集者にクレームをつけたら,発言小町からバンされてしまった).

 で,今回はこれでめでたしメデタシかというと,そうでない.
 「チューさんの今昔ばなし」という個人サイトのコンテンツ「野菜のハテナ?Q&A」に
今ではキャベツも結球ハクサイもレタスもしっかりと結球するのが当たり前のようになっていますが、これはここ数十年の品種改良によるものです。昭和の初めごろまでは、キャベツも結球ハクサイも2~3割くらいは畑でしっかり結球しないものでした》と書かれているのを見つけた.
 このサイトの筆者は自己紹介によると国立大学農学部で教鞭をとっていたかたである.

 《昭和の初めごろまでは、キャベツも結球ハクサイも2~3割くらいは畑でしっかり結球しないものでした》とは,戦後生まれの私は知らなかった.
 調べたところ,確かに,キャベツの品種改良が進んだのは大正時代であった.
 ということは,戦前の料理本には「キヤベイジの葉は剥がして洗ひませう」とか書いてあった可能性がある.それが現代の料理本にも伝承されている (上記の回答 3) のだろうか.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 8日 (日)

パングラタン

 私はブラウザを立ち上げたときのポータルの一つに msn をセットしているのだが,その msn のコンテンツ「フード&レシピ」に,「簡単、パングラタンの作り方」という動画があったので閲覧してみた.
 これはタイトルが「わたなべみゆきの3ミニットミール」で,キャプションに《3分でできる「あつあつパングラタン」  人気の料理家やシェフがお届けする3ミニットミールズ! たった3分で簡単にできる、おかずやスイーツのレシピが満載です。今回はわたなべみゆきさんが「パングラタン」をご紹介》と書かれている.

 わたなべみゆき さんという人を私は知らなかったのだが,ブログ『空のパン』を探しあてて筆者のプロファイルを読んでみると,お一人でパン工房を開き,作ったパンの通販などをしている人であるらしい.

 前置きはそれくらいにして,私はパイとかパンを入れ物にしたグラタンが大好きだ.
 おいしい.
 でも,いざ作るとなるとすごく面倒くさい.
 そのパングラタンがたった三分でできるなんてすばらしい! カップ麺みたいだ!
 そんな期待でわくわくしながら私は動画を再生し,画面に目をこらした.

 まず,ブールに似た丸いパンにフォークで穴を開ける (クラムを少し残して中身をざっくりと取り出してしまう).その穴に下ごしらえしたグラタンを詰めると彼女は説明するのだが,なぜか既にグラタンの下ごしらえは済んでいる.

 次に「パンの上にとろけるチーズを載せ,220℃に予熱したオーブンに入れます」と彼女は言うが,なぜか既にオーブンの予熱は済んでいる.(しかしこれは手際よくやれば問題ないけどね)

 それから「オーブンにパンを入れて 10分焼きます」だって.
 あれ,三分でできるんじゃないのですか.と思ったら,実は動画の再生時間が三分なのであった.
 そりゃそうだよね.パングラタンがたった三分でできるなんて,そんなうまい話があるわけない.

 しかし,だとすると
3分でできる「あつあつパングラタン」  人気の料理家やシェフがお届けする3ミニットミールズ! たった3分で簡単にできる、おかずやスイーツのレシピが満載です。今回はわたなべみゆきさんが「パングラタン」をご紹介
は,どーゆーことでしょうか,わたなべみゆき さん.

 と書いてはみたが,悪いのは わたなべみゆき さんじゃないと思う.明らかに,動画の中身を見もしないで羊頭狗肉なキャプションを書いたやつが悪い.あのキューピー 3 分クッキングの「3 分」だって,「3 分でできる」という意味じゃないのだ.
 羊頭狗肉キャプションを書いたのは誰なんだと思って調べたら,この「誰々の 3 ミニットミール」という一連の動画は FOODIES magazine という別サイトのコンテンツで,それを msn が引用しているのだった.
 そして他の「誰々の 3 ミニットミール」を見てみたのだが,やはり時間がかかる料理を三分の動画にしているだけで,《たった3分で簡単にできる》は釣りで,嘘だった.つまりこの FOODIES magazine というサイトは,他のコンテンツの内容も信用できないと考えられる.

 それはそれとして,若い (私からみれば) 女性が,パン作りが好きで,パン工房を作って,通信販売を始めて,それからパン作り講習会も始めたりして,そういう生き方を,普通の会社員であった私のような爺さんは,まぶしいもののように見てしまう.

 わたなべみゆき さんのような人は,インターネットがあろうがなかろうが,必ずや道を切り開くとは思うのだが,ネットはその一助になっていると思う.いい時代になった.
 空のパン,頑張ってね.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 7日 (土)

嘘を書く百田尚樹

 私は週刊文春の読者なので,百田尚樹が昨年末から連載を始めた『幻庵』も目を通しているのだが,これがもう酷い小説なのだ.
『幻庵』は江戸時代の実在の囲碁棋士である井上幻庵因碩を主人公とした作品だが,まず,史実と異なることを平気で書いている.歴史上の人物が登場する作品で史実と異なることを書くのはいかがなものか.
 例えば江戸時代初期に活躍した囲碁の本因坊算砂と将棋の大橋宗桂について,本因坊算砂が大橋宗桂よりも将棋が強かったと書いて,世の将棋ファンに嘲笑された.この件についての百田の弁解を読むと,どうやらこの三文作家 (総理大臣のお友達) は資料を調べて書くということをしないようだ.
 また『幻庵』の連載ページには序盤の布石図などが載っているのだが,百田による布石解説がまたデタラメ.百田尚樹は自称六段だそうだが,とてもそうは思えない.

 

 囲碁にまつわる文学としては,川端康成の『名人』に止めを刺す.
 これまでのところ,百田尚樹は『幻庵』で,誰が誰と戦って勝った負けたと,そんなことばかり書いているが,ひょっとしたら『名人』を読んでいないのではないか.『幻庵』はいずれ『名人』と比較されるのが明らかなのだから,もし読んでいるとしたら,こんな書きぶりでは随分いい度胸をしていると言わざるを得ない.

 

 宮崎駿監督は百田尚樹の『永遠の0』について「嘘八百」と評した.同『純愛』は,やしきたかじん の長女に出版差し止めと損害賠償を求める裁判を起こされている.よく調べもせずに書き飛ばすからそういうことになる.なんら反省することなくその調子で『幻庵』を書いているわけだ.

『幻庵』も,連載終了までに百田がどんな恥ずかしい嘘捏造を書き散らすのか,むしろ楽しみである.

| | トラックバック (0)

2015年3月 6日 (金)

(続) いい日でした

 先日,年金機構から書類が送られてきた.
 この三月で私は六十五歳となり,厚生年金が報酬比例部分の一部支給から全額支給になるのだが,それに関する手続き書類である.

 さて私はいよいよ高齢者だ.
 昔々,大学を出て就職をした頃には,自分が隠居生活に入ることなんて考えもしなかった.思えば遠くに来たもんだ.
 と,しみじみしたあと,唐突に何はともあれお祝いだと思いつき,愛犬のプー子 (↓;仮名) を連れて,藤沢の大庭にある大衆イタリアン「マカロニ市場」へランチを食べに行った.

20150306lovely

 去年の秋に仕事を辞めたあと,めっきり外食する機会も減ってしまい,たまに入る店といえばフードコートの はなまるうどん とか,五百円で具なし炒飯食い放題の紅太陽とか,客のいない十代目哲麺とか,そんなのばかりなので,ここは一つ雰囲気を変えようと思ったのである.

 とはいえ年金生活の身分であるからして,若い男が気合を入れて女の子を連れて行くような店には行けない.マカロニ市場の藤沢店は,そんな年寄りにぴったりの店だ.ペットの犬も入れるところが高ポイント.
 ただ,この店は平日のブランチが大人気で,開店したらすぐ駐車場が満車になってしまう.ちょっと遅れたら諦めなければいけないので,開店の十一時少し過ぎには店に着くように出かける.
 で,駐車場の空きがあと二台のときに滑り込んだ私とプー子はワンちゃんレストランに席をとった.

 すぐに,ちょっとかわいい店員さんがやってきて,ブランチメニューの説明をしてくれた.ブランチは,パスタ,ピザ,グラタン,チャウダーから選択し,これにサラダとドリンクとパンの食べ放題がセットになっている.
 パスタはトマトソースと和風とクリームソースから選ぶようになっているので,クリームソースのスパゲッティにした.
 彼女はとてもフレンドリィで,トイプードルを多頭飼いしていると話した.すごく犬好きな様子で,うちのプー子を可愛いかわいいとホメてくれた.

 やがて,そのちょっとかわいい店員さんが
「お待ちどうさまでした」
とパスタを運んできたが,それはホウレンソウとベーコンの和風スパゲッティだった.
 私は「ん?」と思ったが,
「僕がオーダーしたのはクリームソースだよ」
とクレームしたら彼女の失点になってしまうと思ったので,
「お~おいしそうだあ」
などと言いつつ何食わぬ顔で食べ始めた.(実際それはおいしかったのだ)

 ところが数分後,あのちょっとかわいい店員さんが慌てた様子でクリームソース・スパゲッティの皿を持ってかけつけてきて,
「申し訳ありませ~んっ,ご注文のお皿はこちらでした,はあはあ」
と言うではないか.
 どうやらオーダーの受け間違いではなくて,デリバリを間違ったらしい.ということは
「僕がオーダーしたのはクリームソースだよ」
と,和風スパを持ってきたときにすぐ言えばよかったのだ.
「ごめ~ん,自分が何を頼んだか忘れた.もう食べ始めたから,これでいいよ」
と私が言うと,彼女は
「いいえ,私の間違いですから,どうぞこれも召し上がってください.お願いします」
と言い,にっこりと笑顔をみせた.
 よく見ると,ちょっとかわいい店員さんだと思ったのは私の間違いで,彼女はすごくかわいい店員さんなのであった.おなじ文章をこのあいだ書いた気がするが.

 そういう事情で私は焼きたてパン食べ放題とパスタを二皿も食べることになった.
 ずっと以前からこのマカロニ市場の藤沢店は贔屓にしているが,ブランチ二人前を一人前の値段で食べたのは初めてである.なんていいお店なんだ,マカロニ市場藤沢店.
(お世辞でなく,このレストランの接客はとてもいい.スタッフの笑顔がすてきだ.ブランチのお値段はちょっと高めだけど,ほんとおすすめ)

【関連記事】
 いい日でした (2/23)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 5日 (木)

裏メニュー「フグ肝」

 読売新聞 (Yomiuri Online 3/2 7:33) などが伝えたところによれば,和歌山市黒田の飲食店「創作料理赤心」でトラフグの肝臓を食べた四十~五十歳代の男性三人が嘔吐や呼吸困難など意識不明の重症に陥った.

 

 トラフグの肝臓を食べて死んだことで有名なのは,八代目坂東三津五郎だ.昭和五十年一月十六日のことである.享年六十八.
 Wikipedia【坂東三津五郎 (8代目)】から引用する.
 《フグ中毒[編集]
八代目三津五郎の急死は、以後「フグ中毒」といえば「三津五郎」の名が必ず例に挙げられるようになるほどの大事件だった。この事件は、危険を承知の上で毒性の高い肝を実に四人前も食らげた三津五郎がいけなかったのか、フグ調理師免許を持っているはずの板前の包丁捌きがいけなかったのかで、従前にはなかった大論争を引き起こしたことでも名高い。法廷では、「もう一皿、もう一皿」とせがむ三津五郎に板前が渋々料理を出したことが争点となった。当時はまだフグ中毒事件を起こした調理師に刑事裁判で有罪判決が下ることは稀だったが、結局この事件では「渋った」板前が調理を「しくじった」ことに変わりはないとして、業務上過失致死罪及び京都府条例違反で執行猶予付の禁固刑という有罪判決が出て、世間を驚かせている。

 

 この事件の刑事裁判判決文がみつからないので,元々の判決の誤りか Wikipedia の記述の間違いかわからないが,引用文中の下線部は明らかに誤りである.トラフグなどフグの毒は微生物が生産したテトロドトキシンが生物濃縮によって体内に蓄積したものと考えられ,「調理を失敗したために」無毒な肝が有毒化するのではないからである.(毒の強弱はテトロドトキシン蓄積量によるため個体によって異なる)

 ともあれこの事件のあと,飲食店がトラフグ等の無毒可食部以外を客に提供することは食品衛生法で明確に禁じられた.客に提供してよい可食部が定められており,それ以外の部位の提供は,現行食品衛生法の第六条違反である.

 ところが,客が注文するとトラフグの肝を提供する料理店が全国各地で後を絶たないのが実情である (建前として,各地の保健所等の行政サイドは,飲食店によるフグ肝の提供はありえないと完全に否定するが,実際に発生する食中毒事件が建前を裏切っている).

 これは,食べた客が死ねば業務上過失致死罪に問われるが,死ななければ食衛法違反にすぎないため,提供する店側に法令遵守する気がないからである.

 フグ肝の食中毒が発生すると,店側は必ず「客が無理強いするので仕方なく提供した」と言うのだが,それが嘘であることは,口も下半身も軽い (どれくらい軽いかは週刊文春の報道に譲る…検索すれば容易にわかる) 元宮崎県知事の東国原英夫が漏らしている.東国原によれば,よく利用するフグ料理屋には「裏メニュー」にフグ肝があり,注文すれば食べられると発言している.

 

 元祖淫行タレントである東国原は,三年少し前のフグ料理シーズンに,ジョギング中に女性をナンパし,東京銀座の料理店「ふぐ福治」に連れて行ってフグ肝を食い,その女性は中毒を起こした.(J-CAST ニュース《銀座「フグ騒動」の主役は東国原英夫氏 「可食性フグ肝ある」と主張するが保健所は全面否定》)

 詳細はこの報道記事に譲るが,東国原が《九州の宮崎・大分では毒性のないふぐ肝が提供されることが多々あります》と発言していることは見逃せない.宮崎・大分にはそのような悪質な店が存在していて,みんなで公然の秘密にしているのに,口の軽い東国原がしゃべってしまったということだ.
 東国原の県知事時代,知事が率先してフグ肝を食っていたわけだから,宮崎県では食の安全安心もへったくれもないわけで,こういう男を選挙で選んでしまう宮崎の県民性は日本の笑いものだ.
 大分の保健行政はもっと笑いもので,ネット上では大分に行けばフグ肝が堂々と食えるとされていて,店の名も明らかなのに,県はこれを放置している.レベルが低すぎだ.

 一方,法違反を承知の上でフグ肝を出した「ふぐ福治」店主は取材に対して,例によって《こちらから進んで出してはいません。要求がなければ絶対に出しませんよ》と語った.
 しかしこれを言い換えれば,要求があれば提供する裏メニューであるわけで,語るに落ちるとはこのことだ.

 

 ところで週刊誌によれば下半身が軽いとされる東国原は,ナンパした女性が食中毒を起こさなかったら,食事のあとどうしたのであろうか.
 少し前のテレビ番組 (TBS「ニンゲン観察バラエティ モニタリング」) で東国原は,若い東国原夫人の無駄遣いを懇々と道理を説いていさめていたが,自分の方はナンパした行きずりの女性に高級店でフグを奢っていて,これは無駄遣いではないようだ.なるほど.費用対効果ということか.

| | トラックバック (0)

2015年3月 4日 (水)

懐かしの塩味麺 (補遺二)

 昔,谷内六郎という画家がいた.
 絵本や漫画などの画業もあるが,全国にその名を知らしめたのは,昭和三十一年の週刊新潮の創刊号以来,二十六年間ずっと描き続けた表紙絵である.
 今も横須賀美術館谷内六郎館 (常設展示) があるためか,若い人にも人気があるようだ.
 新潮社も,かつて山口瞳の連載コラムと並んで週刊新潮の人気を不動のものとしてくれた谷内六郎の画業遺産を,後世に伝えようとしている.
 しかし明星チャルメラの初期のパッケージデザインに谷内六郎のイラストが使用されていたことは,意外に知らない人が多い.おそらく包装に描かれた谷内のイラストはそれだけだったはずである.
 ところが明星食品の経営者は,谷内六郎の絵の価値がわからなかったのであろう.何度も包装デザイン (通称チャルメラおじさん) をリニュアルし,別のイラストレーターの手で,谷内のオリジナルとは似ても似つかぬもの (ほとんどパクリといっていい) に描き直してしまった.
 ここまでオリジナルを改竄してしまうと,もう泉下の谷内六郎に申し訳が立たない.恥を知る会社なら復刻版のリリースはできないだろう.残念なことである.
 資料を一つ挙げておく.チャルメラおじさんのオリジナルと現在はここ
 
 余談だが,食品包装に使用されたイラストや漫画としては,チャルメラおじさんの他に,「桃屋の江戸むらさき」に使われた喜劇俳優三木のり平の自筆似顔絵が有名である.三木のり平キャラは桃屋ある限り同社の財産であろう.
 おおば比呂司画伯はいくつも商業デザイン作品 (株式会社巖手屋の南部せんべい,ホテイフーズのやきとり缶詰など) を残している.巖手屋は同社ウェブサイトにおいて今も,三十年近く前に亡くなった故画伯に対する謝意を表明している.人の世の中は,こうでなくてはいかんと私には思われる.しかるに明星食品 (以下略).

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 3日 (火)

懐かしの塩味麺 (補遺一)

 昨日の記事に書いた《インスタントラーメンの始まりが日清食品の発明になるチキンラーメンであることは,ほぼコンセンサスがとれていると言っていい》について,補足したいことがある.
 Wikipedia【インスタントラーメン】から下に引用する.
 
インスタントラーメンの定義自体が一定しておらず、「数分ゆでれば食べられる麺」とするなら、古くからある乾麺はすべて該当する。また、「油で揚げて保存性を高めた麺」とするならば、清代には「伊府麺」という油で揚げる製法で、ある程度の保存性があり、でん粉が糊化(α化)した麺がつくられており、香港や台湾では現在も一般的に食べられている。フライ麺という製法で作り置きができ、手早く食べられるという点ではこの伊府麺はインスタントラーメンと同じ発想の食品とみることができる。しかし、これらは麺以外にスープを別に用意する必要があり、即席にすぐ食べられるものではなかった。
 
 まず《香港や台湾では現在も一般的に食べられている》とあるが,中国本土の上海以南で,街角のごく普通の食堂で私は食べたことがある.
 伊府麺は,市場や,町中の乾物屋みたいな食材店にも置いてあった.チキンラーメンのように個包装されておらず,買うときは店の人に個数を言って包んでもらう.
 大事なことは,Wikipedia【インスタントラーメン】の記述には《麺以外にスープを別に用意する必要があり、即席にすぐ食べられるものではなかった》とあるが,スープで味付けした麺を揚げた伊府麺もあり,これは麺がもっと太いことを除けば,まるでチキンラーメンである.
 中国へ食材の調査に行ったとき,本来の伊府麺は大昔の旅行用携行食品だったと現地の人に聞いた.だからスープをわざわざ作るなどの手間はかけられないわけで,湯戻しだけで食べられるようにしたのが伊府麺の元々のものだという.これは現地の店の人に聞いた伝聞 (もちろん通訳を介して) ではあるが,私はインスタントラーメンの元祖は伊府麺だと思っている.
 ただし,伊府麺はチキンラーメンのような汁そばではない.焼きそば状態に調理して皿に盛って提供されるのであり,これは中国の他の麺料理と同じである.(グーグルで伊府麺の画像を検索すると,丼に入れたあんかけそばの画像がでてくるが,あれは日本の中華料理屋で出しているものの写真だろう.なぜなら,具に蒲鉾が使ってある (笑) )
 また三省堂大辞林【伊府麺】に
 
〔中国語〕卵入りの麺を下ゆでしてから油で揚げ,さらに炒めて味つけする,広東省潮州の麺料理
 
とある.
 私もここに書かれている潮州料理の伊府麺を広州市の高級レストランで食べたことがあるが,大衆食堂における伊府麺料理とは一線を画する洗練された料理であった.まして保存食の伊府麺とは別物である.
 私が思うに,チキンラーメンの発明について安藤百福が自伝にどう書こうと,台湾出身の安藤は伊府麺を知っていたに違いない.だから安藤百福の大発明は味付け麺を油熱乾燥する製法にあるのではない.伊府麺を,日本人が蕎麦やうどんで慣れ親しんだ汁そば形態に造り変えたことである.その意味で,インスタントラーメンの発明者は間違いなく安藤百福であるが,ただし Wikipedia【インスタントラーメン】の記述には問題があると指摘しておきたい.
 最後に,伊府麺は横浜の中華街の食材店でも輸入品が売られているが,チキンラーメンのように酸化防止策がとられているわけではないから,食べないほうがいいと私は思う.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 2日 (月)

懐かしの塩味麺

 インスタントラーメンの始まりが日清食品の発明になるチキンラーメンであることは,ほぼコンセンサスがとれていると言っていい.
 私が初めてチキンラーメンを口にしたのは昭和三十八年 (1963年) の十一月二十二日であった.
 なんで日付まで覚えているかというと,私はこの日に同級生二人と友達の家へ遊びに行き,みんなでチキンラーメンを食べながら,衛星中継でジョン・F・ケネディが暗殺されたことを知ったからである.
 ちなみにこの年の七月は,日清食品が日清焼そばを,サンヨー食品がピヨピヨラーメンを発売したことで知られる.ピヨピヨラーメンて知りませんか.そうですか.サンヨー食品は私が生まれ育った土地を代表する企業なんですが,サンヨーのピヨピヨラーメンて知りませんか.残念です.
 サンヨー食品は,即席麺製造を始めた頃は地元の中小企業 (社名を富士製麺といった) で,きれいに個包装したラーメンではなく,筒状のビニール袋に揚げ麺を五つか六つ入れて袋の口をヒモで閉じたノーブランドのラーメンを,地元の青果市場ルート (小売りは八百屋) で販売していた.これは,たぶんサンヨー食品の社員でも,現役の人は知らないと思う.
 このノーブランドのラーメンが,やがてピヨピヨラーメンとなったのである.
 サンヨー食品はサッポロ一番しょうゆ味を昭和四十一年に発売し,これは大したことなかったが,昭和四十三年発売のサッポロ一番みそラーメンが大ヒットして,これが現在のサンヨー食品を作った.
 また木の実スパイス小袋別添という贅沢な仕様で知られる明星チャルメラの発売が昭和四十一年 (1966年) 九月七日であることは周知のことである.周知でないですか.そういう人は,チャルメラ検定の仮麺試験を受けていただきたい.
 
 ついでだから現在にいたる袋入りインスタントラーメン (通称「袋麺」) の定番中の定番 (*) にしてロングラン商品をまとめて挙げておく.
【日清食品】
  チキンラーメン      昭和三十三年八月
  出前一丁         昭和四十三年(不明)月
【明星食品】
  明星チャルメラ      昭和四十一年九月
【サンヨー食品】
  ピヨピヨラーメン     昭和三十八年七月
  長崎タンメン       昭和三十九年八月
  サッポロ一番しょうゆ味  昭和四十一年一月
  サッポロ一番みそラーメン 昭和四十三年九月
  サッポロ一番塩らーめん  昭和四十六年九月
(*) 東洋水産のマルちゃんブランドは今でこそメジャーブランドであるが,昭和の頃,関東地方特に首都圏では日清食品,明星食品,サンヨー食品の後塵を拝する二流品と見られており,私は当時食べた記憶がない.
 ピヨピヨラーメンと長崎タンメンは既に姿を消して久しいが,私の思い出のラーメンなので無理やりここに載せた.
 
 冒頭に書いたようにケネディ暗殺の日にチキンラーメンを食べて以来,中学,高校,大学と,私の人生暗かった.違う.日本経済の高度成長期に私の人生は袋麺によって支えられていた.
 飽きずに毎日袋麺を食べた.
 水前寺清子は「一日一個,二日で三個,人生は…」と歌ったが,私も二日に三個は食べた.あーチータはそういう歌は歌ってません.
 川島なお美は「私の体はワインでできているの」と言ったが,「私の体は袋麺でできているの」と言ったのは私である.
 
 で,上に書いたのは全部話の前フリで,次が本題.
 以前は五食パックの袋麺が二百円台 (スーパー店頭通常価格),特売で二百円以下 で販売されていたと思うが,いつ間にか三百円を超えている.
 年明け早々に報道されたようにカツプ麺類の値上げはマスコミが取り上げるが,袋麺価格の動向はニュースに出てこない.
 それで袋麺の価格変動をネットで調べてみようと思ったのだが,調査資料のないことがわかった.
 かなり古い時代の数字はあるのだが,即席麺類の主体がカップ麺になってからは,政府統計も自治体資料も,カップ麺と袋麺の平均価格 (しかも基準重量 77g あたりの補正値) しかないようである.業界団体は資料を持っているかも知れないが公表していない.
 たぶん五食パック袋麺の価格が三百円超になったのは昨年あたりだと思うのだが,これが不明なのは残念である.
 
 さて袋麺全般の値段が高くなっている中で,先日,ある食品スーパーで「明星 評判屋中華そば しお味 五食パック」が百七十八円で売られているのを見つけた.
 へえ~こんな安いのもあるんだ,と感心して購入し,早速食べてみた.
 食べたあとで調べたら,これは百円ショップでよく売られている商品だという.
 通販のレビューには「安いなりの味」と書いている人がいたが,私には昭和四十年代の懐かしい塩ラーメンの味がした.コストダウンを進めると昔の味に戻るのかな.もう一パック買ってこようと思う.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 1日 (日)

温暖化とナミテントウ

 科学史に残るだろう研究不正事件を起こした小保方晴子が華々しくマスコミの前に登場してから一年余が過ぎた.
 理研は小保方の自己都合退職を認めて厄介払いをした.これはもし理研が民間企業であったならば,会社の名誉を棄損したとして懲戒免職にした上で損害賠償を求める事案であるが,理研はそのようにしなかった.理事長以下の関係者一同は,もうすべてなかったことにして生きていくだろう.
 小保方の不正が暴かれていく過程で,小保方擁護の論陣を張って奮闘 (笑) した中部大学の武田邦彦教授は最近のブログ記事で,自分は小保方を擁護も批判もしていないと書き,こっそりとその黒歴史を塗り替えた.武田教授も,もうすべてなかったことにして生きていくだろう.世間ももうすぐ事件を忘れるはずだ.

 どうなることかと思われた小保方晴子の人生は,わずか一年で明るい見通しが立ったわけで,彼女と彼女のファン (例えばエル・カンターレ大川隆法総裁 ヾ(^^; ) ) にとっては結構なことであるが,とばっちりを食ったのは、遺伝学の祖グレゴール・ヨハン・メンデルである.

 Wikipedia【メンデルの法則】に次のような記述が載せられている.
メンデルが論文で報告したデータの一部が、メンデルの法則に合いすぎていることをロナルド・フィッシャーが1936年に発見し、メンデルは自身の仮説に有利なデータの選別を行っていたと推察される。また、追試においてメンデルと同じ実験結果は得られず、現在の科学的検証に耐えられないものとなっている。
 この記述は,メンデルが研究不正をしたのではないかとの疑惑を匂わせている.小保方事件に絡んで,一般新聞の報道においても蒸し返されたこの疑惑の当否は,永久に謎であろう.

 昔の話になるが,私と同世代の人は国立大学理系学部を受験する際に,ほとんどが「物理」と「化学」を受験科目に選択し,「生物」を選んだ人は少数派であった.
 大学入学後も,当時は分子遺伝学の黎明期だったから,現代遺伝学の基礎知識は,学ぶ機会のなかった人のほうが多いはずである.
 だからもし何かの試験で「メンデルの法則を説明しなさい」と言われたら,世の高齢者の多くは,大昔の教科書に書かれていたエンドウの表現型を使って説明し,大幅減点を頂戴する可能性が高い.

 ましてや私は不勉強だから,古典的なエンドウの遺伝に関すること以外は全くお手上げであって,先日 waiwai さんのブログのナミテントウの多様性についての記事を読んだとき,おおそんな話を聞いた覚えがあるなあ,と思わずと遠い目になった.

 それで遅まきながらナミテントウの斑紋の多様性について勉強し,斑紋には四つの基本パターンがあること,少し詳しくみると九つ以上のパターンが肉眼で識別されることを知った.

 へえ~と思ったのは,ナミテントウの斑紋の多様性が地球温暖化と関係しているとの説だった.斑紋四パターンの比率は,ナミテントウが生息する地域の気温に適応した結果だというのである.

 私たちの周辺環境では,次第に黒っぽいナミテントウが増えていくのだろうか.面白い話である.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »