« 大丈夫か宮崎哲弥 | トップページ | はじめての電子書籍 (四) »

2015年2月18日 (水)

新納鶴千代は桜田門外に

 高島俊男『ほめそやしたり クサしたり』(大和書房) を再読.
 残りページ数三分の一ほどからの「新納鶴千代苦笑い」を読み直したら,忘れていたことが幾つかあった.
 まず,この「新納…」は丸谷才一『軽いつづら』(新潮社) を読み始めた高島先生が,連想があちこちに飛んで書かれたものだということ.私は『軽いつづら』を読んだ記憶がない.それで Amazon で『軽いつづら』文庫版の古本を注文した.
 
 それから,新納という姓を,映画『侍ニッポン』と有名なその主題歌『侍ニッポン』ではシンノウとしているが,ニイロと読むのが正しいということも忘れていた.
 色々と記憶違いがあると思われるので,ついでのことにあれこれネット検索してみた.
 
 今回調べてみて初めて知ったことは,映画の原作小説『侍ニッポン』(郡司次郎正・著,春陽文庫) には,昭和七年初版の作品と,戦後に著者自身による改作版と,二つがあるということである.Amazon のレビュワーによると,戦後版は駄作だとのこと.
 そうはいっても戦前版は入手不能なので想像するしかないが,戦前の官憲の弾圧で転向せざるを得ず,農民として生きることを志す左翼青年の心情を,浪人新納鶴千代に仮託したものと思われる.(なんとなく島木健作の作品を連想するが,作者の郡司次郎正自身は転向作家ではない)
 
 実は私は映画主題歌『侍ニッポン』をカラオケで歌うことがある.小説も映画も私よりずっと上の世代のものなのに,なぜか私は「どうせおいらは裏切り者よ」と苦く歌えるのだ.いつどのように覚えたのか全く記憶がないが,もしかすると大学に入って二年目,昭和四十四年の早春,全学封鎖が解除されて授業が再開され,私たち学生が当時の言葉でいうところの「日常性へ埋没」していく中で歌われたものかも知れない.
 
『侍ニッポン』の関連サイトでは《二木紘三のうた物語 》がとてもよい.mp3 の音程に全く間違いがない.

|

« 大丈夫か宮崎哲弥 | トップページ | はじめての電子書籍 (四) »

続・晴耕雨読」カテゴリの記事

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 新納鶴千代は桜田門外に:

« 大丈夫か宮崎哲弥 | トップページ | はじめての電子書籍 (四) »