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2015年2月 8日 (日)

鬼のこと (五)

 鬼と聞くと,還暦過ぎの白土三平ファンは『栬□○潢』(読みは「いしみつ」;□は「身+黒」,○は「ニンベン+黒」) を思い出すかも知れない.
 これは作品集『忍法秘話 弐』に収載されている六作品からなる連作短編である.この中には無限流手裏剣の使い手である抜忍オドの晩年の物語が含まれている.
 『栬□○潢』六作品のうちの二番目『四鬼の巻』は,『太平記』第十六巻「日本朝敵事」に見える藤原千方の伝説を題材にした作品だ.

 さて藤原千方には四匹の鬼を使役していたという伝説があり,Wikipedia【藤原千方の四鬼】に次のように記載されている.
その話によると、平安時代、時の豪族「藤原千方」は、四人の鬼を従えていた。どんな武器も弾き返してしまう堅い体を持つ金鬼(きんき)、強風を繰り出して敵を吹き飛ばす風鬼(ふうき)、如何なる場所でも洪水を起こして敵を溺れさせる水鬼(すいき)、気配を消して敵に奇襲をかける隠形鬼(おんぎょうき。「怨京鬼」と書く事も)である。藤原千方はこの四鬼を使って朝廷に反乱を起こすが、藤原千方を討伐しに来た紀朝雄(きのともお)の和歌により、四鬼は退散してしまう。こうして藤原千方は滅ぼされる事になる。

 ちなみに『太平記』の該当箇所を読みやすく書き直すと次のようである.

「又天智天皇の御宇に藤原千方と云者有て 金鬼風鬼水鬼隠形鬼と云四の鬼を使へり 金鬼は其身堅固にして矢を射るに立ず 風鬼は大風を吹せて敵城を吹破る 水鬼は洪水を流して敵を陸地に溺す 隠形鬼は其形を隠して俄敵を拉 如斯の神変 凡夫の智力を以て可防非ざれば 伊賀伊勢の両国 是が為に妨られて王化に順ふ者なし 爰に紀朝雄と云ける者 宣旨を蒙て彼国に下 一首の歌を読て鬼の中へぞ送ける 草も木も我大君の国なればいづくか鬼の棲なるべき 四の鬼此歌を見て さては我等悪逆無道の臣に随て善政有徳の君を背奉りける事 天罰遁るゝ処無りけりとて忽に四方に去て失にければ 千方勢ひを失て軈て朝雄に討れにけり」

 この四匹の鬼は,『四鬼の巻』では四人の忍者として描かれている.
 物語は藤原千方が朝敵として戦に立ち上がるまでであり,紀朝雄は出てこないが,白土作品としては,いかにもそうあるべしと思われるストーリーである.

 白土三平には別名の作者名義で『鬼』という作品もある.小学館から出ている白土三平単行本未収録作品集に入っている.四方田犬彦がこの作品集の巻末で,『鬼』は後の『忍者武芸帳 影丸伝』に繋がる作品であるとの位置づけを与えている.納得の解説である.

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