失敗四連荘
無理やり探せば日々何かしらのネタはあるもので,今月は一日も休まず記事を書いてきたが,月末に至って力尽きた.まとまりのある話が書けない.まとまりのない話はいつものことだが,いわば筆力の腎虚だ.まあいやらしい.
月末って言い方もなんだか無策である.他の言い方はないのか.
「みそか」は太陰暦の言葉で,晦日 (かいじつ) のことをいう.
Wikipedia 【晦日】には《「みそか」は本来は「三十日」の古い表現(ふつか、みっか、…と続く先にある言葉)だが、実際の日付にかかわらず月の最終日を指す。「みそか」が29日を指す月には30日は存在しないので、混乱が起こることはない》とある.
「みそか」は「三十日」の訓読み (和語) だというわけだ.
しかし「二十九日」はどうやっても「みそか」とは読まない.読めない.
読めないにもかかわらず《実際の日付にかかわらず月の最終日を指す》とはどういうことだ.あまりにもいい加減ではないか.《混乱が起こることはない》で済ませてはいけない問題のように思う.
というわけで,どういうわけだ,今月のまとめようとしてまとめられない話を列挙する.
(一)
週刊文春のグラビアページ「おいしい!私の取り寄せ便」に,民放女子アナの草分にして早口のおしゃべり美女である吉川美代子さんが,井ヶ田製茶 (仙台市) の洋風大福餅『喜久福』の紹介を書いておられた.(2月26日号)
吉川美代子さんは,自分は甘いもの好きではないが,とことわっているのだが,それでも《これほど夢中になったお菓子は初めてです》と絶賛.
それで私は,民放女子アナの草分にして早口のおしゃべり美女であるあの吉川さんがそこまで言うなら私も食べてみたいと思い,楽天経由で注文してみた.
商品は冷凍で届くが,少しテーブルに出しておけばすぐ食べられるようになる.生クリーム,ずんだ,抹茶,ほうじ茶の四種類があり,吉川さんはとりわけ「ほうじ茶」がお気に入りだという.
私の食べた感想は,あ,洋風大福ですね,そうですか,はいはい,だった.
よく考えると,甘いもの好きではない人が《これほど夢中になったお菓子は初めてです》と書いても実は説得力がないのであって,甘いものを好きな人が《これほど夢中になったお菓子は初めてです》と書いたならそれこそ夢中になるくらいのお菓子である可能性が高いわけで,何書いてんのか自分でもよくわからないけど失敗したと思った.
(二)
藤沢市辻堂に MrMax 湘南藤沢ショッピングモールという大規模商業施設がある.
その中にある食品スーパーで買い物をしてレジを通過したら,買ったあれこれを袋に詰めるテーブル上の小箱に「うどん割引券 350円以上のうどんは50円引き」と書かれた小さな紙が入っていた.
ショッピングモールの二階にレストランスペースがあり,そこに「はなまる」が店を出しているのだ.
ちょうど昼飯時だったので,そのクーポン券を持って「はなまる」に行った.
かけうどんの「中」を注文してトレイに載せ,それから蓮根天,海老天,イカゲソ天を皿にとった.割引券があるから天ぷらを一つ余計におごったのである.かけうどん二百三十円に天ぷらが三つ合わせて四百円で,以上の合計六百三十円から五十円を引いて五百八十円なり.
レジに進んで六百円とクーポン券を出したら,店員のおにいちゃんが
「六百三十円になります」と言った.
驚いた私が
「割引券があるんだけど」
と言うと,おにいちゃんは
「あー,これはうどんの割引券なんで,天ぷらは対象じゃないです」
と答えた.
話をよく聞くと,「かけうどん」にいくらたくさん天ぷらを付けても,それはあくまでも 「かけうどん」であって天ぷらうどんになるわけではない.
だから天ぷらを皿に山盛りにして合計千円になろうが二千円になろうが,「中かけうどん」は二百三十円であるからして,クーポン券に「うどん割引券 350円以上のうどんは50円引き」と書かれている限り,割引き対象外なのだという.
なるほど,なんて論理的なんだ,偉いぞ はなまるうどん.
今までただのうどん屋だとばかり思っていたが,ただのうどん屋ではなかった.
そう感心はしたが,またもや失敗したと思った.
(三)
その翌週,また昼飯時に MrMax 湘南藤沢ショッピングモールへ食い物の買い出しに行った.
野菜とかドレッシングなんかを買ったあと,今度は失敗したくないなあと思いながら二階の飲食店スペースをうろついたら,紅太陽という店のガラス窓に「食べ放題バイキング500円」と書いた紙が貼られていた.
おおワンコインで食べ放題か,と喜んで店内に入ったら広い店内には他に客が一人もいなかった.
ちょっと「?」と思ったが,席についてランチメニューの印刷物をよく読むと,「食べ放題バイキング500円」とは,炒飯と春雨サラダと中華スープの三種類だけが五百円で食べ放題なのであった.
バイキングコーナーのテーブルには,炒飯を入れたジャーとスープのジャー,それと春雨サラダのボウルが寂しく置かれているだけだった.
はなまるうどんの時とは異なり,店員に説明を受ける必要は全くない一目瞭然であった.すなわちバイキングという概念の本質的理解よりも,何より眼前の炒飯を入れた業務用九リットル (五升) ジャーの実存を見よ.固定観念「バイキング=色んな料理が食べられる」は,完膚無きまでに粉砕されたのであった.
中華スープ飲み放題,春雨サラダ食べ放題という斬新な献立に哲学的なめまいを覚えながら,それでは仕方ないのでおかずにエビチリを注文して,合計八百円である.
さて鳥めしでもピラフでも,総じて炊き込みご飯の類は,炊いたら熱いうちに食べるか,または冷まして保存するのが食品衛生の基礎知識であって,ジャーなどに入れて数時間保温すると急激に菌数が増加する.味やにおいが劣化するだけならまだしも,耐熱性菌がいた場合は食中毒の可能性も生じるので,作り立てかどうか判断してから食べなければならない.
帰宅して食べログでこの店の口コミを読んでみたら,「あいちろ」さんという人が一ヶ月ほど前 (2015/1/20) に書き込んだ「企画倒れ!」と題したレビューに,
《でも、チャーハンはジャーに入ってて蒸れて嫌なにおいがする、そのチャーハンは殆ど具なし。スープの具は高菜・・・・。中華サラダはなんと、青いバケツに入って置いてある。水一杯出ない、ドリンクバーは200円、わざわざ「お茶は有料」と汚い字で書いてある》
とあった.
上記引用中の下線部以外にも,炒飯が具なしであるなど他の諸点もよく観察していて実に正確なレビューだ.食べログはステマの総本山のように言われるが,そうでもないらしい.これを予め見ていれば,こんな店には入らなかったのに,またまた失敗したと思った.
(追記;実は私が食べている最中に,男性二人連れが店に入ってきたのであるが,彼ら二人はランチのメニューと「バイキング」テーブルを見て,席を立って出て行った.世の中には迅速正確な判断力を有する人がいるものである)
(四)
昨日の記事に《例えば昼飯時間帯でもほとんど客がいない十代目哲麺という不思議なラーメン屋が藤沢駅近くのバス通りにあるのだけれどその道のすぐ向かい側にあって客がいつもたくさん入っている家系ラーメン松壱家に比較すると十代目哲麺に客が入らない原因はスープなのか麺なのか一度食べてみる必要があるなあ》と書いた.
昨日,この十代目哲麺で葱チャーシュー醤油豚骨ラーメンを食った.
私は未だかつてこれほど薄く紙のように切られた脂身だらけのチャーシューを見たことがない.これほど存在感のない細麺を食べたことがない.
客が少ない店というのは,要するにそういう店なのであって,またまたまた失敗したと思った.(ただし,光学顕微鏡用観察試料薄片のごとくチャーシューを薄く切り出す技術は称賛に値するであろう)
(五)
藤沢駅の北口と南口をつなぐ地下通路に居酒屋が開店した.昼飲み居酒屋である.今日入ってみようと思うのだが,このところ失敗続き故,成功か失敗か,かなり不安.
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