美少年 (二)
余談だが,私は若い頃,貧乏だったこともあってサントリーの安ウイスキー (サントリーレッドなど) をよく飲んでいた.しかし昭和の中頃にサントリーの元社員の告発によって,サントリーのウイスキーが実はウイスキーとは名ばかりの模造ウイスキーであることが世間に広く知られたことから,そんなものを酒だと思っていた自分を深く反省し,以後暫くのあいだ,日本酒を飲むようになった.
清酒は戦中から戦後にかけての長い時期に,醸造用アルコールで希釈したものに添加物を加えた模造酒が大手を振るって流通し,あまりにもまずいので消費者にそっぽを向かれ,消費量が長期低落していた.
これを憂慮した一部の地方造り酒屋が伝統的な清酒の製造に立ち戻ったことから,ようやく低落に歯止めがかかった.
これが昭和の中頃で,吟醸酒ブームの前のことである.
ウイスキーから鞍替えしたその頃の私がよく飲んでいたのは,模造清酒ではない「澤乃井」(東京)「住吉」(山形)と「美少年」(熊本) だった.
九州はいわずと知れた焼酎の土地であって,私が学生の頃から鹿児島の「白波」や大分の「二階堂」などは東京の酒屋の棚にも置かれていたが,九州の清酒で東京近辺でも知られていたのは美少年だけであった.
さて日本酒の名には「菊正宗」とか「白鶴」とか由緒ありそうなのが多く,調べるとなかなかおもしろいのであるが,○○盛や○○誉のごとき安易な名称が多い地方の酒の中で「美少年」の名は一風かわっている.
長いこと私は,「美少年」は熊本の産であることから,民謡『田原坂』から引用したものだと思っていた.つまり
雨は降る降る 人馬は濡れる 越すに越されぬ田原坂
右手に血刀左手に手綱 馬上豊かな美少年
……
と歌詞にある「美少年」に由来するのだと思っていたのだが,全然違っていた.
実は杜甫が同時代の著名な酒豪八人 (賀知章,汝陽郡王李,李適之,崔宗之,蘇晋,李白,張旭,焦遂) を選んで作った『飲中八仙歌』の中で,杜甫は崔宗之を美少年と謡い,これが清酒「美少年」の由来だという.
閑話休題
日本政府は,国内産の政府米や,ミニマム・アクセスに従って商社が輸入した外国産 (ベトナム,中国など) の政府米にアフラトキシンや残留農薬が検出されたりした場合,これを事故米穀と呼んでいる.
事故米穀は食用に適さないので非食用米として用途を食用以外に限定して販売される.されるはずであった.
(続く)
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