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2015年1月16日 (金)

美少年 (五)

 こうして九州の名門酒造が一つ破産して,事故米不正転売事件の舞台は司法の場に移った.
 以上は当時の新聞と Wikipedia など,現在のネット上で参照できる資料を要約したものであるが,わからないことがいくつかある.

 緒方社長が不正を告白したとき,顧客である日本名門酒会の問い合わせに対して,緒方は《経営状況が厳しく不良債権の穴埋めのためにやってしまった》と謝罪したという.
 不良債権とは何か.
 当時の朝日新聞の報道によると,美少年酒造は自社の酒の販売促進のために飲食店に資金を貸し,それが回収できなかったときの不良債権処理に使用したとのことである.
 なぜ貸し倒れを簿外の裏金で処理しなければならなかったのかは不明だが,そもそも資金の貸し付け自体が簿外だったために処理も裏金で行う必要があったということか.
 しかし,顧客の維持拡販には,いかようにも他に合法なやり方があったはずだ.
 しかも二十年以上 (新聞によっては三十年近くと書いたものもある) の長きにわたって毎年毎年,百数十万円の貸し倒れ処理費用が定常的に必要だったというのは不自然ではないか.納得しがたい.

 原料と製品の品質管理はどうなっていたのか.経理上の辻褄合わせは社長がやったとしても,こればかりは社員や杜氏がやらねばならない.二十年以上のあいだ社内の誰も,国産であるはずの原料酒米に,加熱時に特有の香りを有するインディカ種の米が混入していることに気づかなかったと考えるのは,これも不自然である.
 不正に関与した人間がいたとすれば,その者は今も,何事もなかったのごとく株式会社美少年に雇用されているのか.もしそうなら,株式会社美少年において厳格な品質管理は今後も保証されないことになる.

 「美少年 (一)」の冒頭にあげた読売の記事に戻るが,なぜ関係者は,消費者を欺き続けてきた美少年ブランドを残そうとしているのか.これが最大の謎である.また食品の安全安心を読者に啓蒙すべき新聞が,なぜ「美少年」の製造再開を美談であるかのように報道するのか.
 現在の清酒「美少年」の製造を再開した株式会社美少年のウェブサイトに書かれた会社沿革をみると,事件を稚拙に隠蔽しているが,こんな小細工をしたところで,ネット上に事故米不正転売事件の資料がある限り,旧「美少年」の地に落ちた品質イメージは新「美少年」について回る.ネットの影響力を軽くみているとすれば,株式会社美少年の先行きは明るくないであろう.
(続く)

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