新刊二冊
昨年受けた心臓バイパス手術の半年経過フォローに行ってきた.
病院へはJRの駅を出てバスに乗り換えて行くのであるが,バス停のある駅前ロータリーに書店があったので,待ち時間つぶしのために本を買っていくことにした.書籍はほとんど通販で買うので,本屋に入るのは久しぶりだ.
入口を入るとすぐに平台があり,『捏造の科学者 STAP細胞事件』(文藝春秋)と『ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~』(メディアワークス文庫) が積み上げてあった.
我が国でトップクラスの生命科学者を自殺に追い込み,日本の科学の信用を失わせた極悪捏造女,小保方晴子は,理研から何のお咎めもなくめでたく依願退職となり,それどころか野依理事長からは「新しい人生を」と祝福までされて理研を去った.週刊誌によれば今は髪型も短く変えて楽しく過ごしているらしい.
小保方の虚言大芝居が華々しく幕をあげたとき,テレビの報道番組は論外だが,新聞各紙までもがリケジョの華だとか割烹着の才女だとか浮かれて大騒ぎになった.中でも朝日と読売のはしゃぎようはひどく,ネット掲示板にたむろして小保方を「おぼちゃん」と呼んでアイドル視する子供らと,まるで同じレベルであった.
しかしほどなくして匿名のネットワーカーが小保方の嘘を暴き始めた.朝日と読売の科学担当記者は,匿名ネットワーカーによる小保方論文検証の意味するところが理解できなかったのであろう,相変わらず浮ついた報道を続けていたが,毎日新聞はすぐに冷静になった.
それ以降の新聞報道は,毎日新聞が朝日と読売を圧倒してしまった.その毎日新聞の報道を担っていたのが『捏造の科学者 STAP細胞事件』の著者,環境科学部記者の須田桃子氏である.記者の能力差が記事の質に如実に反映されるものであることを,毎日新聞の小保方スキャンダル報道は示したのであった.
毎日新聞の科学記事といえば,誰でも十五年前の旧石器捏造事件を思い出すであろう.毎日新聞の記者は,当時の水準をいまだ保っているのだろう.部数だけは多い読売と朝日に比較して,新聞社としてはマイナーであるが,毎日新聞は立派である.
『ビブリア古書堂の事件手帖』は刊行のペースがゆっくりしているので,新刊がでるとその前のやつをざっと読み直す必要があるなあ.著者のあとがきによると,あと一冊か二冊で『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズは終わりになるとのこと.この人気ミステリーは最初の『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』が 2011年3月の出版だから,もう四年になる.今年で完結するのかも.
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