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2015年1月22日 (木)

サン・クロレラ販売に鉄槌

 有料コンテンツを閲覧するにせよ無料の部分だけ読むにせよ,今は新聞はネットで読む人がかなり多いのではないか.
 しかし,全盛期に比べれば落ち込んだとはいえ,紙媒体で発行される新聞には新聞社のニュースサイトにはない読みやすさがあって,頑張って欲しいものだと思う.
 頑張って欲しいが,記事の質,すなわちそれは新聞記者の質でもあるのだが,それは年々落ちてきているように思う.

 サプリメントに関心のない人でも,健康食品の「サン・クロレラ」の名を知っている人は多い.なぜかというと「日本クロレラ療法研究会」という名称の会社が,昔から (たぶん昭和四十年代から) 新聞の折り込みチラシの形態で,サン・クロレラの薬効をうたう宣伝広告文書を各戸配付してきたからである.

 これは形式上では,健康食品販売会社の「サン・クロレラ販売」と「日本クロレラ療法研究会」とが別会社 (もちろん裏では一心同体の一つの会社) であるために,食品に薬効があると宣伝することを禁ずる食品衛生法では,これまで取り締まれなかったのである.

 法律の隙間を狙ったこの種の宣伝方法を最初に考案したのが「サン・クロレラ販売」であり,これを参考にしていわゆるバイブル商法が健康食品業界に流行した.
 例えば,○○クリニック院長で医学博士の××というどこの馬の骨だかわからぬ野郎が『△△でガンがなおった!』などいう嘘八百を並べた本を書く.△△はクロレラとか怪しげなキノコとかの,健康食品の名である.
 そして△△の販売員が『△△でガンがなおった!』を無料で頒布する.
 ○○クリニック院長××およびその書籍の出版社と,△△の販売会社は形式上は無関係であるところがミソである.こうするとどんなでたらめの広告でも食品衛生法の規制を免れることができるのである.(健康食品問題に詳しいジャーナリストが取材に行くと,○○クリニック院長××は「私は名前を貸しただけで無関係です」とか「私の名前を勝手に使われているようだ」などと逃げるのが,この業界と結託した悪徳医師の常套手段だ)

 このような宣伝方法を考えつき,毒にも薬にもならぬクロレラをお年寄りに売りつけて儲けてきた「サン・クロレラ販売」に,いつか天罰よ下れと私は長年思ってきた.

 その天罰が昨日下った.
 一月二十一日,NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」が「サン・クロレラ販売」に対して新聞折り込み広告の配布差し止めを求めた訴訟の判決が京都地裁であった.まことに春からめでたいことであるが,これを伝えた新聞報道に問題がある.

 読売朝日毎日の三紙で異なっている部分を比較してみよう.
 まず朝日新聞.(1/22)
原告によると、景品表示法に基づき、広告の差し止めが裁判で認められるのは初めてという。

 続いて読売.(1/21)
同社の代理人弁護士は判決に対し「事業者の営利活動に強い萎縮効果を生む」と話している。消費者庁によると、景品表示法に基づき差し止めを命じる判決は全国でも珍しいという。

 読売と朝日は,この判決に簡単にしか触れていないが,詳しく正しく書いているのは毎日新聞(1/21) である.
NPOによると、症状改善を宣伝する健康食品の広告差し止めを巡る司法判断は全国初という。
NPO側は、商品が実際より著しく優良との印象を与える景品表示法の優良誤認表示に当たると主張した。同社側は「研究会と会社は別」「商品名は表示しておらず、単にクロレラ等の効用を紹介しただけ」と反論していた。
 判決は、研究会が同社の一部門であると認定。広告が優良誤認表示に当たり、「一般に許容される誇張の限度を大きく踏み越える」と指摘した。

 この判決のキモは,《判決は、研究会が同社の一部門であると認定》したことにある.これにより《広告が優良誤認表示に当た》るとして広告を禁じることが可能となったのである.
 それを書いていない読売と朝日の記事は大間違いである.景品表示法に基づいて広告宣伝を禁じるのはよくあることであって,《景品表示法に基づき、広告の差し止めが裁判で認められるのは初めて》も《景品表示法に基づき差し止めを命じる判決は全国でも珍しい》も大嘘.そうではなくて今回の判決は,毎日新聞が書いているように《症状改善を宣伝する健康食品の広告差し止めを巡る司法判断は全国初》であり,判決内容としては,商品の販売会社と広告の発行者が異なっていても実質的に同じであれば景品表示法が適用できることを初めて示したところが画期的なのである.
 つまり食品衛生法は製造者が誇大な広告宣伝をすることを禁じているが,クロレラ(サン・クロレラ)の誇大宣伝をしているのは「日本クロレラ療法研究会」であるために,「サン・クロレラ販売」に行政指導することができなかった.「うちは宣伝していません,宣伝しているのは日本クロレラ療法研究会です」と言われればどうすることもできなかった.「日本クロレラ療法研究会」の方は,「私どもは商品を販売しているわけではないので,あの新聞折り込みチラシは広告宣伝には相当しません」と言うのだ.広告宣伝でないものには景品表示法が適用できない.

 しかし今回の京都地裁判決は,「日本クロレラ療法研究会」がクロレラ(サン・クロレラ)の薬効を書いた新聞折り込みチラシを発行することは,両社の関係を勘案すれば実質的に「サン・クロレラ販売」の誇大宣伝行為であるとして,景品表示法でこれを禁止できるとした.
 このレトリックは使い方を間違えると恣意的な判決を引き出してしまうことになるが,こと健康食品業界のバイブル商法に適用されるものであるなら,大いに歓迎されるべきであろう.

 このブログ記事の冒頭に戻ると,読売と朝日の記者は,昔からよく知られている健康食品業界のバイブル商法について全く無知なのだと思われる.そのため,判決内容はもちろん,消費者庁や原告NPO法人の言っていることも理解できず,誤報を書いてしまったのだ.

 読売の程度の低さは昔からであるが,朝日も劣化が激しい.従軍慰安婦問題だけではないのである.

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コメント

中身は法律家やロースクール生顔負けの分析力ですが、
なんとなく朝日新聞や読売新聞を全部善良な人々だという
前提に立っていると思います。
読売新聞の拡販員が問題を起こしても「あれは別会社だから」
販売所に聞いても「あれはうちがやっているところじゃない」
現実に拡販員は契約関係をもっている。なかったら
報酬が受け取れませんから。
クロレラやアスは広告役が別でそれが勝手に
研究者や医者の肩書きをもっている人に都合よく広告や本を
書かせているだけとも言えます。
ところが、新聞社は直に近いし昔は亡きよみうりランドや巨人戦の
優待券をもってきたんですから。
政治でも気にくわない政治家の時は、無茶苦茶な学者でも
「叩け」と指令したら叩く人を揃えて叩かせる。
放送法と違って責任をとらなくてよいと勘違いしてる気がします。
そういう超大手新聞社は全体としてクロレラ以上のことを
やらざるを得ないのでしょう。
昨日の東京新聞だって
東京新聞の1面で櫻井よしこさんの「正義の」嘘という本が
広告されていました。「平和、弱者、隣国、原発・・・
戦後正義の暴走が一目瞭然!」というコピーで。
あと、11面で鈴木穣という人が「先送りされた年金改革」という
タイトルで社会保障切り下げを主張されてました
基本的にそういう人たちで例外的に受け狙いで違うのが出ると
考えた方が良いと思うことがあるのです。

投稿: tak | 2015年4月29日 (水) 10時57分

tak さん,コメントありがとうございました.
事情があってコメントの公開が四ヶ月も遅れました.お詫び致します.
コメントへのお答えは,8/21の記事にしてアップ致しました.

投稿: 江分利万作 | 2015年8月21日 (金) 00時05分

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