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2015年1月

2015年1月31日 (土)

口先男二人

 週刊文春(2/5号) 連載コラム『池上彰の そこからですか!?』で,池上彰が「イスラム国」の人質になっている後藤健二氏について,わけのわからぬことを書いている.
 以下《》に引用する.

しかも彼は、シリア入り直前、「これから起きる結果はすべて自己責任です」と言い残しています。この潔さ。

 現実はどうかというと,後藤健二氏は自分の責任を果たしていない.仮にヨルダン政府がテロリストのサジダを釈放したとしたら,後藤氏は自分の軽率な行動が引き起こした事態の責任をどうとるのか.
 後藤氏がネット上で発表しているメッセージは,言うまでもなく卑劣極まりない「イスラム国」が強制しているものであるが,それに唯々諾々と従って命乞いをしている後藤氏の行動は,格好いい「これから起きる結果はすべて自己責任です」と遠く隔たっている.

 そして,自己責任を果たそうとしない後藤氏の行動には触れずに,後藤氏の口先だけの台詞を《この潔さ》と持ち上げてみせる池上彰.
 いったい後藤氏のどこが潔いというのか.徒手空拳,たった数日の日数で湯川氏が救出できると思い込んだ挙句,この体たらくの後藤氏は,ただの軽率な無責任野郎にすぎないではないか.
 誰だって命が惜しいから,「イスラム国」の言いなりになるのは仕方ないことだ.それは誰にも批判できないことだが,それなら「これから起きる結果はすべて自己責任です」などと大見得を切るなということだ.

 私は昨年,やはり週刊文春の『池上彰の そこからですか!?』で池上彰が書いていることについて次のように批判した
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 東京都内の図書館等で『アンネの日記』多数が破損された事件の容疑者は逮捕されたが,動機がまだ不明である.この事件に関心のある人は多いだろう.
 週刊文春 (3/27日号) の連載記事で,池上彰がこの事件の解説を書いている.
 池上は『アンネの日記』の紹介をしたあと,同号55ページの中ほどから唐突に,イスラエル建国を賛美した.
 アンネ・フランクとイスラエル建国は無関係である.ナチを理由にしてイスラエル建国を正当化するのは卑劣な論理のすり替えだ.
 そう考えるのが良識というものではないか.
 私はこの解説記事に驚き,池上彰の正体見たりと思った.
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 今回の後藤氏人質事件でもやはり,池上彰の正体見たりデマゴーグ,である.
 そういえば,池上彰はペテン師小保方晴子が登場したとき,リケジョがどうの割烹着がこうのと激賞していた.世間をミスリードしたことの後始末はどうしたのか.

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2015年1月30日 (金)

御長寿連作

 病院へ行くついでに書店に立ち寄った話の続き.

『ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~』(メディアワークス文庫) は連作短編だけれど,夢枕獏『陰陽師』はなんと言えばいいのか.

『ビブリア古書堂の事件手帖 (6)』の横には『陰陽師 酔月ノ巻』が積まれていた.
『陰陽師』シリーズの最初は『玄象といふ琵琶鬼のために盗らるること』で,これが1986年9月にオール讀物に掲載されて以後,雑誌に発表されたものを単行本と文庫にまとめて刊行されてきた.もう三十年近く書き続けられていて,内容はワンパターンではあるがマンネリではないので,出ればつい買ってしまう.

『陰陽師』に使われる擬態語は特徴的で,それだけ抜き出してもファンには『陰陽師』の一節だとすぐわかる.
 例えば「ほろほろと酒を飲んでいる」ならば,これは晴明と博雅の二人が土御門の屋敷で,庭を眺めながら酒を飲んでいる場面に使われる描写だと知っているわけだ.
 擬音,擬態に「ほ」が使われるのも『陰陽師』のお約束である.
 花が散るのは「ほろり」「ほとり」であるし,雪が降るのは「ほそほそ」だ.

 とぎれとぎれに読んでも,あるいは適当に開いた箇所をつまみ読みしても,一向に構わないのが『陰陽師』の良いところで,これは病院での時間つぶしに最適だと思う.

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2015年1月29日 (木)

新刊二冊

 昨年受けた心臓バイパス手術の半年経過フォローに行ってきた.
 病院へはJRの駅を出てバスに乗り換えて行くのであるが,バス停のある駅前ロータリーに書店があったので,待ち時間つぶしのために本を買っていくことにした.書籍はほとんど通販で買うので,本屋に入るのは久しぶりだ.
 入口を入るとすぐに平台があり,『捏造の科学者 STAP細胞事件』(文藝春秋)と『ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~』(メディアワークス文庫) が積み上げてあった.

 我が国でトップクラスの生命科学者を自殺に追い込み,日本の科学の信用を失わせた極悪捏造女,小保方晴子は,理研から何のお咎めもなくめでたく依願退職となり,それどころか野依理事長からは「新しい人生を」と祝福までされて理研を去った.週刊誌によれば今は髪型も短く変えて楽しく過ごしているらしい.

 小保方の虚言大芝居が華々しく幕をあげたとき,テレビの報道番組は論外だが,新聞各紙までもがリケジョの華だとか割烹着の才女だとか浮かれて大騒ぎになった.中でも朝日と読売のはしゃぎようはひどく,ネット掲示板にたむろして小保方を「おぼちゃん」と呼んでアイドル視する子供らと,まるで同じレベルであった.

 しかしほどなくして匿名のネットワーカーが小保方の嘘を暴き始めた.朝日と読売の科学担当記者は,匿名ネットワーカーによる小保方論文検証の意味するところが理解できなかったのであろう,相変わらず浮ついた報道を続けていたが,毎日新聞はすぐに冷静になった.
 それ以降の新聞報道は,毎日新聞が朝日と読売を圧倒してしまった.その毎日新聞の報道を担っていたのが『捏造の科学者 STAP細胞事件』の著者,環境科学部記者の須田桃子氏である.記者の能力差が記事の質に如実に反映されるものであることを,毎日新聞の小保方スキャンダル報道は示したのであった.
 毎日新聞の科学記事といえば,誰でも十五年前の旧石器捏造事件を思い出すであろう.毎日新聞の記者は,当時の水準をいまだ保っているのだろう.部数だけは多い読売と朝日に比較して,新聞社としてはマイナーであるが,毎日新聞は立派である.

 『ビブリア古書堂の事件手帖』は刊行のペースがゆっくりしているので,新刊がでるとその前のやつをざっと読み直す必要があるなあ.著者のあとがきによると,あと一冊か二冊で『ビブリア古書堂の事件手帖』シリーズは終わりになるとのこと.この人気ミステリーは最初の『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』が 2011年3月の出版だから,もう四年になる.今年で完結するのかも.

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2015年1月28日 (水)

足が革靴を忘れた

 昨年の秋,仕事を辞めて無職になった.
 年末には引越をして,留守宅にしていた自宅に戻ったのだが,それを機会にいらない衣類,つまり仕事着のスーツやネクタイをほとんど捨てた.
 靴下も,未着用のものもどんどん捨てた.ビジネスシューズも捨てた.そうして,スニーカーソックスを買った.以来,どこに行くのもスニーカーである.

 闘病していた大学時代の同級生が日曜日に亡くなった.
 葬儀の日は都合がつかなかったので通夜に出席することにして,例の腰痛であまり歩けないこともあり,東京駅からタクシーに乗って,通夜が営まれる小石川の寺まで行った.
 通夜もスニーカーというわけにはいかず,普通の黒いソックスと,冠婚葬祭用に捨てずに残してあるストレートチップの黒革靴を履いて出かけたのであるが,あまりにも歩きにくいので驚いた.革靴を履かなくなってまだわずかしか経たないのに,足がスニーカーにすっかり適応してしまったのである.社会から引退した無職の身であることを改めて感じた.

 これから少しずつ,同級生が逝くのだろう.次は私かも知れない.
 みんな年をとった.

 先日の沢田研二のコンサートでのこと.彼のトークに茶々を入れた客に,黙っとれ,とジュリーが怒ったという.老いると怒りの激発を止められない.たぶん私が彼であったとしても同じようにキレただろう.
 みんな年をとったのである.
 桑田佳祐もやがてそうなるのか,見てみたい気がするが,さすがにそこまで私は生きていないだろう.残念.

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2015年1月26日 (月)

富裕層の資産課税に読売は反対する

 私は人生を研究者,技術者として過ごしてきて,政治や経済の学問的基礎が皆無である.そのような分野について土地勘がないというか,勉強しようにもどうしていいのかわからない.この年になっては勉強してももう間に合わないし.
 だから以下のことはほんとに素人のたわごとかも知れないと自分でも思う.

 読売新聞の今日二十六日の社説は,フランスの経済学者であるトマ・ピケティ氏の著書『21世紀の資本』を取り上げて批判を加えている.
 ピケティはこの著書 (言うまでもなく私は読んでいない) で,主に欧米におけるを過去二百年以上の税務統計を分析した結果,株式や不動産などの資産から得られる利益の伸びが賃金上昇率を上回っていたことを示し,このようなデータを根拠にして,将来も資産家への富の集中が続いて貧富の差が拡大していくと結論している.

 読売の社説は,現在の経済学では経済発展とともに格差は解消するという説が主流であるとし,ピケティ説の意義は評価しつつも,ピケティが格差解消の処方箋として富裕層に対する世界的な資産課税強化を提唱していることに反対する.世界各国が一斉に増税で歩調を合わせることはほとんど不可能だからであるというのが理由である.

 さらに《富裕層に重税を課すことは、働く意欲をそぎ、成長を鈍化させる要因になりかねない。ピケティ説に乗じ、過剰な所得再分配を求める声が、日本でも強まってきたのは気がかりだ》との見解を表明している.

 ここで私たち一般読者の頭には,「ピケティは資産課税強化を提唱していると書いておきながら,どうして唐突に「増税」と言い換えてしまうわけ?」という疑問が湧き上がる.
 もし読売の論説委員氏の知能が低いのでなければ,これは大変わかりやすい論理のすり替えである.増税にも色々あって,資産課税強化は増税の一つに過ぎないからである.
 そして最後に《成長の恩恵を受ける富裕層と、取り残される低・中間所得層という単純な図式を掲げ、バラマキ策を唱えるのは無責任だ。教育や職業訓練の充実など、努力すれば所得を向上できる機会を広げる政策にこそ、力を注ぐべきである》と締めくくっている.

 ここで私たち一般読者の頭には,また疑問が湧き上がる.
「その《教育や職業訓練の充実など、努力すれば所得を向上できる機会を広げる政策》が一体どんなものか詳しく教えてくれ.職業訓練を受けるなど努力しても所得を向上させることができないからこそ,格差が拡大しているんじゃないのか?」
「所得向上どころかそれ以前に,大学や専門学校を出て,充実した教育や職業訓練を受けてもなお安定した職に就くことができない若者たちが山ほどいるとマスコミは報じている.必要なのは,『努力すれば所得が向上する』などいう昭和の高度経済成長期のお説教ではなく,教育や職業訓練を受けた人たちがせめて非正規雇用ではない職を得ることのできるような政策じゃないのか?」

 以上,格差社会の頂点に立つ富裕層に属するだろう読売新聞論説委員氏の御説に対する素人の疑問である.

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2015年1月25日 (日)

謎は深まるばかり

 現在進行形の事件について,様々な情報がネット上を拡散していく.私たち一般人が電話回線と音声モデムを用いて,おずおずと通信を始めた時代とは様変わりである.

 現在進行形の事件といえばこれ↓.

(1) 民間軍事会社 (傭兵会社) ピーエムシー株式会社代表の湯川遥菜氏
(2) インデペンデント・プレス社代表のジャーナリストである後藤健二氏
(3) 日本政府が身代金を払わなければ湯川,後藤両氏を殺害するとした「イスラム国」からのメッセージに関して記者会見を行い,唐突にその場で原発反対論を述べた後藤氏の母親なる人物.(この人は後藤氏に妻子があることを知らなかったと言明しているが,一体どういう親子関係であったのか)
(4) イスラム法学者の中田考氏などイスラム圏に関係ある謎の人々

 これに絡んで,マスコミ報道には軍事評論家の田母神俊雄氏やピーエムシー株式会社顧問である元茨城県議の木本信男氏や,果てはアグネス・チャンまでが舞台に登場して,もはやわけがわからない.この種類の問題では,Wikipedia の記述に憶測を書き込む人と,憶測を排除しようとする人とがいるので,「ノート」まで開いてちゃんと読まないといけない.

 後藤氏が拘束されてすぐには,湯川氏と後藤氏はただの知り合いであったかのように報道されていたが,「ただの知人のために命を懸けて救出に行くかフツー?」というのがこの事件についての一般国民の第一印象だったと思われる.
 ところが実は,最初に湯川氏が拘束される以前から,もう少し深く行動を共にする関係があったことを新聞が示唆し始めている.完全な後出し情報だが,いままで報道を止めていたのはなぜか.
 湯川氏と後藤氏の本当の仕事はなんだったのか.(日本政府の末端エージェントだとする陰謀論を展開しているブログもある)
 ピーエムシー株式会社は軍需産業の一端であろうが,そういう軍事会社と関係のあるジャーナリストの母親が,マスコミを使って原発反対を世間に訴えるというのも,私たちの感覚からすると違和感ありまくりだ.
 ひょっとしたらピーエムシー株式会社は,ただの傭兵会社ではなかったのかも知れないという気がしないでもないと言うにやぶさかでないが,これはただの私の憶測だ.根拠なし.日本政府と後藤氏の関係について陰謀論を開陳している某有名ブロガーも,憶測は憶測であるとことわって欲しいものだ.

 事件は謎だらけであるが,イスラム圏で暗躍していた湯川,後藤両氏の人物像が,私たち一般人の目にもわかるほどに明らかになるには,もう少し時間がかかりそうである.いや,これは歴史的なスパンで遠い将来に語られるかも知れぬ事件なのかも.

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2015年1月24日 (土)

引きこもり正月

 整形外科で腰痛の治療 (脊椎の牽引と低周波マッサージ;整形外科ではリハビリと呼んでいる) を週に三日通って続けているのだけれど,なかなかよくならない.リハビリしたあとすぐはいいのだが,そのうちまた痛みがぶりかえす.
 痛みというのは,歩くと腰が痛くなるので長い距離を歩けないという症状だ.家の中で生活しているぶんには無問題である.
 服薬は,ノイロトロピンとメチコバールを一錠ずつ,一日に三回のむ.
 このノイロトロピンという鎮痛薬は,効く人には効くが,効かない人には全く効かないという変な薬で,長期連用しないといけない.以前にやはり腰痛がでたときには効いたので私は効くタイプの人間だと思ったのだが,今回は効果がまだみられない.
 このまま腰痛がひどくなって最悪の場合は手術か,などと考えると気分が暗くなる.

 ラジオを聴いていると,再春館製薬の痛散湯のCMを耳にする.最近は気弱になって,試供品をもらって試してみるかどうか,思いあぐねている.

 そんな状態なので今年は初詣に行かなかった.
 私の初詣は,もう若いときから,藤沢駅に近い遊行寺と鎌倉の長谷寺に決めている.
 時宗総本山遊行寺つまり藤澤山無量光院清浄光寺は,箱根駅伝の第三区 (八区)で全国に知られる遊行寺坂の下のところに山門がある.
 有名な割には,正月でも初詣の善男善女でごったがえすということもなく,鄙びているといっていいくらいの落ち着いた雰囲気が漂うよいお寺である.正月二日と三日は,箱根駅伝のランナーたちを応援する駅伝ファンが遊行寺坂沿道に鈴なりになるのであるが,その人々がついでにお参りするのが毎年の光景である.
 ただ,遊行寺に行くには少し歩かねばならなくて,今の体調ではちょっと難しい.

 長谷寺も遊行寺と同じ理由で初詣をさぼった.江ノ電の駅からだと休み休み行くことになりそうだから.
 長谷寺の場合は遊行寺とちがって,観音様に手を合わせて一年の無病息災をお願いするというより,寺域にある休憩所で般若湯をいただくのが私の昔からの楽しみなのである.
 この店はお酒を頼むと,一合徳利一本につき,小皿に一つまみの塩昆布がつまみに付く.日本酒の酒肴はこれで充分であるが,昼飯を抜いた午後には,おでんを頼むこともある.
 ちびりちびりと塩昆布だけで三合ほど飲んだあと,店を出てお御籤を引くのが私の長い習慣だった.ああ,そう思ったら拝観に (酒を飲みに) 行きたくなった.ばちあたりですか.そうですか.はあ.

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2015年1月22日 (木)

サン・クロレラ販売に鉄槌

 有料コンテンツを閲覧するにせよ無料の部分だけ読むにせよ,今は新聞はネットで読む人がかなり多いのではないか.
 しかし,全盛期に比べれば落ち込んだとはいえ,紙媒体で発行される新聞には新聞社のニュースサイトにはない読みやすさがあって,頑張って欲しいものだと思う.
 頑張って欲しいが,記事の質,すなわちそれは新聞記者の質でもあるのだが,それは年々落ちてきているように思う.

 サプリメントに関心のない人でも,健康食品の「サン・クロレラ」の名を知っている人は多い.なぜかというと「日本クロレラ療法研究会」という名称の会社が,昔から (たぶん昭和四十年代から) 新聞の折り込みチラシの形態で,サン・クロレラの薬効をうたう宣伝広告文書を各戸配付してきたからである.

 これは形式上では,健康食品販売会社の「サン・クロレラ販売」と「日本クロレラ療法研究会」とが別会社 (もちろん裏では一心同体の一つの会社) であるために,食品に薬効があると宣伝することを禁ずる食品衛生法では,これまで取り締まれなかったのである.

 法律の隙間を狙ったこの種の宣伝方法を最初に考案したのが「サン・クロレラ販売」であり,これを参考にしていわゆるバイブル商法が健康食品業界に流行した.
 例えば,○○クリニック院長で医学博士の××というどこの馬の骨だかわからぬ野郎が『△△でガンがなおった!』などいう嘘八百を並べた本を書く.△△はクロレラとか怪しげなキノコとかの,健康食品の名である.
 そして△△の販売員が『△△でガンがなおった!』を無料で頒布する.
 ○○クリニック院長××およびその書籍の出版社と,△△の販売会社は形式上は無関係であるところがミソである.こうするとどんなでたらめの広告でも食品衛生法の規制を免れることができるのである.(健康食品問題に詳しいジャーナリストが取材に行くと,○○クリニック院長××は「私は名前を貸しただけで無関係です」とか「私の名前を勝手に使われているようだ」などと逃げるのが,この業界と結託した悪徳医師の常套手段だ)

 このような宣伝方法を考えつき,毒にも薬にもならぬクロレラをお年寄りに売りつけて儲けてきた「サン・クロレラ販売」に,いつか天罰よ下れと私は長年思ってきた.

 その天罰が昨日下った.
 一月二十一日,NPO法人「京都消費者契約ネットワーク」が「サン・クロレラ販売」に対して新聞折り込み広告の配布差し止めを求めた訴訟の判決が京都地裁であった.まことに春からめでたいことであるが,これを伝えた新聞報道に問題がある.

 読売朝日毎日の三紙で異なっている部分を比較してみよう.
 まず朝日新聞.(1/22)
原告によると、景品表示法に基づき、広告の差し止めが裁判で認められるのは初めてという。

 続いて読売.(1/21)
同社の代理人弁護士は判決に対し「事業者の営利活動に強い萎縮効果を生む」と話している。消費者庁によると、景品表示法に基づき差し止めを命じる判決は全国でも珍しいという。

 読売と朝日は,この判決に簡単にしか触れていないが,詳しく正しく書いているのは毎日新聞(1/21) である.
NPOによると、症状改善を宣伝する健康食品の広告差し止めを巡る司法判断は全国初という。
NPO側は、商品が実際より著しく優良との印象を与える景品表示法の優良誤認表示に当たると主張した。同社側は「研究会と会社は別」「商品名は表示しておらず、単にクロレラ等の効用を紹介しただけ」と反論していた。
 判決は、研究会が同社の一部門であると認定。広告が優良誤認表示に当たり、「一般に許容される誇張の限度を大きく踏み越える」と指摘した。

 この判決のキモは,《判決は、研究会が同社の一部門であると認定》したことにある.これにより《広告が優良誤認表示に当た》るとして広告を禁じることが可能となったのである.
 それを書いていない読売と朝日の記事は大間違いである.景品表示法に基づいて広告宣伝を禁じるのはよくあることであって,《景品表示法に基づき、広告の差し止めが裁判で認められるのは初めて》も《景品表示法に基づき差し止めを命じる判決は全国でも珍しい》も大嘘.そうではなくて今回の判決は,毎日新聞が書いているように《症状改善を宣伝する健康食品の広告差し止めを巡る司法判断は全国初》であり,判決内容としては,商品の販売会社と広告の発行者が異なっていても実質的に同じであれば景品表示法が適用できることを初めて示したところが画期的なのである.
 つまり食品衛生法は製造者が誇大な広告宣伝をすることを禁じているが,クロレラ(サン・クロレラ)の誇大宣伝をしているのは「日本クロレラ療法研究会」であるために,「サン・クロレラ販売」に行政指導することができなかった.「うちは宣伝していません,宣伝しているのは日本クロレラ療法研究会です」と言われればどうすることもできなかった.「日本クロレラ療法研究会」の方は,「私どもは商品を販売しているわけではないので,あの新聞折り込みチラシは広告宣伝には相当しません」と言うのだ.広告宣伝でないものには景品表示法が適用できない.

 しかし今回の京都地裁判決は,「日本クロレラ療法研究会」がクロレラ(サン・クロレラ)の薬効を書いた新聞折り込みチラシを発行することは,両社の関係を勘案すれば実質的に「サン・クロレラ販売」の誇大宣伝行為であるとして,景品表示法でこれを禁止できるとした.
 このレトリックは使い方を間違えると恣意的な判決を引き出してしまうことになるが,こと健康食品業界のバイブル商法に適用されるものであるなら,大いに歓迎されるべきであろう.

 このブログ記事の冒頭に戻ると,読売と朝日の記者は,昔からよく知られている健康食品業界のバイブル商法について全く無知なのだと思われる.そのため,判決内容はもちろん,消費者庁や原告NPO法人の言っていることも理解できず,誤報を書いてしまったのだ.

 読売の程度の低さは昔からであるが,朝日も劣化が激しい.従軍慰安婦問題だけではないのである.

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2015年1月21日 (水)

Wizardry Online Liberal

 ネットブラウズしていたら,あちこちに Wizardry Online Liberal の広告が出ていた.ゲームレビューを調べてみると,PKのない新しいサーバーができているのだそうだ.あまりオンラインゲームに時間を使えないライト層を対象に,難易度低めに設定してあるという.

 ネトゲか.もう随分長く遠ざかっているけれど,久しぶりにちょっとやってみようかな.
 手順はまずIDを取得してパスワードを設定し,それからゲームに登録する.

 ログインすると最初は「ソウル名」を決める.一つのソウル名で三つまで無料でキャラを作れる.一つのIDで二つ無料でソウルを持つことができる.なんだかややこしいルールだ.
 次はキャラメイク.
 とりあえず種族は三キャラとも人間の女にしてみた.職業はメイジ,プリースト,ファイターを一人ずつ.
 初期の能力値はサイコロで決まるボーナスポイントを付加することができる.

 チュートリアルを受けると冒険の支度金2000ゴールドをくれるのだが,これは同じソウルで一回しか受けることができないようで,わずか2000ゴールドでは,キャラ一人分の防具を買うのがやっとだ.最初が貧乏なのはRPGのお約束である.
 で,方針としては,ファイターでゲームを始めて,クエストをこなしてお金を貯め,メイジとプリーストの身支度を整えることにする.

 冒険を始める前に,街のあちこちをまわってみた.常法どおり武器屋,防具屋,宿屋,それからギルドと酒場を探す.酒場で仕事にありつくのが剣と魔法の国の決まり事である.

 で,ギルドの親方に「カリグラーゼ下水道で悪漢のボスを倒すと褒賞がもらえるぞ」というクエストを教えてもらった.
(画像↓)

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 街の出口の城門に行き,ダンジョン案内人に行先を告げるとトランスポートしてくれた.
(画像↓)

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 下水道に潜ると,そこにも案内人が立っているので,ちょっと話を聞く.
(画像↓)

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 下水道入口で NPC からサブクエストを一つ受注し,階段を少し降りると,ゾンビが湧いている.
(画像↓)

 酒場で「下水道に繁殖している甲虫を 15匹倒してこい」とのルーチンな仕事ももらっているのだが,その甲虫の湧き具合がランダムで,全く出てこないときもあるようだ.

20150120c

 ゾンビと甲虫を倒すとゴールド,ヒールポーション,光る石,アイテムを落とすのだが,アイテムはほとんど種類が固定されているみたいである.しかしプリースト用のハンマー一本とメイジ用の杖を一振りゲットした.
 革鎧と革靴は出現するが,メイジ用の防具は落とさないように思われる.ファイター用の武器も全く出ない.
 さて昨日の戦果は,武器防具の他に 5000ゴールド.今日はこのお金でファイターの武器を新調して先に進むことにする.

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2015年1月19日 (月)

美少年 (補遺3)

【補遺3】

 食品に異物や有害物が混入したおそれがある場合,保健所は製造者に製品の回収を指導あるいは命令する.
 賞味期限が長い食品の場合は,出荷量の何割かが回収されるのが普通である.私の経験では,対処が迅速であったおかげで九割以上の回収に成功したことがある.
 しかし比較的速やかに消費されてしまうものは,ほとんど回収されない.

 不正転売事件で三笠フーズと島田化学工業が食品用に販売した事故米穀にはアフラトキシン汚染米があったとされていて,これが様々な食品に混入して日本各地に流通したが,おそらく意図的に販売先の記録を残さなかった島田化学工業は特別に極悪で,回収のしようがなかった.

 混入した有害物が残農の場合は,その事故米はまだ工業用に使用が考えられるが,この地上でフグ毒のテトロドトキシンと並ぶ最凶の自然毒であるアフラトキシンに汚染された米は,全量焼却処分すべきであると私は考える.

 アフラトキシンの毒性については Wikipedia【アフラトキシン】に簡単に書かれている.
 我が国における輸入食品の水際検査においてアフラトキシンが検出される例は米とトウモロコシおよびナッツ類が多いが,厄介なことに,これらは輸入ロットの全体にカビが生えているのでなく,不均一に汚染されていることが多く,そのため少量をサンプリングして検査する方法では検出されないことが多い.従って,水際検査をすり抜けて年間にどれほどのアフラトキシンが消費者の口に入っているかは,推計もできないのが現状である.

 おもしろいことに,アフラトキシン生産菌のアスペルギルス・フラブス (Aspergillus flavus) は日本の自然界にも存在しているのだが,日本のアスペルギルス・フラブスはアフラトキシンを作らない.
 これが,アフラトキシン生産能を失っているためなのか,何かの条件によって作らなくなっている (場合によっては作る) のかは不明であるが,事実として国産の落花生にはアフラトキシンは検出されない.しかし中国産のものには頻繁に検出される.上に書いたように,アフラトキシンは貿易の水際検査をすり抜けることが多いから,中国産のピーナッツは危ない.私は決してピスタチオと中国産のピーナッツは食べない.中国製の落花生油は絶対に料理に使わない.

 昔,昭和六十年のことであるが,ある食品会社Aが中国から落花生油を輸入し,小瓶に包装して販売したことがある.
 その年,某有名企業の研究者B氏が,スーパー等の店頭からナッツ類やスナック菓子類など色々な食品を購入してアフラトキシンを分析したところ,上記の落花生油に基準値の数百倍という高濃度のアフラトキシンが検出された.驚いたB氏は,知人のつてをたどって,A社にそのことを連絡した.

 当時は,穀物やナッツに含まれるアフラトキシンの分析法は確立していたが,油脂中のアフラトキシン分析法は知られていなかった.B氏は油脂中のアフラトキシン分析法を完成していたので,親切なことに,その分析方法も詳しいプロトコルにまとめてA社に教えてあげた.自分で分析して確認し,対処してくださいというわけである.

 B氏の連絡を受けたA社はどうしたか.
 その当時から食品の安全性に強い関心を持っていた灘神戸生協 (現コープこうべ) が,生協で扱う商品の基礎データとするため,店頭で種々の食品を買い上げて安全性試験をしていた.また関西の大学の食品化学研究者で同様の試験研究をしている人もいた.
 そこでA社は,灘神戸生協や大学の調査研究に引っかからぬよう,いったん関西都市部の小売店店頭から問題の落花生油を引き上げた.そして回収した商品を再び関西圏から遠く離れた地方に出荷して販売したのである.
 数年後にその事実を知ったB氏は愕然としたが,もう消費されたあとでは,どうしようもなかった.

 アメリカから輸入されたトウモロコシにも,アフラトキシンに関わる黒い事実がある.いつか稿を改めて書きたい.

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2015年1月18日 (日)

美少年 (補遺2)

【補遺2】

 昨日の【補遺1】で,農水省は事故米の用途は「工業用の糊」であるとだけ説明をしてきたと書いたが,その「工業用の糊」が何であるかは,関連する Wikipedia 項目でも明らかにされていない (執筆者が情報を持っていない).
 実はこの件について,当時の J-CASTニュースに《「工業用糊に限り販売」 農水省の説明は大ウソだった》という記事が報道された (2008/9/11 19:55 掲載).

 この J-CASTニュース記事は,

農薬や毒カビに汚染された「事故米」が食用として出回っている事件で、農林水産省の説明に大きな疑惑が浮上している。農水省は「事故米」を、工業用糊や、木材の合板や集成材の接着剤の原料使用に限り販売を許可していると説明していたが、実は、国内では接着剤などの原料に米を使用することは殆どないことがわかった

と述べ,その理由として

森林総合研究所によれば、合板を作る際や、集成材に使う接着剤の原料に小麦を使う例はあるものの、米を使ったものは見たことがないそうだ。工業用糊や接着剤に使われないとなると、「事故米」を工業用糊などに使用を限定、という農水省の「前提」が全く崩れてしまう

工業用糊メーカーの大手ヤマト、不易糊工業、住友3MにJ-CASTニュースが取材すると、いずれも、澱粉糊のうち「米を原料にしているものはない」という答えが返ってきた。また、「米を原料に糊を作っているメーカーがあるという話は聞いたことがない」のだという。ちなみに澱粉糊はヤマトがタピオカ、不易糊工業はコーンスターチを原料にしている。》

と書いていた.

 森林総研の誰がそう言ったか知らないが,木材工業の実際を知らないとこんなトンチンカンなコメントをして,世論をミスリードしてしまう.
 次に,J-CASTニュースが取材したヤマト,不易糊工業,住友3Mは,合板用接着剤メーカーではない.合板用接着剤を作っている企業とは業界が全然違う.
 また合板用接着剤は前稿に書いたように澱粉糊ではなく,尿素樹脂,尿素メラミン樹脂,フェノール樹脂だ.つまり J-CASTニュースは全く見当違いのところに取材に行ったのである.

 Wikipedia の執筆者も,きちんと調査をして書くべきであった.
 合板を作るときに事故米が使われていることは,国会でも質疑応答があったから,ちょっとウェブを調べればわかることなのである.

 下に引用したのは,不正転売事件が起きた年の秋,国会で民主党の滝実代議士 (現在は引退) が麻生総理に対して行った質問と,それに対する答弁である.

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平成二十年十月八日提出
質問第八八号

食用に適さない汚染米の輸入及び売渡に関する再質問主意書
提出者  滝 実

 食用に適さない汚染米の輸入及び売渡に関する再質問主意書

 食用に適さない汚染米の輸入及び売渡に関する質問主意書に対して、平成二十年十月三日内閣衆質一七〇第八号の答弁書(以下「答弁書」という。)をいただいたが、疑問があるので再度質問する。

一 答弁書の「二について」で「米穀の買付け後に食用に適さないことが判明した場合に、当該契約の解除ができるかどうかは承知していない。」とあるが、買入受託者は政府の委託を受けて買付けを行うのに、当該米穀の売主との間の契約の内容について政府が承知していないことは許されないのではないか。

二 米穀の買付け後に食用に適さないことが判明した場合に、当該米穀に対する関税の適用はどうなるのか。食用以外の用途に使用する選択をして、その通りに使用されていた場合と、食用以外の用途に使用する選択をしたのに食用と偽装して流通させていた場合に分けて示していただきたい。

三 答弁書の「五について」で「工業用のりの原料となる米穀の潜在的な需要量」とあるが、米穀を原料とする工業用のりは扱いが難しく用途は限定されているのに、なぜ多量の米穀について工業用のりとして潜在的に需要があると考えていたのか根拠を示していただきたい。

 右質問する。

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平成二十年十月十七日受領
答弁第八八号

内閣衆質一七〇第八八号
平成二十年十月十七日

内閣総理大臣 麻生太郎
             衆議院議長 河野洋平 殿

 衆議院議員滝実君提出食用に適さない汚染米の輸入及び売渡に関する再質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員滝実君提出食用に適さない汚染米の輸入及び売渡に関する再質問に対する答弁書

一について
 政府が米穀の輸入を目的とする買入れを行う場合には、主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成六年法律第百十三号。以下「食糧法」という。)第三十条第二項の規定に基づき他に委託しているところであり、同項の規定に基づき当該買入れの委託を受けた者(以下「買入受託者」という。)と政府との間で締結する委託契約に基づき、買入受託者が業務を行っている。当該委託契約においては、買入受託者と当該米穀の売主との間の契約の内容に関する条項を設けず、その内容については、買入受託者にゆだねていたところである。

二について
 食糧法第三十条の規定により輸入される米穀に課される関税については、関税暫定措置法(昭和三十五年法律第三十六号)に基づき、無税となっている。

三について
 米粉は、合板の製造に必要な接着剤の増量剤として使用されることがあり、当該増量剤の使用量やその使用量に占める米粉の割合を勘案して、工業用のりの原料となる米穀の潜在的な需要量を推計していたところである。

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 要約すると,滝代議士が
米穀を原料とする工業用のりは扱いが難しく用途は限定されているのに、なぜ多量の米穀について工業用のりとして潜在的に需要があると考えていたのか根拠を示していただきたい》と質問したのは,ヤマト,不易糊工業,住友3Mなどが「事故米を原料に使用したことはない」と農水省の説明に反論したことを踏まえた質問であった.

 これに対する麻生総理の答弁は
米粉は、合板の製造に必要な接着剤の増量剤として使用されることがあり、当該増量剤の使用量やその使用量に占める米粉の割合を勘案して、工業用のりの原料となる米穀の潜在的な需要量を推計》したと述べ,農水省の説明にある「工業用の糊」とは合板用の糊であることを明確にしたのであった.

 Wikipedia の執筆者や J-CASTニュースが滝代議士と麻生総理の質問答弁を知らなくても,まあ仕方がないと言えるが,全国紙五紙のうち一つも,上のやり取りを事故米不正転売事件とからめて報道しなかったのはどういうことであろうか.

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2015年1月17日 (土)

美少年 (補遺1)

【補遺1】

 三笠フーズ他による事故米不正転売事件では,事故米の大半がミニマムアクセス米であった.
 逆に,ミニマムアクセス米のうちのどれくらいが事故米かというと,0.5%以下とのデータがある.意図的に悪品質の米が輸入されているわけではなさそうだ.

 外国産の事故米にはカビ毒であるアフラトキシンや農薬のメタミドホスなどが含まれるため,食用でなく工業用として政府から民間に売却される.
 国産米でも地域によっては,土壌由来の有害重金属のカドミウムに汚染されることがあり,これも事故米である.
 食品衛生法により,玄米で 1ppm 以上蓄積しているものは販売や加工が禁止され,焼却処分されている.
 また《 0.4ppm 以上 1ppm 未満のカドミウム米は、1970年から2003年は国が、2004年以降は国から補助金を受けた社団法人全国米麦改良協会が買い上げて、粉砕し粉にしたものに赤い着色をしたうえで、非食用(工業用)として売却されている。2008年の事故米不正転売事件後のカドミウム米調査では不正転売はなかったが、国はカドミウム米の売却を中止すると発表した》と Wikipedia【事故米穀】にあるが,カドミウム濃度 0.4ppm 程度の汚染米に非汚染米を混ぜて 0.4ppm 未満にしたらどうなるかというと,これは食用に販売してよいのである.ただし実際にそのようなことが行われているか否か筆者は確証を持っていない.

 これに関連して二つ引用する.
Wikipedia【事故米穀】から引用.
農林水産省は糊の原材料として事故米を販売したと説明したが、米のデンプンでは粘性が低下して糊にならないので、糊の業界団体およびメーカー各社では、米を原材料として使うことはないとの反論を受け、国の説明が不十分であると批判された

Wikipedia【事故米不正転売事件】から引用.
「工業用として売買された」という農水省と三笠側の説明を多くの報道ではそのまま流しているが、主要接着剤メーカーが取材に応じ「自社でも他社でも米を原料にしているなどありえない」といったコメントをしており、農水省と三笠の間で、実際のところいかなる申合せで売買されたのか解明が待たれる》 (以上,下線は筆者による)

 アフラトキシンや残留農薬に汚染された米や,カドミウム米などについて,行政は工業用に販売したとの説明を従来から行ってきたが,上記 Wikipedia からの引用中の下線部にあるように,その実態は一般には知られていない.
 事故米不正転売事件のときに,工業用糊メーカーであるヤマト,不易糊工業,住友3Mは農水省に「事故米を原料に使用したことはない」と反論したが,その通りである.
 農水省が「工業用の糊」と説明してそれ以上は口をつぐんでいるのは,実は合板を作るときの糊のことである.

 合板工場では,尿素樹脂や尿素メラミン樹脂,フェノール樹脂などの木材用接着剤に,小麦粉などを加えて糊にするのであるが,接着力は落ちるが米粉も使えるのである.この木材用接着剤のメーカー数社は,上記の工業用糊メーカー三社および三笠フーズなどとは別の業界で,一般には知られていない.
 農水省は三笠フーズのような米穀加工業界とは別に,木材用接着剤メーカーにも事故米を合板工場に販売して欲しいと依頼してきた.不正転売事件で,農水省が事故米販売先の全社名を公表しようとしたとき,木材接着剤メーカーは「利益が出るわけではない事故米の販売に嫌々ながらも国策だから協力してきたのに,三笠フーズの不祥事に関連しているかのように当社の名が報道されるなら,今後は一切事故米の販売に協力しない」として社名公表を拒否したと筆者は知人から聞いた.
 Wikipedia の執筆者は工業用接着剤業界の事情を知らないから無理もないが,農水省が「工業用糊」以上の説明をしないのは,こういうことであったようだ.

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2015年1月16日 (金)

美少年 (五)

 こうして九州の名門酒造が一つ破産して,事故米不正転売事件の舞台は司法の場に移った.
 以上は当時の新聞と Wikipedia など,現在のネット上で参照できる資料を要約したものであるが,わからないことがいくつかある.

 緒方社長が不正を告白したとき,顧客である日本名門酒会の問い合わせに対して,緒方は《経営状況が厳しく不良債権の穴埋めのためにやってしまった》と謝罪したという.
 不良債権とは何か.
 当時の朝日新聞の報道によると,美少年酒造は自社の酒の販売促進のために飲食店に資金を貸し,それが回収できなかったときの不良債権処理に使用したとのことである.
 なぜ貸し倒れを簿外の裏金で処理しなければならなかったのかは不明だが,そもそも資金の貸し付け自体が簿外だったために処理も裏金で行う必要があったということか.
 しかし,顧客の維持拡販には,いかようにも他に合法なやり方があったはずだ.
 しかも二十年以上 (新聞によっては三十年近くと書いたものもある) の長きにわたって毎年毎年,百数十万円の貸し倒れ処理費用が定常的に必要だったというのは不自然ではないか.納得しがたい.

 原料と製品の品質管理はどうなっていたのか.経理上の辻褄合わせは社長がやったとしても,こればかりは社員や杜氏がやらねばならない.二十年以上のあいだ社内の誰も,国産であるはずの原料酒米に,加熱時に特有の香りを有するインディカ種の米が混入していることに気づかなかったと考えるのは,これも不自然である.
 不正に関与した人間がいたとすれば,その者は今も,何事もなかったのごとく株式会社美少年に雇用されているのか.もしそうなら,株式会社美少年において厳格な品質管理は今後も保証されないことになる.

 「美少年 (一)」の冒頭にあげた読売の記事に戻るが,なぜ関係者は,消費者を欺き続けてきた美少年ブランドを残そうとしているのか.これが最大の謎である.また食品の安全安心を読者に啓蒙すべき新聞が,なぜ「美少年」の製造再開を美談であるかのように報道するのか.
 現在の清酒「美少年」の製造を再開した株式会社美少年のウェブサイトに書かれた会社沿革をみると,事件を稚拙に隠蔽しているが,こんな小細工をしたところで,ネット上に事故米不正転売事件の資料がある限り,旧「美少年」の地に落ちた品質イメージは新「美少年」について回る.ネットの影響力を軽くみているとすれば,株式会社美少年の先行きは明るくないであろう.
(続く)

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2015年1月15日 (木)

美少年 (四)

 明けて平成二十一年.
 美少年酒造は,最盛期の平成八年(1996年) 九月期には売上高25億3,125万円を計上していたが,その後は低落を続け,平成二十年九月期には売上高13億445万円にまで落ち込んでいた.
 そこに事故米不正転売事件による自主回収の負担 (酒を含む食品製造業では自主回収リスクが高いため通常は製品回収費用に係る保険に入るのが普通であるが,美少年酒造が保険に入っていたかは不明) と,二十年下期の販売不振が打撃を加えた.

 一方,二月十日には《大阪府警・福岡県警・熊本県警の合同捜査本部は、不正競争防止法違反 (虚偽表示) の疑いで、三笠フーズ社長、同社元顧問 (旧宮崎商店元社長) 、同社社長秘書、子会社・辰之巳の元営業課長 (元顧問の長男) 、マルモ商事社長の5人を逮捕。詐欺罪での立件も視野に入れて捜査が行われた。》(Wikipedia【事故米不正転売事件】から引用)

 捜査の進展が美少年酒造社長・緒方直明を追いつめたことは想像に難くない.
 なぜなら緒方は,経営が好調であった昭和六十二年 (1987年) から,事件が起きた平成十九年 (2007年) まで,三笠フーズの子会社「辰之巳」を使って毎年不正な手口で裏金を手に入れていたからである.
 手口とは,まず美少年酒造が酒の原料米として仕入れた一等米を「辰之巳」に精米を委託する.「辰之巳」は実際にはその一等米を市場で売却し,三等米などの価格の低い米を購入して精米し、美少年酒造に納入する.一等米と低価格米の差額が裏金になったわけである.
 緒方が手にした裏金は毎年百数十万円から二百万円程度というから,さして大胆な不正ではなかったが,これが警察の手で明らかにされたら,もう会社は終わりだと緒方は観念したのであろう.そうなる前に急遽記者会見して自ら不正を公表した.そしてただちに民事再生法の適用を申請し,全役員が退陣して,支援企業数社に再建を託した.負債金額は十九億円であった.

 緒方がささやかな裏金を手にしていた陰で,三笠フーズは三等米どころか事故米を納入して,美少年酒造を食い物にしていたのであった.
 「薩摩宝山」の西酒造は事故米不正転売事件の被害者として同情をかい,数億円の被害をこうむったものの,会社は持ちこたえた.しかし美少年酒造 (民事再生法適用後に商号を「火の国酒造」に変更) を消費者は見捨てた.支援企業の再建努力もむなしく,遂に平成二十五年八月一日,支援企業の一つが新たに設立した株式会社美少年へ事業を全部譲渡し,熊本西税務署へ酒類製造免許を返納して明治十二年創業の酒造事業に幕を下ろした.
(続く)

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2015年1月14日 (水)

美少年 (三)

 農林水産省は平成二十年(2008年)八月,事故米を工業用 (非食用) として三笠フーズ株式会社 (大阪市北区) に売却した.
 ところが近畿農政局と九州農政局が三笠フーズに立入調査したところ,事故米を食用に転売していたことが確認されたのである.
 そのため農水省は平成二十年九月五日付でこの事実を公表し,三笠フーズに販売した事故米を回収するよう要請し,三笠フーズは自主回収することに同意した.(農水省には回収を命令する法的権限がないため,「要請」という形をとった)

 三笠フーズによる事故米不正転売事件の概要を示す.

 この事件は三笠フーズだけにとどまらず,接着剤製造業者である株式会社浅井 (名古屋市瑞穂区),でんぷん製造販売業者である島田化学工業株式会社 (新潟県長岡市) もまた事故米を食品用途に転売していたことが判明して世情騒然とした.この三社の他に,肥料製造業者である太田産業株式会社 (愛知県宝飯郡小坂井町) が事故米を使用して肥料を製造したとして肥料取締法違反の罪に問われた.

 事件の概略は Wikipedia【事故米不正転売事件】Wikipedia【三笠フーズ】に書かれているが,結局事故米転売先の全容は明らかにならなかった.

 さて三笠フーズの事故米転売先に,芋焼酎「薩摩宝山」を製造する西酒造 (鹿児島県日置市) と美少年酒造があった.この二社は大規模な自主回収を行った.
 芋焼酎の醸造に必要な麹を作るのに米が必要であるが,西酒造は三笠フーズ (直接には三笠フーズ子会社「辰之巳」の営業社員) に完全に詐欺的に騙されたといってよく,良品のサンプルを提示されたから辰之巳から購入した (辰之巳との取引はこれが初めてだった) のに,実際に納入されたのは事故米だったのである.
 一方,美少年酒造はマスコミの取材に対して「辰之巳とは付き合いが長く,信用していた.酒米の値段は別に安くはなく,裏切られた格好だ」と答えた.

 三笠フーズの不正に関しては,農水省に対して匿名の告発があったにもかかわらず,つまり不正を知りつつ農水省は長年これを放置してきたと噂された.
 ではなぜ突然に平成二十年の立入調査で発覚したか (発覚させたか) というと,三笠フーズの不正転売をこれ以上放置できない何らかの事態が生じたからと考えられるが,これについて当時の新聞報道は全く追求しなかった.追求してはいけない何らかの事情があったものと思われる.(下の引用文に示すように農水省総合食糧局に対して大規模な処分が行われたことから察する他ない.記者クラブで官庁から頂戴した情報を流すしか能のない商業マスコミの限界である)
 しかし事件の主役の一人が明らかに農水省であることから,太田誠一農相が平成二十年九月十八日に辞任した.
 大臣の辞任に続いて十一月二十八日には農林水産省は職員の処分が行われた.
 大臣,副大臣,大臣政務官の他には,《元総合食糧局長ら退職者2名が、給与ないし退職金の自主返納。事務次官、総合食料局長等の関係役職経験者6名の計7名が減給。ほかに、総合食料局長等の関係役職経験者について、1名が戒告、9名が訓告、1名が厳重注意、7名が口頭注意となった。》 (斜線部は Wikipedia【事故米不正転売事件】から引用)

 ここで一つ不思議なことがある.太田農相の後任の石破農相が,事件の責任は国にあるとして美少年酒造に謝罪したと新聞 (共同通信) は伝えたが,同じく自主回収に応じた西酒造に対して石破農相はどうしたのか.これがネット上を調査してもわからないのである.
 ともあれ,農水省職員の処分でこの事件は幕引きかと思われたが,まだ幕は下りなかった.
(続く)

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2015年1月13日 (火)

美少年 (二)

 余談だが,私は若い頃,貧乏だったこともあってサントリーの安ウイスキー (サントリーレッドなど) をよく飲んでいた.しかし昭和の中頃にサントリーの元社員の告発によって,サントリーのウイスキーが実はウイスキーとは名ばかりの模造ウイスキーであることが世間に広く知られたことから,そんなものを酒だと思っていた自分を深く反省し,以後暫くのあいだ,日本酒を飲むようになった.
 清酒は戦中から戦後にかけての長い時期に,醸造用アルコールで希釈したものに添加物を加えた模造酒が大手を振るって流通し,あまりにもまずいので消費者にそっぽを向かれ,消費量が長期低落していた.
 これを憂慮した一部の地方造り酒屋が伝統的な清酒の製造に立ち戻ったことから,ようやく低落に歯止めがかかった.
 これが昭和の中頃で,吟醸酒ブームの前のことである.
 ウイスキーから鞍替えしたその頃の私がよく飲んでいたのは,模造清酒ではない「澤乃井」(東京)「住吉」(山形)と「美少年」(熊本) だった.
 九州はいわずと知れた焼酎の土地であって,私が学生の頃から鹿児島の「白波」や大分の「二階堂」などは東京の酒屋の棚にも置かれていたが,九州の清酒で東京近辺でも知られていたのは美少年だけであった.
 さて日本酒の名には「菊正宗」とか「白鶴」とか由緒ありそうなのが多く,調べるとなかなかおもしろいのであるが,○○盛や○○誉のごとき安易な名称が多い地方の酒の中で「美少年」の名は一風かわっている.
 長いこと私は,「美少年」は熊本の産であることから,民謡『田原坂』から引用したものだと思っていた.つまり

  雨は降る降る 人馬は濡れる 越すに越されぬ田原坂
  右手に血刀左手に手綱 馬上豊かな美少年
……

と歌詞にある「美少年」に由来するのだと思っていたのだが,全然違っていた.
 実は杜甫が同時代の著名な酒豪八人 (賀知章,汝陽郡王李,李適之,崔宗之,蘇晋,李白,張旭,焦遂) を選んで作った『飲中八仙歌』の中で,杜甫は崔宗之を美少年と謡い,これが清酒「美少年」の由来だという.

 閑話休題
 日本政府は,国内産の政府米や,ミニマム・アクセスに従って商社が輸入した外国産 (ベトナム,中国など) の政府米にアフラトキシンや残留農薬が検出されたりした場合,これを事故米穀と呼んでいる.
 事故米穀は食用に適さないので非食用米として用途を食用以外に限定して販売される.されるはずであった.
(続く)

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2015年1月12日 (月)

美少年 (一)

 読売新聞 (Yomiuri Online 1/11 11:39) に,廃校になった小学校の校舎で日本酒の仕込みの真最中だとの記事が載っていた.

 熊本県の菊池川上流に位置する菊池渓谷は,紅葉の名所として知られているそうだ.
 この渓谷の西に一昨年の三月まで水源小学校があったのだが,廃校になった.その元校舎で,酒飲み高齢者の皆様にはあまねく御案内のかつての銘酒「美少年」が作られていると記事は伝えている.(下線後述)

 清酒「美少年」は,日本酒のブランドとしては新参であるが,造り手の酒屋としては宝暦二年(1752年) に遡るという.
 この造り酒屋が大正九年(1920年) に法人化して南薫酒造株式会社を設立し,清酒「美少年」を発売したのが始まりである.
 昭和二十五年(1950年) に南薫酒造株式会社は美少年酒造株式会社に社名変更し,「美少年」は次第に人の知るところとなった.
 昭和四十年代の終わり頃,ある日本酒頒布会が清酒「一人娘」(茨城県・山中酒造店) と「美少年」をセット販売したところ大好評を博したなんて記憶が筆者にはある.

 しかし美少年酒造株式会社の社運は,平成二十年から二十一年にかけて報道されたある事件を契機に,一気に傾いたのである.
(続く)

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2015年1月10日 (土)

異物混入

 長く勤めた食品会社を退職してもう二年ほど経つので,いい加減に以前のことはすっぱり忘れようとは思うのだが,なかなかそうもいかない.私の現役会社員時代の最後は食品の品質保証を担当していた関係で,食品の品質事故を耳にすると黙っていられないのである.

 いま,マクドナルドが異物混入問題で集中砲火を浴びている.それに関連してのことと思うが,自民党の穴見陽一衆院議員 (ファミレス「ジョイフル」代表取締役相談役) が《異物混入は忌まわしい事ではありますが、これを絶無にすることは不可能》《被害請求なのかゆすりたかりなのかよくわからない事例もあります》《異物混入自体はけっして珍しくない》とフェイスブックに書き込んだと朝日新聞が報道している.(朝日新聞DIGITAL 1/9 22:55)
 朝日の記事は,穴見氏が《事情を精査せずに今回のような一方的な訴えの片棒を担ぐような報道をしていたら、不要に世の中を混乱させ、企業とそこで働く人々の心を傷つける》とも語ったと伝えている.

 マクドナルドの事件と直接の関係はない穴見氏の発言を朝日新聞が取り上げた意図は明白で,こんな怪しからんことを言ってます,さあみんなで叩きましょう,ということである.
 企業の代表取締役かつ議員であれば,たとえ正論であっても発言に慎重であらねばならない.その発言に対して誰がどう反応してくるかを予測してから発言するという,リスク管理の考え方が求められるからである.
 その点で穴見議員は軽率であった.朝日の報道に対する対処の仕方によっては,さらに朝日はからみついてくるかも知れない.

 以上を踏まえて私見を述べる.
 穴見氏が《被害請求なのかゆすりたかりなのかよくわからない事例もあります》《異物混入自体はけっして珍しくない》と書いたのは,別段誤りではない.事実である.
 しかし《異物混入は忌まわしい事ではありますが、これを絶無にすることは不可能》と述べたのはいかがなものか.
 ジョイフルは九州を中心に数百店舗を全国展開する大きな企業であるから,必ずや品質マネジメントシステムを持っているに違いない.
 品質マネジメントシステムは,例えば異物混入事故を 100ppm(料理一万皿に一回の混入事故率) にすると目標を掲げ,それが達成できたら次に10ppm, 5ppm, と順次目標を高くしていくという具合に運営する.(PDCAサイクルを回す,という)
 従って,トップ (形式上は相談役ではあるが) が《不可能》と断じたら,目標を立てられず,すなわち品質マネジメントシステムは成立しないのである.
 ジョイフルは,経営者が品質マネジメントシステムを理解していないことを露呈してしまった.すなわち経営者が品質に関する見識を持っていないようでは,そのレストランの異物混入事故率は高いのではないかと消費者に疑われてもしかたない.

 火元であるマクドナルドの異物混入事故について触れておく.
 歯科治療用金属 (歯の詰め物) の混入と,治療痕のある歯のかけらの混入の二件については,本当の異物混入事故であるか疑わしい.私の知る限り,消費者の誤解である可能性が極めて高い.食品企業や外食産業の品質担当者もそう思うであろう.
 それ故,新聞は,ヒトの歯関連の「異物混入」報道は慎重にしなければいけないのであるが,明らかに異物混入であるビニール片と,事実かどうか疑わしい歯の詰め物をいっしょくたにして全国紙各紙がマクドナルドを叩いているのを見ていると,この連中は本当に不勉強だなと思わざるを得ない.

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2015年1月 9日 (金)

年賀状はいつ投函

 昨日,年賀状が一通届いた.
 この差出人は,私がまだ四十代だった頃の元部下だが,いつも私からの賀状が届いたあと,三が日過ぎに年賀状を投函する.
 誰にも,年賀状だけのお付き合いというものがあるだろう.
 意味のない賀状のやり取りはやめたいのだが,上述の元部下は,こちらが賀状を出さないようにすると,なぜか元日に届くように賀状を送ってくる.
 それで仕方なく賀状を再開すると,また三が日過ぎに賀状を書いて送ってくる.そんなちぐはぐなことがもう十年以上続いていて,この男が何を考えているのかよくわからない.
 私は退職して,もう顔を合わせる機会もないだろうから,今度こそ私の方から賀状を出すのはやめようと思う.

 さて年賀状を投函するのは年明けですか,それとも年の暮れですか,という質問は読売新聞『発言小町』の定番ネタだ.
 今立てられているトピは「正月の五日とか六日に届く年賀状を書くやつの感覚が理解できない」というもの.
 これに対して,ハンドルネーム「ここあ」という人が「元旦に届くようにするのは最近の話.年賀状は本来年が明けてから書くものだ」とレスしている.
 この他にも同一趣旨のレスがたくさんついている.
 定番ネタとはいえ,よく飽きもせず毎年こんな嘘レスが掲載されるものだと呆れてしまう.

 明治四年 (1871年) に郵便制度が発足して,明治六年 (1873年) には郵便はがきの発行が開始された.そしてこれを契機に,年賀状を送る習慣が国民のあいだに広まり,明治二十年頃には年賀状は国民的行事になったというのが定説だ.
 この当時の郵便物は,受付局と配達局の二つの消印が押されていたのであるが,軽佻浮薄な我が国民のあいだでは「一月一日」の消印が押されるように賀状を投函するのが大ブームとなった.
 このように年賀状は,そもそも始まりの頃から,年内に書いて投函したものなのである.
 しかし何にでも原理主義者はいるもので,そういう人たちは「年末に『今年もよろしくお願いします』と書くわけにはいかない」として,年が明けてから賀状を書いていた.
 ただし,会社員や商売をしている人は,上司や得意先からの年賀状を受け取ってから返信したのでは相手の機嫌を損ねることほぼ間違いなく,従って必ず年内に投函するようにしたものである.賀状原理主義者はごく一部に過ぎなかったのである.

 
 上に紹介した「ここあ」という嘘つきは「元旦に届くようにするのは最近の話」と書いているが,明治の中頃のことを「最近」っていうか?(爆)

 もうちょっと調べてから書けとレスをつけたいのであるが,なにしろ私は『発言小町』ではアカバンをくらってしまっているので,こんなところでケチをつけてみる.

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2015年1月 7日 (水)

中村真一郎の嘘

 高島俊男『漢字の慣用音って何だろう?』(お言葉ですが…別巻5;2012年7月5日 第1刷) に収載の「戦争中の軽井沢」がおもしろかった.
 これは,高島先生がある朗読会に参加されたところ,作家中村真一郎の著作がいくつか朗読されたことに端を発した話である.

 その朗読会で読まれた中村真一郎の著作に,日経新聞の連載記事『私の履歴書』欄に掲載された文章があった.

 高島先生は,『私の履歴書』の朗読を聞きながら,ところどころに疑問を持ったという.例えば中村が戦時中に軽井沢に疎開していた頃から戦後にかけての,次のような箇所である.

そのひとりの朝吹常吉氏に、敗戦直後に謦咳に接することができたことが、明治以来の旧支配階級の美点に直接、触れる機会となり、野間宏をはじめとする、あと半年もすれば日本に革命政権が出現するという楽観論に対して、私を甚だ懐疑的にしたものである。

戦争の真最中でも、常吉氏は家長として、朝、起きるとネクタイを結び、正装をした二人のお孫さんを廊下に迎えると、その少年少女が行儀よく声をそろえて、「グッド・モーニング、グランド・パ」という挨拶を受けるのを私は目撃した

 下線部分は私が引いたものだが,高島先生は「敗戦直後に謦咳に接することができた」中村が「戦争の真最中でも」「目撃した」はずがないという.そのとおりであって,これは矛盾している.
 この他にも,神戸にあった海洋気象台が長野県に疎開したとか,明らかに変なところがいくつもあったことから,高島先生は朗読会のあと,中村真一郎の『私の履歴書』が本当のことを書いているのか,中村の経歴とその周辺を調べて,それを「戦争中の軽井沢」にまとめたのである.
 結論をいうと,中村真一郎『私の履歴書』にはとんでもないデタラメが書いてあるのだが,なぜそんな嘘八百を書いたのだろうか.それが大きな疑問である.
 高島先生は,中村の嘘を自己顕示癖によるものと書いておられるが,はたしてそうだろうか.なにしろ掲載紙は日経である.読者層が偏っている上に発行部数も少ない文芸誌とは,わけが違う.中村が信州に疎開していた時期の知人や関係者の眼に『私の履歴書』が触れて,嘘がばれるおそれはかなり高いのである.嘘がばれてしまっては自己顕示にならない.
 中村の『私の履歴書』が掲載されたのは1993年である.中村は1918年生まれであるから,執筆は七十九歳で死ぬ四年前である.その頃の中村の精神が,記憶も定かでないほどに衰えていても不思議ではない.もはや老いた中村の頭の中では,海洋気象台が信州の山の中にあっても別に変ではなかったのではなかろうか.
 そのことを推測させる箇所がある.上の引用中《敗戦直後に謦咳に接することができたことが》は職業作家の文章とは思えない.「が」を重ねて,まるで小学生みたいな書きぶりである.また《その少年少女が行儀よく声をそろえて、「グッド・モーニング、グランド・パ」という挨拶を受けるのを》は主客転倒している.「挨拶をする」でなければ日本語にならぬ.七十半ばはまだ若いようだが,こんな文章を書いてしまうくらいにモウロクするのはよくあることだ.

 話変わって,中村真一郎『私の履歴書』には,中村が自分を不具廃疾であると偽って兵役を逃れたとかいてあるそうだ.戦時中の兵役逃れのあれこれは,怪しからぬことではあるが,またよくあることでもあったろう.
 しかし,だ.それを得々と自分の経歴として全国紙に書くか?
 高島先生が中村『私の履歴書』のデタラメを暴いてみせたのは,このあたりにムッとされたからではないかと私には思われる.

 Wikipedia【中村真一郎】は,中村の業績を簡単にしか記述していないが,昭和三十年代から四十年代にかけては売れっ子の作家であった.確か当時,読売新聞の文芸批評欄を担当していたのではなかったろうか.
 それが今ではすっかり忘れ去られた.特撮映画『モスラ』の原作者の一人であるといったら思い出す人がいるだろうか.

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2015年1月 5日 (月)

楓や蔦は

 高野辰之作詞,岡野貞一作曲の『紅葉』は懐かしい唱歌だ.
 これは今でも,歌の名を『もみじ』に変えて小学校で教えているらしい.

 昨年末に『発言小町』に立てられたトピで,子供の学校の先生が『もみじ』の歌詞中「楓や蔦は」の「は」を「ha」と発音するように教えているのだが,これは間違いで「wa」ではないだろうか,という相談があった.
 その先生の無教養ぶりは高等教育を受けているとは思えないほどだが,このトピについているレス (すなわち『発言小町』編集者がトピに反映させるに値するとして選択したレス) にも驚き呆れる.

 まずハンドルネーム「蓄」という人の珍説を紹介する.
「蓄」氏は「童謡や唱歌で,昔と現代で歌詞が部分的に違っていたり,濁点を濁らずに歌ったりするが,これは方言の一種だろうか」として,その例に「春の小川はサラサラ (ブログ筆者註;正しくは〈さらさら〉である) 流る…」「たれか故郷を…」を挙げている.
 唱歌『春の小川』にはいくつかの歌詞があり,「春の小川はさらさら流る…」と歌うのは1912年に尋常小学校の教科書に載ったもの.戦時中に改変されて国民学校教科書では「春の小川はさらさら行くよ」となった.「蓄」氏は「流る」は「行くよ」の方言だというのだが,もう何と言っていいのかわからない.
 例の二つ目,歌詞に「たれか故郷を」とある唱歌童謡なんかあるのだろうか.私は「誰か故郷を想はざる」なら知っている.西條八十作詞,古賀政男作曲,霧島昇が歌う戦時歌謡である.もちろん学校では教えない.この歌で「誰」を「たれ」と読むのは方言なんかではありえないが,この人は高校でちゃんと授業を受けたのであろうか.
「さらさら流る」版の『春の小川』や戦時歌謡を知っていたりして,どうも「蓄」氏は年齢不詳である.

 次に「みんなのなかへ」氏が,岩波文庫『日本唱歌集』と講談社文庫『日本の唱歌』を挙げて,この本に書いてある歌詞が正しい歌詞だと主張している.
 無論そんなわけはない.
『日本唱歌集』も『日本の唱歌』も,歴史的かなづかいで書かれた歌詞を作詞者の了解なく勝手に現代かなづかいに変えてしまっているのであるが,元々が歴史的かなづかいで書かれた詩歌を現代かなづかいに書き直すと,不都合が生じることがある.
 例えば島崎藤村の『小諸なる古城のほとり』から一節を引く.(ブログというものの都合上,敢えて以下の引用中の漢字は現代日本語の漢字を用いる)

  千曲川いざよふ波の  岸近き宿にのぼりつ
  濁り酒濁れる飲みて  草枕しばし慰む

 この部分の「いざよふ波」を,声に出して読むときに「イザヨオ」と発音するのは高校の知識である.
 また例えば,戦時歌謡『愛国の花』の一節「地に咲き匂ふ国の花」を歌うときは,「匂う」なら「ニオウ」だが,歌詞が「匂ふ」なのだから「ニオオ」と発音せねばならない.それが証拠に渡辺はま子も島倉千代子も皆「ニオオ」と歌っている.

 こういうことを『日本唱歌集』も『日本の唱歌』も無視しているわけで,つまりこの二冊に書かれている唱歌の歌詞は,作詞者の意図を無視しているのである.従って正しい歌詞であるわけがない.
 このような「みんなのなかへ」氏の如き人が出てこないようにするには,出版物においては,現代かなづかいに書き換えた歌詞に添えて元の歌詞を参考として併記するしかないと思うのである.

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2015年1月 4日 (日)

通販おせち

 正月には息子と娘夫婦がやってくるので,昨年末に Amazon の通販冷凍おせちを手配しておいた.板前魂という業者の「和風三段重花籠」という商品である.
 配達されたのは二十九日の夜で,そのまま冷蔵庫の野菜室に入れて元旦まで放置.
 元日の朝に蓋を開けてみたらまだ一部が凍っていたので,一部を食べたが残りは昼まで室温に置いて完全解凍し,また冷蔵庫に入れて二日の日に皆で賞味した.

【一の重】

20150104a

 [上段左] 豚肉の牛蒡巻,炙り松笠いか
 [上段右] 味付数の子,子持やりいか
 [下段左] 伊達巻,田作り,花餅紅白
 [下段右] 有頭海老

【二の重】

20150104b

 [上段左] 鯛龍皮巻,クルミ甘露煮,若桃甘露煮
 [上段右] 桜真丈,叩き牛蒡,赤魚西京焼
 [下段左] 栗甘露煮と寿マロン,チキン三昧
 [下段右] 照焼帆立,錦糸紅白結び,さつまいも干支

【三の重】

20150104c

 [上段左] 紅白なます
 [上段中] 芋きんとん,渋皮栗の甘露煮
 [上段右] 子持ち昆布の山海和え
 [中段上] にしん昆布巻
 [中段中] 味付いくら
 [中段右] 金粉黒豆
 [下段左] 棒だら
 [下段中] 湯葉細巻
 [下段右] たこ旨煮

 さあ税抜き一万円弱のこのおせちを「スカスカ」とみるか「まあまあ」とみるかは難しい問題だ.
 年末に藤沢のデパート「さいか屋」の地下特設おせち予約売場にあったサンプルと比較すると,ぎりぎり合格点かなあ.これが一万三千円とかだったら騙され感が漂うと思う.
 ただしデパートのおせちは,一万円は最低価格で,中心価格帯は二万円から三万円なので,そもそも Amazon 通販とは客層が違う.ではあるけれど,おせち料理に二万円も使いたくないので,内容的に大したことないけど高くはないという,その意味で合格点だ.
 でも来年もまた買うかというと,買わない.藤沢さいか屋の地下では,茅ケ崎の「えぼし」他の各店が大晦日当日限りで,一人から二人用の小さなおせちを販売した.これを二種類買うと七千円であるが,このほうがコスパがいいと思った.

 以上は見た目の採点 (おせちなんて見た目だけの料理だとは思う) だが,上の三段重の中で,冷凍耐性がなくて解凍したら食感がだめになっていたのが,さつまいも干支 (さつまいもを羊の形に切り抜いた飾り物) と湯葉細巻だった.湯葉細巻は離水してしまったのだが,これは料理人に冷凍耐性の知識が不足しているためと思われた.
 それから,チキン三昧と赤魚の西京焼きは干物のようにカチンカチンだった.棒だらもカチンカチンだったが,そもそも固いものだから仕方ない.
 黒豆は甘味がほとんどないので驚いた.あまり砂糖を使わずに煮るとシワができずに仕上がるのからかも知れない.
 味の採点は,百点満点で五十点です.板前魂さん,来年は頑張ってもう少し美味しくしてください.
 
 

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2015年1月 3日 (土)

よい滑り出し

 どうやらこの正月には食品がらみの事件はなかったようで,めでたい.

 昨年末の「おせち雑感」に《しかし世の中はどんどん豊かになって,年末のスーパーに買い出しにいけば,黒豆でも伊達巻でも何でも売っている.それどころかデパートではめでたさ満載のおせち料理一式を購入できる.外れクジを引いてしまうリスクはあるが,ネットで買うことも可能だ》と書いた.

 その外れクジとは,四年前の2010年年末にクーポン購入サイト「グルーポン」が,株式会社外食文化研究所が経営していた横浜と藤沢の飲食店「バードカフェ」のおせち購入クーポンを販売した事件 (いわゆる「スカスカおせち」事件あるいは「腐った汚せち」事件) のことである.
 この事件の結果,グルーポンはおせち購入権の取り扱いをやめた.
 おせちの製造者 (株)外食文化研究所はバードカフェの閉店と社長の辞任を発表したが,次の社長が辞めた社長の父親だったことから,その責任の取り方はいかがなものかと批判を浴びた.しかも外食文化研究所は,このあと横浜と藤沢の店舗名をコロコロと変えて,実質的に飲食店経営を続けてきた.

 昔は,食品衛生法違反で社名を公表された会社は,いったん会社を解散し,すぐに新会社を設立して行政処分を有名無実にしてしまうのが常套手段だった.
 魚介類の産地偽装が根絶できないのは,こんな抜け道があるのが一つの理由である.
 また飲食店が食中毒で営業停止処分を受けたような場合は,処分前の店名のまま営業再開しても客は戻ってこないから,店舗名を変えて何食わぬ顔で世間の目を欺くことがよく行われた.

 だが現在のネット社会では,こんな小細工はたちどころにばれてしまう.外食文化研究所は,社名を「SURF CAPP inc.」に変更したあと事業を拡大して横浜と藤沢以外にも飲食店を作ったが,ネット民の調査力には驚くべきものがあって,巨大掲示板のスレに「○○という店はあの外食文化研究所がやっている店だ」とすぐに報告された.
 こうして外食文化研究所あらため SURF CAPP inc. の新店舗「串焼 BAR プクプク」が食中毒を起こしたことも知れ渡った.(腐ったおせちを販売したことを反省していないとみえる.雀百までなんとやらだ)

 ちなみに藤沢にあったバードカフェは,現在はフジサワキッチンという名前で営業しているという.食べログに,この店についての好意的なレビューを書いている人は,バードカフェの事件を知らないのか,はたまたステマか.

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2015年1月 1日 (木)

年の初めの例とて

Nenga2015



正月や 今年は来るのか大晦日
正月や 今年も来てくれ大晦日

 昨年の六月,心筋梗塞で死ぬ一歩手前で間一髪,冠動脈バイパス手術を受けて一命をとりとめた.
 よくぞ生きながらえたものだと思う.

 冠動脈バイパス手術の術前に心臓外科で色々と検査を受けたのであるが,その結果の一つに頸動脈狭窄の疑いがあるというのがあった.
 頸動脈狭窄 (頸動脈の硬化) は脳外科の領域のようで,そちらの診療科でエコー検査を受診した.
 恐る恐る検査結果を聞きに行くと,狭窄率はまだ50%であり,急いで手術するレベルではないとのことだった.
 頸動脈のエコー検査結果は大変にわかりやすい画像で説明してくれて,ほっと一安心した.
 ただしこれが進行すると,ここの血管内壁から剥離したものが脳の血管を詰める,つまり脳梗塞の可能性が出てくるので,定期的に検査したほうがよいとの説明だった.

 冠動脈バイパス手術のほうは,この一月に循環器内科で半年点検を受ける.
 大動脈瘤はないようなので,上半身は定期検査を続けていけばいいとして,一つ気になっているのは下半身.
 下半身といっても腹部のことだ.
 冠動脈と頸動脈が狭窄していたのだから,腹部の動脈もあやしい.腹部の動脈瘤もかなりよくある話で,私の知人にフランクフルトソーセージくらい (本人談) の腹部動脈瘤が発見された人がいる.そんなのが破裂したら即死だ.

 私の父親は九十歳まで生きて大往生したが,私はそんなに生きられないこと確定だ.あと十年がいいところだろう.動脈硬化の進行具合ではもっと早くお迎えが来るかも知れない.
 これからは,年の初めのためしとて,今年も大晦日まで生きていたいものだと,ささやかな願いを立てることにしよう.

【おまけ】
 冒頭の画像は無料のものを拝借したのだが,梅に鶴という突拍子もない絵柄で,鶴としてはどうしたらいいのか困惑しているところがおもしろいので載せてみた.こんなところにも,昭和は遠くなりにけりの感がある.
 しかし翻って考えてみたら「梅に鶯松に鶴」と決まり文句でいうが,松の木に鶴がとまるなんてのもかなり突拍子もない絵柄ではある.たぶん江戸時代から明治大正昭和と,そんな嘘が通用していたのであるからして,梅に鶴の創作も悪くはないかも知れない.念のためだが,松の枝に鷺がとまるのは日本画のモチーフの一つであります.
 あとそれから,「今年は来るのか」だの「今年も来てくれ」みたいに中の句が字余りなのはゆるんでダメダメなんだと夏井いつき先生が仰っている.この場合はどうしたらいいんでしょうか.

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