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2015年1月19日 (月)

美少年 (補遺3)

【補遺3】

 食品に異物や有害物が混入したおそれがある場合,保健所は製造者に製品の回収を指導あるいは命令する.
 賞味期限が長い食品の場合は,出荷量の何割かが回収されるのが普通である.私の経験では,対処が迅速であったおかげで九割以上の回収に成功したことがある.
 しかし比較的速やかに消費されてしまうものは,ほとんど回収されない.

 不正転売事件で三笠フーズと島田化学工業が食品用に販売した事故米穀にはアフラトキシン汚染米があったとされていて,これが様々な食品に混入して日本各地に流通したが,おそらく意図的に販売先の記録を残さなかった島田化学工業は特別に極悪で,回収のしようがなかった.

 混入した有害物が残農の場合は,その事故米はまだ工業用に使用が考えられるが,この地上でフグ毒のテトロドトキシンと並ぶ最凶の自然毒であるアフラトキシンに汚染された米は,全量焼却処分すべきであると私は考える.

 アフラトキシンの毒性については Wikipedia【アフラトキシン】に簡単に書かれている.
 我が国における輸入食品の水際検査においてアフラトキシンが検出される例は米とトウモロコシおよびナッツ類が多いが,厄介なことに,これらは輸入ロットの全体にカビが生えているのでなく,不均一に汚染されていることが多く,そのため少量をサンプリングして検査する方法では検出されないことが多い.従って,水際検査をすり抜けて年間にどれほどのアフラトキシンが消費者の口に入っているかは,推計もできないのが現状である.

 おもしろいことに,アフラトキシン生産菌のアスペルギルス・フラブス (Aspergillus flavus) は日本の自然界にも存在しているのだが,日本のアスペルギルス・フラブスはアフラトキシンを作らない.
 これが,アフラトキシン生産能を失っているためなのか,何かの条件によって作らなくなっている (場合によっては作る) のかは不明であるが,事実として国産の落花生にはアフラトキシンは検出されない.しかし中国産のものには頻繁に検出される.上に書いたように,アフラトキシンは貿易の水際検査をすり抜けることが多いから,中国産のピーナッツは危ない.私は決してピスタチオと中国産のピーナッツは食べない.中国製の落花生油は絶対に料理に使わない.

 昔,昭和六十年のことであるが,ある食品会社Aが中国から落花生油を輸入し,小瓶に包装して販売したことがある.
 その年,某有名企業の研究者B氏が,スーパー等の店頭からナッツ類やスナック菓子類など色々な食品を購入してアフラトキシンを分析したところ,上記の落花生油に基準値の数百倍という高濃度のアフラトキシンが検出された.驚いたB氏は,知人のつてをたどって,A社にそのことを連絡した.

 当時は,穀物やナッツに含まれるアフラトキシンの分析法は確立していたが,油脂中のアフラトキシン分析法は知られていなかった.B氏は油脂中のアフラトキシン分析法を完成していたので,親切なことに,その分析方法も詳しいプロトコルにまとめてA社に教えてあげた.自分で分析して確認し,対処してくださいというわけである.

 B氏の連絡を受けたA社はどうしたか.
 その当時から食品の安全性に強い関心を持っていた灘神戸生協 (現コープこうべ) が,生協で扱う商品の基礎データとするため,店頭で種々の食品を買い上げて安全性試験をしていた.また関西の大学の食品化学研究者で同様の試験研究をしている人もいた.
 そこでA社は,灘神戸生協や大学の調査研究に引っかからぬよう,いったん関西都市部の小売店店頭から問題の落花生油を引き上げた.そして回収した商品を再び関西圏から遠く離れた地方に出荷して販売したのである.
 数年後にその事実を知ったB氏は愕然としたが,もう消費されたあとでは,どうしようもなかった.

 アメリカから輸入されたトウモロコシにも,アフラトキシンに関わる黒い事実がある.いつか稿を改めて書きたい.

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