« 美少年 (五) | トップページ | 美少年 (補遺2) »

2015年1月17日 (土)

美少年 (補遺1)

【補遺1】

 三笠フーズ他による事故米不正転売事件では,事故米の大半がミニマムアクセス米であった.
 逆に,ミニマムアクセス米のうちのどれくらいが事故米かというと,0.5%以下とのデータがある.意図的に悪品質の米が輸入されているわけではなさそうだ.

 外国産の事故米にはカビ毒であるアフラトキシンや農薬のメタミドホスなどが含まれるため,食用でなく工業用として政府から民間に売却される.
 国産米でも地域によっては,土壌由来の有害重金属のカドミウムに汚染されることがあり,これも事故米である.
 食品衛生法により,玄米で 1ppm 以上蓄積しているものは販売や加工が禁止され,焼却処分されている.
 また《 0.4ppm 以上 1ppm 未満のカドミウム米は、1970年から2003年は国が、2004年以降は国から補助金を受けた社団法人全国米麦改良協会が買い上げて、粉砕し粉にしたものに赤い着色をしたうえで、非食用(工業用)として売却されている。2008年の事故米不正転売事件後のカドミウム米調査では不正転売はなかったが、国はカドミウム米の売却を中止すると発表した》と Wikipedia【事故米穀】にあるが,カドミウム濃度 0.4ppm 程度の汚染米に非汚染米を混ぜて 0.4ppm 未満にしたらどうなるかというと,これは食用に販売してよいのである.ただし実際にそのようなことが行われているか否か筆者は確証を持っていない.

 これに関連して二つ引用する.
Wikipedia【事故米穀】から引用.
農林水産省は糊の原材料として事故米を販売したと説明したが、米のデンプンでは粘性が低下して糊にならないので、糊の業界団体およびメーカー各社では、米を原材料として使うことはないとの反論を受け、国の説明が不十分であると批判された

Wikipedia【事故米不正転売事件】から引用.
「工業用として売買された」という農水省と三笠側の説明を多くの報道ではそのまま流しているが、主要接着剤メーカーが取材に応じ「自社でも他社でも米を原料にしているなどありえない」といったコメントをしており、農水省と三笠の間で、実際のところいかなる申合せで売買されたのか解明が待たれる》 (以上,下線は筆者による)

 アフラトキシンや残留農薬に汚染された米や,カドミウム米などについて,行政は工業用に販売したとの説明を従来から行ってきたが,上記 Wikipedia からの引用中の下線部にあるように,その実態は一般には知られていない.
 事故米不正転売事件のときに,工業用糊メーカーであるヤマト,不易糊工業,住友3Mは農水省に「事故米を原料に使用したことはない」と反論したが,その通りである.
 農水省が「工業用の糊」と説明してそれ以上は口をつぐんでいるのは,実は合板を作るときの糊のことである.

 合板工場では,尿素樹脂や尿素メラミン樹脂,フェノール樹脂などの木材用接着剤に,小麦粉などを加えて糊にするのであるが,接着力は落ちるが米粉も使えるのである.この木材用接着剤のメーカー数社は,上記の工業用糊メーカー三社および三笠フーズなどとは別の業界で,一般には知られていない.
 農水省は三笠フーズのような米穀加工業界とは別に,木材用接着剤メーカーにも事故米を合板工場に販売して欲しいと依頼してきた.不正転売事件で,農水省が事故米販売先の全社名を公表しようとしたとき,木材接着剤メーカーは「利益が出るわけではない事故米の販売に嫌々ながらも国策だから協力してきたのに,三笠フーズの不祥事に関連しているかのように当社の名が報道されるなら,今後は一切事故米の販売に協力しない」として社名公表を拒否したと筆者は知人から聞いた.
 Wikipedia の執筆者は工業用接着剤業界の事情を知らないから無理もないが,農水省が「工業用糊」以上の説明をしないのは,こういうことであったようだ.

|

« 美少年 (五) | トップページ | 美少年 (補遺2) »

新・雑事雑感」カテゴリの記事

食品の話題」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 美少年 (補遺1):

« 美少年 (五) | トップページ | 美少年 (補遺2) »