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2014年12月 7日 (日)

お調子者 三条市教育委員会

 私のブログで何度も取り上げたことだが,とうとう十二月一日,新潟県三条市の全小中学校で給食の献立から牛乳が排除された.

 成長期の児童にとって,牛乳の栄養的価値は大変に大きい.三条市教育委員会の諸君は知らないだろうが,1945年の敗戦後,この国土を復興させるのに必要なのは何をおいても子供たちであるとの熱意の元に,当時の文部官僚は占領軍と掛け合い,学校給食を実現した.
 その際,学校給食の基礎食材として何が適当かとの文部官僚の相談に,栄養学者は乳製品だと答えた.当時全国の小学校に一律に配給できる乳製品は米国産脱脂粉乳が唯一のものであったので,政府は占領軍に脱脂粉乳の供給を依頼した.米国政府はこれを快諾し,米国の畜産にとって重要な農業資材であった脱脂粉乳を日本に提供した.その費用は,初めは在米邦人の祖国救援資金 (ララ) がまかない,のちに国連が継続支援してくれた.

 以来,我が国の酪農が復興してからは輸入脱脂粉乳は国産生乳に代わったが,牛乳は学校給食の柱であり続けた.あるいは学校給食が日本の酪農を支え続けたといってもいい.
 食文化の面からいえば,日本の食文化における大豆製品や発酵食品と同様に,あるいはそれ以上に乳製品は世界的に重要な食品群である.現在は日本人の食生活に定着しているといっていい.従ってこれを自給できるようにしておくことは食糧安全保障の面からも重要な課題である.

 しかるに無知蒙昧な三条市教育委員会は「牛乳は和食にあわない」との理由で給食の献立から牛乳を排除した.「牛乳は和食にあわない」が全国の小中学校に波及したらどうなるか.おそらく日本酪農は壊滅する.チーズもバターも国産品を供給できなくなる.
 もともと農水省は食料自給率をカロリーベースを主体に計算しているため,乳製品を国産食料にカウントしてこなかった.牛の飼料が主に輸入品だからである.それで,国民の実際の食生活よりも「食料自給率」という数字だけが大切な農水省にとっては,日本農業から酪農が消滅しても痛くも痒くもないのである.

 数ヶ月前から,スーパー等の小売店店頭でバターが品薄となって問題化している.これは,日本酪農なんぞ消滅しても構わない,バターが足りなくなったら輸入すればいいとする農水省の政策の結果である.
 店頭でのバター不足が明らかとなってから農水省はバターを緊急輸入したが,バターの品薄は解消していない.せっかく輸入してやったのだからもっと売れと,先日は乳業会社等を集めてはっぱをかけた.愚かとしかいいようがない.
 日本の乳業は我が国の酪農と結びついてやってきた.支えあってやってきたのだ.それを,バターを輸入してやったからパッキングして売りなさい,酪農の衰退は見て見ぬふりをしなさい,パッキングが君たちの仕事ですと言われても,誰がへいそうですかと従うか.

 三条市教育委員会の牛乳排除給食には,日本栄養士会が疑問を呈している.栄養士会は,学校給食から特定の食材を排除すべきでないとしている.当然にすぎる見解である.ましてや特定食材排除の理由が,栄養学上のことでなく,農水省が進める「和食ビジネス」およびコメの消費維持拡大という政治的理由では,何をかいわんやである.
 このブログで何度も述べてきたように,農水省が絶賛する伝統的な日本人の食生活は,コメを主食として低タンパクかつ食塩過剰であった.そしてこれこそが,戦前まで日本人の寿命を短くしていた原因である.戦後,我が国の一般家庭が,乳製品や肉類など,それまでの日本の伝統食になかったものを,「和食」がどうのこうの言わずに積極的に取り入れてきたことが,子供たちの体格の向上と国民の長寿命化をもたらしたのである.
 農水省は,伝統的な「和食」に戻れという.味噌汁と漬物でコメの飯を食えという.誰に頼まれたか知らぬが,三条市教育委員会の栄養士は,牛乳排除で不足する栄養素をフリカケでまかなうという.農水のお先棒をかついで食塩摂取量を増やし,子供たちにコメ中心の食生活を復古教育する「食育」をするつもりらしい.この栄養士は,日本栄養士会の忠告をものともせず「牛乳なんか飲まなくてもカルシウム不足にはならないということを子供たちに教育する」と新聞記者に語って意気軒高であるが,学校給食で子供たちに金属異物入りの笹団子を食わせるという事件を起こすような恥ずべき脳味噌の連中が何を言っておるか.新潟という米作地帯の行政機関として,農水省の「和食」ビジネスガイドブックに載せてもらったのがそんなに嬉しいか.調子に乗って農水省のお先棒をかつぎたいのだとしても,あまりの無知蒙昧ぶりにあきれる.コメの消費維持拡大には,学校給食にフリカケを採用しても意味がない.それは米作農家の競争力向上という農業政策によって実現されるのである.

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