減塩食 (七)
前回の記事に《政府は「和食はヘルシー」と宣伝するが,その「和食」が「一汁三菜」のことだとするなら,和食がヘルシーだというのは嘘である》と書いた.
《嘘である》というのは,どんな食事がヘルシーかなんてことは,今現在は誰にもわかっていないからだ.戦後,栄養学者たちの論争で,決着のついたものがあるだろうか.ほとんどないのである.(栄養学が別名「ネズミの栄養学」といわれるように,ヒトを対象にせずネズミを使ってばかりいるのが,栄養学が発展しない大きな理由である)
そのような状態の現在の栄養学に基づいていえることは,一言でいうと「色々なものを食べましょう」ということである.これはリスク分散の考え方である.
ほとんどの研究者が肯定していることであるが,どんな食材・食品・料理にも健康によい点とそうでない点がある.従って,特定の食材・食品・料理に偏った食生活を行うと,健康上のリスクが顕在化しやすくなる.
これを避けるには,特定の食材・食品・料理に偏らないようにすればよい.つまりリスクを分散させるのである.最善ではなくても決して最悪ではないようにすることが大切で,「バランスのよい食事をしましょう」というのは,このことを意味している.
すなわちここでいう「バランス」とは,例えば主食と副食の比率がどうのとか,食事で摂る飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸の比率がどうのということではない.特定の食材を摂取しすぎないこと,あるいは特定の食材を忌避しないことを「バランスがいい」というのである.
例をあげると,糖質制限ダイエット.その評価は横に置くとして,バランスの悪い食事であることは間違いない.
さて政府 (と一人の御用学者) が,日本人の食生活史を捏造して勝手に定義した「和食」の普及を推進しようとしているのは,米の消費促進であることがあからさまである.
私たちの食生活は昭和三十年代に,それまでの味噌汁と漬物と塩辛いおかずで飯をかき込む悪しき伝統食から離れて,豊かに多様化した.健康上のリスクが分散した「バランスのよい食事」が実現したのである.
しかるに政府は「和食の基本は一汁三菜」と宣伝し,悪しき伝統食へと私たちを誘導回帰させようとしている.考えるまでもなく三度三度の食事に味噌汁がつくなんてことが,歴史的に日本人の食生活の基本であったはずがない.米朝師匠の言う通りである [←減塩食 (五)] .
一日三食を官製定義の「和食」にして,「飯と味噌汁と漬物」を基本とする一汁三菜にすると,食塩摂取量を一日 6g に抑えるのは困難になってくる.しかし「飯と味噌汁と漬物」にこだわらず,「主食+おかず」の形で色んなものを偏らずに食べていれば,自然に食塩摂取量は減る.減塩食生活のハードルは「和食」の味噌汁だ.私たち高齢者は「和食」離れを心掛けたいものである.(了)
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