« 夜来香 | トップページ | 減塩食 (七) »

2014年10月 1日 (水)

減塩食 (六)

 前回の記事に,永谷園の『おみそ汁の大革命 野菜いきいき その2 減塩』は「20% 減塩」を標榜しており,一杯あたりの食塩量は 1.4g であると書いた.これは自社製品比であろう.減塩タイプの他社製品で,一杯あたりの食塩量が 1.2g のものもある.
 薄味の味噌汁は,どこまで食塩量を減らせるのだろうか.永谷園の『おみそ汁の大革命 野菜いきいき その2 減塩』を使って試食してみた.

【永谷園『おみそ汁の大革命 野菜いきいき その2 減塩』
の味噌を減らしたもの】
Nagatanien

 この商品は凍結乾燥野菜と小袋に包装された調合味噌がセットになっているのだが,パッケージに書かれた通りの作り方では,かなり味が濃い.そこで調合味噌の量を減らしてみたところ,2/3 の量で十分であった.すなわちこれなら一杯 1g 以下の食塩量で済む.
 なんでこんなことをしたかというと,普通に味噌を使って味噌汁を作ると,一椀に一体どのくらいの食塩が含まれているかがわからないから,インスタント味噌汁を用いて,塩味の加減と食塩量の関係を舌で覚えようというわけである.味噌汁一椀に食塩 1g 以下でいきたい.

 ここで味噌汁について,そもそもの話をしてみたい.
 京都出身の堀井憲一郎が『江戸の気分』(講談社現代新書) で次のように書いている.
当時の商家については桂米朝が説明している。「明治大正の初めくらいまでの船場あたりの商家の食事というのは、朝はあったかいご飯にお漬物ですね。(……) 味噌汁がつくなんていう家は、よっぽどそら良い家なんですな」
江戸方では、商家では味噌汁だけはついたようであるが、その辺は上方とは違う。京都人の私は、東京へ出てきたとき、何でも味噌汁がつくので、ちょっと面食らったことがある。上方では、いつも食事に味噌汁がつくという風習はなかった。

 堀井憲一郎が《東京へ出てきたとき》と書いているのは,早稲田大学に入って上京したことをいっている.
 《何でも味噌汁がつくので、ちょっと面食らったことがある》は,私にも同じ記憶があるが,東京の定食屋とか学生食堂などの外食の話だろうと思う.外食で何にでも味噌汁がついてくるのは,味噌汁をつけると食事として格好がつくということからであろう.東京ではないが,群馬県の私のうちでも毎度の食事に味噌汁をつけることはなかった.

 さて,政府は官製「和食」をユネスコ無形文化遺産に登録し,「和食ビジネス」を推進するスローガンとして「一汁三菜が和食の基本」を掲げた.ここで「一汁」とは飯と汁 (味噌汁) と漬物のことである.
 しかし「一汁三菜が和食の基本」に歴史的根拠がないことはこのブログで繰り返し述べてきた.また,政府が定義するところの「和食」はどうしても塩けの多い汁と漬物とおかずで米飯をたくさん食うことになり,これはかつて日本人が短命であった原因の一つであったといえる.政府は「和食はヘルシー」と宣伝するが,その「和食」が「一汁三菜」のことだとするなら,和食がヘルシーだというのは嘘である.
 高齢者は,健康のために「官製和食」離れをしよう.毎日の食事から汁と漬物を減らすだけで,かなり高齢者の食事の減塩が楽に実行できる.味噌汁好きの人でも,一椀の食塩 1g 以下の味噌汁を一日に一度摂るだけにして,残り二回の食事は汁なしにするのが良い.ただし汁を政府が推す味噌汁でなく,すまし汁にすれば,この限りではないこと言うまでもない.

【関連記事】
減塩食 (一)
減塩食 (二)
減塩食 (三)
減塩食 (四)
減塩食 (五)
減塩食 (七)

|

« 夜来香 | トップページ | 減塩食 (七) »

食品の話題」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 減塩食 (六):

« 夜来香 | トップページ | 減塩食 (七) »