焼き飯
毎日新聞(9/24 11:37) によると,京都府警南署は九月二十四日夜,朝日新聞販売所に魚を投げ入れたとして住所および職業不詳の男を軽犯罪法違反容疑で現行犯逮捕した.
南署によると,この朝日新聞販売所には最近《生卵やチャーハン》が投げ入れられていて,同署は関連を捜査していると毎日新聞は書いている.
同じ事件について読売新聞(Yomiuri Online 9/25 13:05) はどう書いているかというと,新聞販売所に投げ込まれたのは《生卵や焼きめし》だったとしている.
間違いなく両記事とも南署の発表を基にしているはずだが,毎日新聞は《チャーハン》だといい,読売は《焼きめし》だという.どっちかが記事にする段階で勝手に「チャーハン→焼きめし」あるいは「焼きめし→チャーハン」に変えてしまったと考えられるが,そのように書き換えた記者の頭の中では,チャーハンと焼き飯が区別されていないことは明らかである.
確かに Wikipedia【チャーハン】でも,《焼飯(やきめし)、炒飯(いりめし)、炒めご飯(いためごはん)といった名前で呼ばれることも多い》と記載していて,チャーハンと焼き飯を区別していない.
ただ,昭和三十年代中頃までの家庭料理としてはチャーハンではなく焼き飯と呼ぶのが普通ではなかったかと思う.
チャーハンは日本風の中華料理であり,鶏卵を使う.ところが昔は卵は高級食材であって,気軽に食えるものではなかったのである.病気見舞いに卵を贈ったほどだ.(紙箱に籾殻を入れ,これに生卵を埋めるようにして包装した)
一方の焼き飯は,あるのは冷や飯だけで他に何もおかずがない時の節約料理の一つであった.長ネギまたは玉ネギを刻んで冷や飯と一緒に油で炒めれば,それで焼き飯の出来上がりであった.
その時代は電気冷蔵庫が家庭に普及する前 (氷で冷やす木製の小さな箱に過ぎない「冷蔵庫」はあった) だから,そもそも庶民の家庭の台所に,焼き飯に入れる有り合わせの材料とか残り物なんかはなかったのである.食事の材料は,使うときに買ってくるのが基本で,あるのはネギやジャガイモの他には保存のきく乾物だけだった.その乾物で,ネギ以外に焼き飯に入れたものに干し桜えびがあって,これが入ると節約料理の焼き飯が大ごちそうに化けた.遠い日の思い出である.
さて,ある個人サイトの筆者の独自研究によると,焼き飯は大阪の食い物であり,お好み焼き屋のメニューであるという.家庭で作るのは炒めご飯といい,焼き飯ではないそうだ.
随分と夜郎自大なことをいう人である.独自研究にも程がある.
まれなことだが,大阪人の中には,こと食い物に関する限りすべて大阪が基準標準だと考える人がいるので厄介である.そういう大阪人が Wikipedia【チャーハン】の編集に参加していないのはラッキーであると思った次第.
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焼き飯 (補遺一)
焼き飯 (補遺二)
焼き飯 (補遺三)
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