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2014年7月15日 (火)

東京ガスのCM

 先日の記事「CMを見て泣いた」(7/4) に書いた東京ガスのTVCM『家族の絆・母からのエール』編が放送中止になった件に関して,13日放送のフジテレビ『ワイドナB面』で松本人志が以下のように語った

これからは、どこの誰か名乗って、どういう理由でこれを見てイヤやったとか、腹が立ったとか、悲しかったとか、しっかり聞いて、それに答えない人はクレームとしてカウントしない方がいいと思いますね。クレームつける人は同じ、クレーム癖がついている人、クレームしてる人は絶対数決まっていて、何にでもクレームつける癖のある人が絶対いますよ!ちゃんとこのデータさえ取ったら、クレーム、僕無くなると思うんですよ。名乗ってまで、クレーム言いたくない人って絶対いるんで、これはカウントしなくていいんですよ。じゃないと世の中にとってよくない!

 狭い世間で生きてきた松本は,ここで大きな勘違いをしている.
 東京ガスは,数件のクレームに屈して『家族の絆・母からのエール』編の放映を中止したのではないはずだ.東京ガスの経営者が放映中止を決断したのは,そのわずかなクレームの向うに,数百人数千人,あるいはそれ以上の就職活動連敗中の学生たちの姿を見たからなのである.
 番組中で他の出演者が「『家族の絆・母からのエール』編を見て元気付けられるひともいる (から放映中止する必要はない) 」と発言していたが,連敗中の就活生全員がこのCMで元気になるわけでもあるまい.このTVCMで心の傷に塩を擦り込まれる学生がたとえ少数でもいるとすれば,その少数の若者たちの心を傷つけるに忍びない,その結果としてTVCM制作費を無駄に捨てることにはなるがそれは構わない,あえて放映中止しようと東京ガス経営陣は考えたに違いないのである.

 私はかつて会社で品質保証部門の責任者だった.品質保証部門の一部署にコールセンターがあり,そこのオペレーターたちは電話を受けると,電話をかけてきた顧客の氏名と連絡先をたずねるが,それはあとで連絡する必要が生じた場合のためにたずねるのであって,氏名を明らかにしないからといってクレーム対応に差をつけることは絶対にしない.これは企業の顧客対応の基本中の基本だ.「名前をいうほどの者ではないんですが,いやちょっと気になることがあったので電話しました」という軽いクレーム電話の向うに重大な品質事故やサービスの欠陥が潜んでいる可能性があるからである.それどころか,住所氏名はもちろん,何が言いたいのかわからない電話に一時間でも二時間でも辛抱強く応対を続けるのが,コールセンターのオペレーターというものなのである.
 《どこの誰か名乗って、どういう理由でこれを見てイヤやったとか、腹が立ったとか、悲しかったとか、しっかり聞いて、それに答えない人はクレームとしてカウントしない方がいい》と松本は言うが,そんなことをしたら企業は自分で自分の首を絞めることになる.松本人志は,こういう企業社会の常識を知らぬのなら,この種のことについて発言すべきでない.ともあれ,まともな企業の顧客対応部門の人間であれば,今回の東京ガスの件については必ずや東京ガスの『家族の絆・母からのエール』編放映中止を支持するであろう.

 余談だが,雁屋哲が『美味しんぼ』で物議を醸したとき,松本人志はテレビ番組で「漫画なら漫画家,映画なら監督がいわば“神”なのであって,まわりが批判してストーリーを変更させたり作品つくるのをやめさせることは“神への冒涜”です」という意見を述べて,雁屋批判を批判した.今回の東京ガスの件に関する松本人志の意見は,これと通底するものがある.企業のTVCMを制作するにあたっては,どんな内容であろうとその企業が“神”であり,消費者が抗議するのはおかしいと松本はいうのであろう.

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