言葉を知らぬ書評家って…
奥村知花さんという女性がいる.
《奥村知花 (chicachicao) on Twitter》に書かれている彼女のプロフィルによると,《本しゃべりすと。フリーで書籍のPRをしています。大好きな作家は太宰治、サマセット・モーム》だそうな.「本しゃべりすと」が意味不明だが,週刊アスキー誌ほか,あちこちに書評を書いておられるところをみると書評家に違いない.またラジオ番組にも出演されているという.
その奥村知花さんが週刊アスキー(7/15,22合併号) 掲載の書評欄《私のハマった3冊》で,『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』(渡辺俊美著,マガジンハウス) を評して次のように書いている.
《親は子を思って弁当をあつらえ、子はそれを受けて空になった弁当箱を持って帰る。それはさながら“愛情の往復書簡”だ。》
この引用部分だけ読んだ人は「子に持たせる弁当を,自分で作らずにオーダーメイドしてやる親がいるんだね驚いたなあ」などと思うであろうが,実は違う.『461個の弁当は、親父と息子の男の約束。』の著者である渡辺俊美というかたは,自ら息子さんに弁当をこしらえてあげているのである.
そのことは奥村知花さんの書評中にもそう書かれていて,しかしながら何故か奥村さんは《弁当をあつらえ》と書き,従ってこの書評の論旨が,わけのわからぬことになっている.
最近の若いやつは「あつらえる」という言葉の意味を知らないんだね,と思ったら,これが大間違い.念のため失礼ながらネット上の画像を見ると,奥村知花さんは妙齢かつ美貌の女性のようで「最近の若いやつ」ではなかった.
うーむ,若いというわけではない年齢になるまで「あつらえる」の意味を知らずにきたということは,あまり本を読まない人なのであろう.辞書をひく習慣のない人なんだろう.たぶん「あつらえる」と「こしらえる」を取り違えているのだ.
あ,でも奥村知花さんの仕事は書評だ.本を読まない書評家って職業としてありなのか.
以上,私はペテンで世渡りする人を嫌いなので,嫌味ったらしく書いてみたが,ネットやマスコミに露出度の高い人が無教養な言葉の誤用をすると,ネットを通じてすぐ広まってしまうのだよね.いやな予感がするなあ.
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