ラテン音楽のガイドブック
先日の記事「小さな星」(7/16) に書いたミロ・ヘルナンデス楽団の『エストレリータ』だが,これが収録されているCDを Amazon に注文するついでに,なにか他にいいものはないかと物色していたら,竹村淳『ラテン音楽名曲名演ベスト111』を見つけた.書籍(280ページ) に「お宝音源CD」が付いて二千八百円,これは安いと思って即購入した.
本が届いて,私は勘違いに気がついた.「お宝音源CD」は五枚組くらいの豪華付録で,これに百十一曲が入っていると思い込んでいたのであるが,実は一枚だけの二十五曲だった.
冷静に考えると図々しい勘違いだが,買ってしまったものは仕方がないので,まず書籍のほうから読み始めた.
すると,である.『ラテン音楽名曲名演ベスト111』は大変に読み応えのある本で,仮に付録「お宝音源CD」なしでも,この内容で二千八百円はかなり安いと思われたのである.
私はラテン音楽が好きであるが,実はメキシコもカリブ海周辺もアンデス地方も,頭の中でみんなまとめてラテン音楽にしてしまっており,実にいい加減なラテン音楽ファンなのである.
それを『ラテン音楽名曲名演ベスト111』はわかりやすく解説してくれており,大変参考になった.
ちなみに Wikipedia【ラテン音楽】によると,ラテン音楽は次のようなスタイルに分類されるらしい.
・キューバなどカリブ系
・コロンビア,ベネスエラ
・ブラジル音楽
・アルゼンチン音楽,ウルグアイ音楽
・メキシコなど中米
・ペルー,ボリビア,エクアドル,チリなどアンデス系
『ラテン音楽名曲名演ベスト111』を読んで思ったのは,上に挙げた各地の音楽をよりよく鑑賞するには,それらの地域の歴史を知ったほうがいいということである.
例えば本書中の挿話の一つであるが,1996年12月17日夜,ペルーの首都・リマの日本大使公邸をトゥパク・アマル革命運動 (MRTA) の構成員14人が占拠した「在ペルー日本大使公邸占拠事件」(本書p.76).
私はフジモリ大統領の指示によって惨殺されたMRTAについて,ほとんど知るところがない.MRTAとはなんだったのか.本当にテロ組織だったのか.腐敗した独裁者フジモリによるMRTAメンバー惨殺に道義的正当性はあったのだろうか.(2001年9月,ペルーの司法長官はフジモリを殺人罪で起訴した.日本大使公邸事件の際、投降したゲリラを射殺した容疑である.逃亡したフジモリに対して,2003年3月には国際刑事警察機構を通じ人道犯罪の罪で国際手配の依頼が行われた)
ついでに本書からの挿話をもう一つ.
阪神淡路大震災が起きた1995年1月17日の三日後,地震国メキシコからの救援隊が被災地に到着した.
救援隊員たちは夜になると空き地に集まり,焚き火をして暖をとりながら,持参のギターの弾き語りを披露して被災した人々を慰めた.これがテレビで報道されたとき,流れていた歌は『シェリト・リンド』,メキシコの名歌である.
このとき救援隊員の一人が言った言葉.《被災地の夜は暗くて淋しいものです。でも音楽があると少しちがいます。》(本書p.62)
こんなラテン音楽の解説が満載である.ほんとにいい買い物をした.
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