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2014年5月18日 (日)

赤ウインナ

 思い出は最高の調味料であると言ったのは誰であったか.

 読売新聞社サイトのコンテンツである掲示板『発言小町』に,母子家庭で育った男性が,仕事で忙しかった母親が作ってくれた目玉焼きとソーセージの食事を懐かしむトピが立っている.(「話題」タブ;5/16)
 ソーセージは,たぶんウインナを炒めたものであろう.
 トピ主は,今はもう亡くなった母を懐かしく思って自分で作ったりするのだが,目玉焼きとソーセージを新婚の妻が「お袋の味がそれ?」「貧乏くさい」と貶すのだそうで,次第に彼は妻が疎ましくなってきたと書いている.

 私の母親は料理下手であった.
 戦時中は親元を離れ,新潟の海軍病院で看護婦見習いとして働き,戦後は群馬で所帯をもったものの,戦時中と変わらぬ食うや食わずの生活.料理をしようにも材料がないわけで,料理がうまくなる道理がなかった.
 朝も昼もサツマイモの蒸かしたのを食べ,夜はスイトンをすする.
 おかげで終戦直後の一時期,目が見えなくなったことがあると母の口から聞いた覚えがある.
 昭和三十年代に入って食糧事情が大分よくなった頃,その料理下手な母がよく拵えたのは,キャベツとキュウリの千切りと,魚肉ソーセージを細く切ったものを混ぜて,これにウスターソースをかけたものであった.
 他人からすれば料理のうちに入らぬものだろうが,そこはそれ,思い出は最高の調味料.
 今でも姉と弟と,たまに会うと「あれはうまかったね」と思い出話で盛り上がる.
 いやもう,この上なく「お袋の味がそれ?」「貧乏くさい」ではありますが.

 母親が料理下手だったから,その反動で姉と私は料理が好きになった.
 中学生の時,新聞の家庭欄に載っていたレシピを頼りに,二人で餃子を作って家族に食べさせたのは今も記憶に残っているし,他にはホットケーキもよく拵えた.
 長じた私は,姉ほど料理上手ではないが,自分が食うくらいのものは一通り作れる.
卵料理なら,卵三個で紡錘形のプレーンオムレツも作れるし,サニーサイドアップもターンオーバーも,ひとに見せて恥ずかしくないものを焼ける.
 ではあるけれど,フライパンに蓋をして卵を蒸し焼きにした家庭風の目玉焼きも結構なものだと思うし,これに赤ウインナの炒めたやつが添えてあれば,昔はご馳走だったことに異論はない.

 さてその赤ウインナだが,昭和中頃の昔は魚肉やウサギの肉を使用していたと聞いているが,今はどうか.原材料を以下に示す.(《》は各社のサイトから引用した)

[日本ハム 切れ目入り赤ウインナー]
豚肉、豚脂肪、鶏肉、鶏皮、結着材料(ポーク粗ゼラチン、大豆たん白、卵たん白、乳たん白)、食塩、香辛料、糖類(水あめ、ぶどう糖、砂糖)、還元水あめ、ポークエキス、豚コラーゲン、たん白加水分解物、酵母エキス、加工デンプン、調味料(有機酸等)、リン酸塩(Na)、カゼインNa、酸化防止剤(ビタミンC)、増粘多糖類、pH調整剤、発色剤(亜硝酸Na)、着色料(コチニール、アナトー)、香辛料抽出物、(原材料の一部に牛肉を含む)

[丸大食品 おべんとうの赤]
豚肉、鶏肉、豚脂肪、結着材料(でん粉、植物性たん白)、食塩、砂糖、チキンエキス、香辛料、加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、リン酸塩(Na)、保存料(ソルビン酸)、酸化防止剤(ビタミンC)、pH調整剤、発色剤(亜硝酸Na)、アナトー色素、(原材料の一部に卵、乳、牛肉、大豆を含む)

 比較のために普通のソーセージの例も挙げておく.

[伊藤ハム グランドアルトバイエルン]
豚肉、豚脂肪、糖類(水あめ、砂糖)、食塩、香辛料、調味料(アミノ酸等)、リン酸塩(Na)、酸化防止剤(ビタミンC)、pH調整剤、発色剤(亜硝酸Na)

「切れ目入り赤ウインナー」も「おべんとうの赤」も,使用肉こそ豚肉であるが,わざわざ買ってまで食うことはない品質ではある.
「表面が白くなった目玉焼きの赤ウインナ添え」は遠い昭和の思い出にしておくのがよさそうだ.

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