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2014年5月31日 (土)

赤ワインの仮説

 私の親しい友人にワイン好きの男がいる.
 普通は「ワインが好き」というと,懐具合がよくて薀蓄たれという鼻持ちならない野郎であるが,この友人は年金生活者なので,薀蓄こそ盛大にたれるが安ワインしか飲まない (飲めない).
 その薀蓄の一つが「フレンチパラドックス“French paradox”」である.

 Wikipedia【フレンチパラドックス】
フレンチパラドックス(英: French paradox)とは、フランス人が相対的に喫煙率が高く、飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事を摂取しているにもかかわらず、冠状動脈性心臓病に罹患することが比較的低いことが観察されていることを言う。フレンチパラドックスの用語は、フランスのボルドー大学の科学者であるセルジュ・レナウド博士による造語である。赤ワインが心臓疾患の発生率を減少させることを推定したこのパラドックスの説明が、1991年に米国の「60 Minutes」で放映されたときは、赤ワインの消費量が44%も増加し、いくつかのワイナリーは、製品に「健康食品」のラベルを付ける権利の獲得のためにロビー活動を始めた。

 これはフランスの研究者 Serge Renaud が立てた仮説に過ぎないのであるが,有名な学術誌である The Lancet に掲載されたとたん,世の酒飲みに大受けした.
 上に書いた私の友人は,冠状動脈疾患に関する仮説に過ぎぬフレンチパラドックスを,強引に「赤ワインこそが百薬の長である」と言い張り,安飲み屋で二本も赤ワインを飲んで翌日は二日酔いに苦しんでいる有様である.
 百薬の長で二日酔いになったら,それこそがパラドックスというものだ.

 さて S. Renaud による赤ワインの仮説が広まったあと,これを批判する研究者がいて,結局,《WHOにより提示された1990年から2000年の統計情報は、フランスで心臓病の発生率が過小評価されている可能性があり、実際には近隣諸国の発生率とあまり変わらないかもしれないとし、食物研究評価の著者は、飽和脂肪酸の消費と冠動脈心疾患リスクとの間に因果関係を確立するためには十分な証拠はなかったと結論付けた》ということになってしまった.(Wikipedia【フレンチパラドックス】)

 一昨日の日本語版 WIRED (5/29) に「赤ワインは健康にいい、わけではない」という記事が掲載された.

 これまでフレンチパラドックスは,赤ワインに含まれるポリフェノールであるレスベラトロールと関係があると考えられてきた.(Wikipedia【レスベラトロール】参照)

 日本語版 WIRED の記事によれば,ジョンズ・ホプキンス大学医学部の研究者たちは,イタリア・トスカーナ州のキャンティ地方にある三つの村落に住む,六十歳以上の約八百人を実験の対象として,尿中のレスベラトロール量を毎日検査した.
 この1998年から2009年まで実施された疫学研究で得られた結論は,炎症マーカー・循環器系疾患・ガン・死亡率と,摂取レスベラトロール量との間に相関関係はないというものであった.(報告は2014年,アメリカ医師会内科学雑誌 Jama Internal Medicine 電子版に掲載され,Wikipedia【レスベラトロール】にも記述されている)

 いささかダメ押しの感はあるけれど,これでフレンチパラドックス仮説は終わったということだろう.件の赤ワイン二日酔いの友人に今度会ったら,貴君が好きなキャンティごとき安ワインは百薬の長ではないと説教してやろうと思う.

 余談だが,日本の某ビールメーカーの研究チームが,ビールは健康にいいという説を発表したが,これは全然話題にならなかった.
 当然である.世の高尿酸値のお父さんたちは,ビールは体によくないと,かたく信じているし,若い人は健康なんぞ気にしつつビールを飲んでいるわけがないからである.

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