おはぎ春秋
一昨日の記事「ぼたもちの謎」に《昭和三十年代,私の母親は餅をついて小豆の粒餡でくるみ,これを春でも秋でも「おはぎ」と呼んでいた》と書いたあと,吉永南央さんの『その日まで』を読み始めた.
以下は主人公のお草さんと従業員の久美が話している場面 (文春文庫 p.66) で,季節は四月の後半.
《「つづらでおまけにしているのを、まだ知らないみたいだから」
言った草は奥の自宅の台所から朱塗りの二段重を持ってきて、久美に蓋を開けてみせた。朝のうちに作っておいた、おはぎが詰めてある。
「おいしそうですねえ」
「食べてく? 一段持ってく?」
「もちろん一段いただきます」》
このあと,お草さんと久美が,おはぎで夕食を済ませる場面が続く.
吉永南央さんは1964年の埼玉県生まれで,群馬県立女子大学卒業.お草さんを主人公にしたシリーズの舞台は群馬県の高崎市がモデルである.
私の亡くなった母親は新潟県の生まれだが,四十代後半の歳で死ぬまで,人生の半分以上を群馬県で過ごした.
その母は春でも秋でも「おはぎ」と言い「ぼたもち」とは言わなかった.
私よりもずっと若い吉永南央さんも春に「おはぎ」を作ることを知って,ちょっと郷里の群馬を懐かしく思った.
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