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2014年4月18日 (金)

忠誠

『ヒトの進化 七○○万年史』(ちくま新書, p203) から.
長距離交易がはじまってからやや時間を置いて、アフリカでビーズが製作されるようになったのは、接触の過程でそれぞれの集団(部族)が自己のアイデンティティーを確立しようとする意志が働いたに違いない。装身具は、ただの飾りではない。部族のアイデンティティーの表徴であろうし、身につけることで「自分」と「他者」を区別するもの、部族内での地位を表す象徴ともなった。人類は、初めて自我を備えたのである。

 現代の男たちが,己が所属する部族のアイデンティティーを示すために身に着ける装身具には何があるだろう.
 最近はずいぶん廃れたが,社章(バッジ) はその一つだろう.
 森村誠一が『社奴』(1984),『社賊』(1985),『社鬼』(1989) を発表した昭和の終り頃まで,旧財閥系の有名企業は言うに及ばず,そこら辺の有象無象の会社の人間も襟に社章をつけていたものだ.
(そういえば「社畜」は誰の造語であったか [末尾註])

 有名企業の場合は所属する部族のアイデンティティーを示すためといえるが,社章にデザインされたロゴを見てもどんな会社かまるでわからぬ場合は,あれは一体なんだったのか.
 私は社章のある会社に勤めたことがないので推測に過ぎぬが,組織に対する忠誠心の証しであったと想像される.

 先日,理研の笹井副センター長が記者会見をした際,ダークスーツの襟に理研の社章をつけていた.
 それを目ざとく見つけた記者が社章について質問すると,笹井氏は,今日は理研の人間であることを示すためにつけてきたと答えた.

 産経ニュース(2014.4.16 20:11)から引用
 記者《これまで、公の場で、笹井氏が理研のバッジを付けているのをみたことがないが
 笹井氏《ここに出てきた目的は謝罪…、多くの皆さんに混乱、迷惑を与えてきたことについて、アドバイザーだった者として、センターの幹部としておわびを申し上げたいというのが一番大きい。一個人としてのみならず、理研の幹部の一人として、ラフな形ではなく、正式ないで立ちというか、理研の所員として臨んでいる

 笹井氏の理研という部族に対する忠誠心の発露というわけだ.部族の利益にならぬことは発言しないと服装で示したのであった.
 社章か.
 随分古いセンスの持ち主であると思ったことである.

[註] 調べてみたら,「社畜」は安土敏の造語だとされている.

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