夜明けの仲間たち
『東京タクシードライバー』(山田清機,朝日新聞出版) の第七話に,元トラック運転手だったタクシードライバーのエピソードが載っている.
そのドライバーによると,トラックの仕事の醍醐味は夜明けにあるという.
例えば午後に東京で荷物を積み込んで,千二百キロを走り,翌朝の八時に福岡に届けるなんていう仕事.
関門海峡で夜明けを迎えるとき,徹夜で走った達成感とともに,風景が目に焼き付くような気がするのだとか.
昔々の昭和四十三年,私が大学に入ってすぐに大学は全学ストライキに突入してしまった.
何もすることがないので,一日中麻雀をして徹夜になることも多かった.徹マンの明け方にラジオをかけて,TBSラジオで午前三時から放送されていた『いすゞ歌うヘッドライト〜コックピットのあなたへ〜』をよく聴いたものだ.
『いすゞ歌うヘッドライト』は,徹夜麻雀の自堕落学生ではなくトラックドライバーをリスナーに想定した番組で,放送終了の朝五時になると,番組パーソナリティがドライバーに安全運転を呼び掛けて終わるのが常だった.この頃はまだ番組のエンディング曲はなかったように思う.
ずっと後になって,たまに早起きしてしまったときにこの番組を聞いて,番組エンディング曲として作られた『夜明けの仲間たち』が気に入った.
この曲は,またさらに経った平成四年(1992年) に,当時の番組パーソナリティであった麻生詩織がレコーディングしてCD化された.
手持ちのオムニバスアルバムにこの麻生詩織バージョンの『夜明けの仲間たち』が入っていて,私は会社員だったからトラックドライバーの夜明けの達成感も目に焼き付く風景も想像するしかないのだが,今も時々聴く.いい曲だと思う.
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