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2014年4月10日 (木)

予想あるいは仮説ということ

 数学の分野には「予想」と呼ばれるものがある.
 いまだに真であるとも偽であるとも証明されていない命題を指し,例えば「リーマン予想」などがそうだ.

「フェルマーの最終定理」も,今は完全に証明されて「ワイルズの定理」あるいは「フェルマー・ワイルズの定理」と呼ばれるが,その証明の前は「フェルマー予想」とも称された「予想」の一つであった.
「フェルマーの最終定理」の証明は,一般向けのノン・フィクション作品が出版されるなどして,よく知られているところである.

 さて,ある数学者が,ある「予想」が真であると証明できたとの論文を発表したとする.
 ところが別の数学者が検証したところ,証明の論理に欠陥があり,その証明は失敗だったと結論された.
 このときに,証明が失敗だったからその「予想」が偽であると考える数学者はいない.
 ある数学者による証明が失敗したということと,その「予想」の真偽とは全く別の問題である.
「フェルマーの最終定理」の完全な証明に至る過程は,その良い例だろう.

 理研の小保方研究員 (以下,小保方) は,昨日の記者会見で《論文撤回は、国際的に「結論が完全なまちがいであった」と発表することになる。著者が間違いと発表することになるので、私は正しいと思っている以上、そのこと(撤回)を世界に発表することは正しい行為ではないと考えている》と述べた.(江分利万作の註;《》は毎日新聞等の報道による)

 小保方がネイチャー論文を撤回したとしても,誰も STAP 細胞の実在に関して否定する者はいない.
 それとこれは全く別の問題である.
 小保方による証明が失敗だったというだけであり,いまだ STAP 細胞の実在は「予想」のままであるというに過ぎない.
 たったこれだけのことすら小保方は,全く理解できていないことを昨日の会見でも露呈してしまった.
 誰かがきちんと彼女に科学の基礎を教育していれば,彼女には何か別の生き方があったろうに.
 進路を間違った哀しい姿をみたような気がする.

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