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2014年4月30日 (水)

「和食」とはなにか 番外編の二

 京都新聞(4/22, 9:19 配信) に「牛乳15万人分調達めど立たず 京都・給食異物混入」という記事が掲載されていた.
 テレビ・新聞の既報のように,城陽市の小学校で給食の牛乳に,紙パックの封を閉める工程で出たとみられる乳成分の焦げが混入していた問題で,京都府内の小中学校など452校が給食に牛乳の配膳を中止した.
 その後,牛乳を出すのは再開されたのだが,別の市でも新たに異物混入があり,4/28 から再び中止となった.

 

 それはそれとして,このニュースを報じた京都新聞に,ある小学校で出された牛乳抜きの給食の写真が載っていた.どうせすぐリンク切れになるだろうが,URL を書いておく.
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140422-00000000-kyt-l26.view-000

 

(↑は4/30 am に既にリンク切れになったが,コピー記事があったので,↓にURLを示す.4/30 12:30 追記)
http://etawill.com/loc/59481/

献立は麦飯,豆腐とワカメの味噌汁と煮物である.
 煮物は,大根とニンジンとサトイモ.
 目を皿のようにしてよく見ると,コンニャクとインゲンの切れっぱしも入っているようだ.
 その量は,汁椀半分ほどの小鉢である.
 私ゃこれを見て,事情を知らぬ人なら,病院給食あるいは戦前の家庭の昼食だと見間違うところだと思った.

 

 京都市教育委員会によると,小学三,四年生の給食での目標摂取熱量は 650 キロカロリー.
 一回の給食において牛乳 (200ミリリットル) は138キロカロリーを占め,タンパク質は目標量の約四分の一,カルシウムは大半を牛乳で賄う.
 牛乳抜きの献立にすると,熱量不足は米飯で,タンパク質不足はおかずで何とかなっても,カルシウムは他の食品で補うのは難しいという.
 こんな献立になってしまう原因は,使える給食費による材料費の制限があるからだが,牛乳抜きの米飯給食は,これでいいのかと思う貧相さである.

 

 話かわって.
 新潟県三条市教育委員会は,今年の十二月から四ヶ月間,すべての小中学校 (三十校) の給食で牛乳の提供を中止することを決めた.
 保護者や栄養士,市職員らが「米飯給食に牛乳は合わない」「和食文化が多様化している中,給食だけでも和食の基本を教える必要がある」と言うからであるという.(毎日新聞4/17 20:23 掲載の記事による)

 

 なーにが「和食の基本を教える必要がある」だ.
 悪口を言わせてもらうが,三条市の栄養士や市職員は,政府が作成した『和食ガイドブック』で三条市の学校給食が紹介されたことでイイ気になっているのではないか.
『和食ガイドブック』中で政府がいうところの「和食の基本」が,日本人の食生活の歴史に関する捏造であることは,このブログで繰り返して述べたとおりである.

 

 繰り返すが,「政府が宣伝するところの一汁三菜」の日本食は,戦後の経済復興から高度経済成長に至る一時期に形作られたものである.日本古来のものではない.
 日本古来の一汁三菜は,室町時代に確立した宴会料理である本膳料理を構成する献立の一部を取り出して簡略にしたものである.内容もおよそ定められており,三種の料理が飯と汁につけば一汁三菜というわけではないのだ.
(私たちには,今は途絶えてしまった本膳料理を見る機会がないが,各地の歴史資料館には,本膳料理がどのようなものであったかを展示していることがある.例えば北九州市の小倉城の東側にある小倉城庭園内の資料館にあったと記憶している)

 

 上に宴会料理と書いたが,まさに一汁三菜は特別の日の特別な献立であり,古来,日本人の普段の食事は,一汁無菜または一汁一菜であった.
 すなわち,汁と漬物 (塩蔵野菜),または汁と漬物と塩っぱいおかずで,たくさんの飯を食うのが戦前の,そして戦後の経済復興の前までの日本人の食事だった.
 栄養バランスなんぞという言葉も概念もなかったのである.
(そもそも「和食」という概念自体が明治期の終り頃に成立したものである)

 

 米飯学校給食は,そもそも三条市における現実の学校給食献立が示しているように,「三菜」をつけることはコストの点で無理である.
 一汁一菜 (京都市の例) か,よくて一汁二菜 (三条市の例;三条市の学給関係者は何を勘違いしたか一汁三菜だと思っているらしいが) だろう.これにプラス牛乳で,タンパク質とカルシウムを補う和洋折衷が妥当である.
 それを無理やりに牛乳を排除し,いかにも和風の献立にするなら,栄養的に貧相なものになってしまう.

 

 三条市の学校給食関係者は,育ち盛りの児童の栄養よりも,我が国の食生活史の捏造に加担するつもりらしい.愚かしさに唖然とするほかない.

【追記 7月24日】
 三条市の学校給食関係者は給食から牛乳を排除するのには熱心だが,児童の栄養には無関心なので,越後名物笹団子を給食献立に入れている.しかもその笹団子が異物混入事故 (針金) を起こした.ばかじゃないか.というか,ばかである.
2014年6月 1日 (日)
新潟県三条市のあきれた学校給食

 

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