食パン半斤
先日,インストアベーカリーのポンパドオルで六枚切りの食パン一斤を購入した.
室温に置いて五日目に,二枚残っていたうちの一枚にアオカビが生えた.
直径1mmくらいの緑色のコロニーが一つあったので,これを直径1cmほど大きめに取り除き,トーストして食べた.
しかし当たり前だが,これは褒められた行為ではない.
着色コロニーが出てくるような状態では,そのパンは全面的に菌糸がはびこっている可能性があるからだ.
一般社団法人日本食品安全協会のサイトに,鈴鹿医療科学大学の長村洋一先生による《「ヤマザキパンはなぜカビないか」論に見る一般人に対する騙し行為》と題した記事がある.
『ヤマザキパンはなぜカビないか』は,悪名高い渡辺雄二が書いたペテン本で,長村先生の文章は渡辺の嘘に対する批判なのだが,この記事の中で長村先生が書いていることが面白かった.少し長いが以下《》に引用する.
《私は数年前に、市民講座の後の質問で「市販の食パンには保存料がたくさん入っているからカビが生えない」という意見に「市販のパンには保存料は入っていません。保存料を使用しなくても工業的に無菌的な環境で製造されたパンは、数日位の日持ちは当然です」と答えたところ、「私は市販のパンは買わなくて、自分の家で食べるパンは全部家庭で作っていますが、3日も持ちません」と答えられた。そこで、「申しにくいことですが、あなたの台所がパン工場より汚いからです」と答えてその方を激怒させたことがある。》
どこにもいるのであるね,こういう愚かな消費者が.
世の中に嘘情報を撒き散らすことで知られる読売新聞 (Yomiuri Online) の掲示板『発言小町』には,パンのトピが立つと待ってましたとばかりに「市販の食パンには保存料がたくさん入っているから,私は市販のパンは買わなくて,自分の家で食べるパンは全部家庭で作ってます」などと無知丸出しの女が登場する.
こういう阿呆たちを生み出しているのが,ペテン師渡辺雄二とその仲間なのである.
大規模製パン業者は,製品がすぐカビてしまうようだと全く商売にならないから,持てる技術の限りを尽くして工場内を清潔に保ち,一日でも長く日持ちするようにしている.
これは製パン工場を見学すると心底感心することである.日持ちに関しては,家庭で焼いたパンなんぞが太刀打ちできるわけがない.
余談だが,包装餅はもっとすごい.
新潟県に本社がある有名メーカーS社の無菌化包装餅の製造工程を見学したことがあるが,製パン工場など足元にも寄れないくらい衛生的であった.
製造日から15ヶ月というロングライフも,むべなるかなと思ったことである.
閑話休題.
インストアベーカリーや街のパン屋さんのパンは,品質管理が徹底している大量生産の製パン工場に比べれば,衛生度の点ではかなり落ちる.おいしさとトレードオフだ.
だから,朝食用の食パンならば半斤ずつ買うのが賢い.
でも私が仕事帰りにポンパドオルに立ち寄ると,既に半斤包装のものは売り切れてしまっている.皆さんよく御存じなのである.
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