蕨餅 (追記あり)
主婦連は「使った食材の名前を正しく表示せよ」という.(昨日の記事「葛切り 葛桜」)
「料理・食品の名称の偽装は悪である」
こういう現代の価値観で私たちの食文化を割り切ることが正しいかどうか,わからぬこともあると私は思う.
Wikipedia【わらびもち】にこうある.
《東海道の日坂宿(現在の静岡県掛川市日坂)の名物としても知られており、谷宗牧の東国紀行(天文13-14年、1544年-1545年)には、「年たけて又くふへしと思ひきや蕨もちゐも命成けり」と、かつて食べたことのあるわらび餅を年をとってから再度食べたことについての歌が詠まれている。ただし掛川周辺は鎌倉時代から歌に歌われるほどの葛布の名産地であり、林道春(林羅山)の「丙辰紀行」(元和2年、1616年)にはこの日坂のわらび餅について、「或は葛の粉をまぜて蒸餅とし。豆の粉に塩を加へて旅人にすすむ。人その蕨餅なりとしりて。其葛餅といふことをしらず。」とあり、 天明6年(1786年)頃の「東街便覧図略」にも、「蕨餅とハ言へと実は掛川の葛の粉を以って作れる也」ともある。》
主婦連的価値観でいえば,おそらくこれが最も古い「食品偽装」である.
ただ,静岡地方の人々は葛粉で作った蕨餅をインチキだとは思っていない.
「だけん しょんないっしょ 昔っから蕨餅は葛粉で作るもんなんだから」
と,静岡在住の私の知人は言っているくらいである.
しかし,ややこしいのは,一方に蕨粉で作る高級和菓子の蕨餅が存在している (残念ながら私はその蕨餅の実物を知らず,本当に蕨粉が使用されているかどうか確信がない) ことである.
Wikipedia【わらびもち】
《奈良県はわらび粉の名産地であり、奈良や近くの京都ではわらび餅の名店が数多く見られる。京都では餡入りの蕨餅が古くから親しまれてきた。》
「使った食材の名前を正しく表示せよ」との主張に従えば,静岡地方で江戸期以来,東海道名物蕨餅として親しまれてきたものを,葛餅に名を改めよということになる.
私は,それはいかがなものかと思う.
上に述べたのは,甘味処や和食料理店のデザートメニューの範疇の話であるが,ついでに加工食品の「わらびもち」について触れておく.
こちらは厳密に原材料が表示されなければならないこと,言うまでもない.
例として,楽天で「わらびもち」を検索すると,以下のようなものがヒットする.
以下,斜体部は引用である.
[1] 商品名「ゼロカロリーきなこわらびもち」
原材料 エリスリトール、きな粉(大豆を含む)、グルコマンナン、わらびでん粉、ゲル化剤(キサンタン、加工デンプン)、香料、セルロース、甘味料(ネオテーム、スクラロース、ステビア)
[2] 商品名「京風わらびもち」
原材料:小豆こしあん、砂糖、でん粉、トレハロース、きな粉、わらび粉、酵素(大豆由来)
[3] 商品名「本わらびもち粉」
原材料/タイ産タピオカ澱粉(60%)、中国産蓮根澱粉(35%)、中国産本蕨(5%)
[4] 商品名「わらびもち粉」
原材料 甘しょ澱粉(さつまいも)
[5] 商品名「わらびもち粉」
原材料 甘藷澱粉(国内産)・加工澱粉
[1] は要するにコンニャクである.
[1] と [2] は「わらびでん粉」「わらび粉」と書いてあるが,記載順から推定すれば,偽装だと言われぬよう,申し訳程度に入れているのであろう.
[3] は「本わらびもち粉」と称しながら,蕨粉ではない「中国産本蕨」を5%使用している.ワラビに含まれる澱粉は1%以下なので,蕨粉に換算すると0.05%以下という勘定だ.姑息としか言いようがない.
[4] と [5] は,静岡の蕨餅のごとき歴史がないのであるからして,不適切な商品名だと批判されるべきである.
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(3/30 追記)
上の記事をアップしたあと,京都の和菓子屋さん『京みずは』が「わらび餅」を通販しているのを知った.
他店が,通販しておきながら原材料をサイトで表示していない中,立派である.
以下『京みずは』のサイトから引用する (斜体部).
商品名「本わらび餅」
砂糖、和三盆糖、きな粉(大豆、遺伝子組み換えでない)、わらび粉、加工澱粉、トレハロース
商品名「抹茶本わらび餅」
砂糖、和三盆糖、きな粉(大豆、遺伝子組み換えでない)、わらび粉、抹茶(有機栽培)、加工澱粉、トレハロース
商品名「黒糖わらび餅」
黒糖、砂糖、きな粉(大豆、遺伝子組み換えでない)、わらび粉、加工澱粉、トレハロース
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