ハムとは何か その三
「ハムとは何か その二」で紹介した,ハモを「つなぎ」に使用していることを製品の差別化ポイントにしている某業者の,腿ハムの原材料を再掲すると以下の通りである.
原材料
豚もも肉,つなぎ (はも),食塩,でん粉,加工でん粉,調味料(アミノ酸),酸化防止剤(エリソルビン酸ナトリウム),ナイアシン,リン酸塩(Na),発色剤(亜硝酸ナトリウム),香辛料,くん液
「豚もも肉」「つなぎ (はも)」「食塩」「酸化防止剤(エリソルビン酸ナトリウム)」は特に問題ない.
ハムやソーセージに,肉の色をきれいなピンク色にみせるために「発色剤(亜硝酸ナトリウム)」を使用することについては賛否両論ある.
否定的な人は,そんなものを使わなくてもハムはできるぞ,と言う.確かにその通りである.しかし発色剤不使用のハムやソーセージを見て食欲を失う人がいることもまた確かなのである.
私がまだ若い頃,日生協の幹部のかたの話をうかがったことがある.
その人は,食品添加物を全面的に否定する必要はないとの考えをもっていて,例えば肉加工品の発色剤は必要悪ですねと言った.
ある日,若い開発担当者が「発色剤不使用のフランクフルトを試作したのでみてください」と言って,皿にそのフランクフルトソーセージを一本載せて持ってきたそうである.
「そのフランクフルトがですね,色と言い形と言い,まるでウ○コみたいでして,こんなもん売り物になるかと却下しました」とその生協幹部は語った.
閑話休題.
この亜硝酸ナトリウムとワンセットになっているのが「酸化防止剤(エリソルビン酸ナトリウム)」である.
肉加工品に亜硝酸ナトリウムを添加する場合は,亜硝酸ナトリウムから発癌性物質のニトロソアミンが生成するのを防ぐために,酸化防止剤は,必須の添加物である.アスコルビン酸(ビタミンC) も同じ目的で使用される.また両者を併用する場合もある.
「ナイアシン」は肉加工食品の肉色を保持する目的で使われる添加物であるが,ハムに使用することは珍しい.普通は亜硝酸ナトリウムで充分のはずであるが,これを添加している理由が私にはわからない.
次は「調味料(アミノ酸)」.
現在の食品添加物表示で問題なのものの一つが,この「調味料(アミノ酸)」である.本当に調味の目的でグルタミン酸ナトリウムを使用しているのか,あるいは日持ち向上効果を有するグリシンの使用を明らかにしたくないのでこう書いているのかが,この表示方法ではわからないからである.従って,塩と香辛料が本来のハムの製法における調味料であるが,としかコメントできない.
「リン酸塩(Na)」は,高価格帯の骨付きハム以外のハムでは,もも肉から筋や余分な脂身を取り除いたあと,これをまとめ,糸で縛って太い棒状に成型結着するが,そのための結着剤である.従って骨付きハムには使われないが,肉片を結着して作る低価格帯のハムは,ほとんどがこれを使用している.
さて問題は,原材料表示で残された「でん粉」「加工でん粉」「くん液」である.
まず「でん粉」「加工でん粉」について.
これらを使用する目的は,水分の保持である.肉が元々持っていた水分ではなく,肉にあとから水を注入し,文字どおり「水増し」するために必要なのである.
どういうことかというと,本来の製法でハムを作ると,塩蔵や乾燥,燻蒸工程があるために水分が失われて,原料肉よりも重量が減少する.
これでは単位重量あたりの製造コストが上昇してしまうため,製造業者としてはこれを防ぎたい.
どうするかというと,インジェクションと呼ばれる製造工程で,塩や香辛料や発色剤等の水溶液 (ピックル液) を注射する際に,同時に水分保持力の強い「でん粉」「加工でん粉」をピックル液に溶かして注入する.
こうすると,やり方によっては出来上がったハムの重量が元の肉よりも重いという奇怪なことが起きる.
前の記事で,このハモを使用したハムの製造者は「○○ハムは昔ながらの製法で一つひとつ丹念に作られている」と宣伝していると書いたが,「でん粉」「加工でん粉」をインジェクションした水増しハムが「昔ながらの製法」であるわけがない.真っ赤な嘘である.
もう一つ,「昔ながらの製法」でない点がある.それが「くん液」と呼ばれる食品添加物の使用である.(「くん液」の「くん」は燻製の「燻」のこと)
(続く)
【関連記事】
ハムとは何か その一
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