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2014年1月26日 (日)

マラチオン混入冷食事件

 マルハニチロホールディングス (以下,マルハHD) の子会社であるアクリフーズの群馬工場で製造された冷凍食品からマラチオンが検出された事件で,群馬県警は昨日25日,同工場の契約社員阿部利樹容疑者を偽計業務妨害容疑で逮捕した.
 この事件は (おそらく) これで決着だろう.事件の構図はたぶんこうだろうと思われていたとおりの容疑者像であった.
 逮捕の報と合わせるようにして,マルハHDの久代敏男社長とアクリフーズの田辺裕社長は同日夜の記者会見で,3月31日付で引責辞任すると発表した.
 事件発生の当初から,あらかじめ両氏ともそう決めていたと思われるが,心中の無念は察するに余りある.

 これから愚かなテレビが「アクリフーズ群馬工場では契約社員の労務管理に問題があった」「ひどい待遇であった」などと言い立てるであろう.
 訳知り顔で,非正規雇用問題が云々と解説するコメンテーターもでてくるであろう.
 しかし当たり前のことだが,雇用問題と食品安全の問題は厳しく区別されなければならない.労務管理に問題があろうがなかろうが,自分達が作った製品に農薬を混入していいわけがない.

 毎日新聞によれば,マルハHDの久代社長は《グループ内に悪質な行為に及ぶ人物の存在を許したことは痛恨の極み。深くおわび申し上げます》(斜体部は引用) と記者会見で述べた.
 これは「従業員の採用に慎重であるべきだった」の意だろうか.
 それもあるだろう.しかし,善良と思われていた人間が,ある日凶悪な行為に走ることもあるのだ.
 食品業界で最近使われている「フードディフェンス」(*) という用語,あるいは物の考え方がある.
 これは基本的に従業員を信用しない立場に立っている.
「フールプルーフ」が「馬鹿でも大丈夫」であるのと同じ意味で,工場の中に悪質な人間がいても大丈夫なように,食品工場の設備とマネジメントシステムは設計されねばならないのである.

 両社長の記者会見でのお詫びの発言はともかくとして,これからアクリフーズを再建しなければならない会社幹部と従業員たちの前途は険しい.
 激減した売り上げのことではない.
「基本的に従業員を信用しない設備とマネジメントシステム」を工場内に構築しなければいけないからだ.
 これは辛いことである.俺はお前を信用しない,お前も俺を信用するな.こういう悲しい価値観で工場を運営していかねばならないのである.

 今回の事件は,食品工場の幹部にとって泣きたいくらいショックだろう.
 従業員を信用しない工場長がいたら,そいつは工場長の名に値しない.かつて工場長の職責を担い,定年まで食品業界に世話になった私はそう思う.
 しかしそのような価値観を転換しなければならなくなった.これが私達の国の劣化でなくてなんだろう.

(*) 「フードディフェンス」については,Bureauveritas Japan 社のサイトで,システム認証事業本部のコンテンツ《「フードディフェンス」に対する世界の潮流》に概説がある.
URL は *****//www.bureauveritas.jp/newsletter/121010/20121010-4.pdf である.
行頭に http: を補って頂きたい.

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反社会的社労士

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