ハムとは何か その一
食品業界ではない人と話していて,ふーむと思ったことがある.
牛脂注入肉の騒ぎで話題となった「インジェクション」のことである.
話の発端はロースハムのこと,つまりロースハムは日本で開発されたものであり,ハムとは別物であるということであった.
詳しくは Wikipedia【ハム】と Wikipedia【ロースハム】に譲るが,日本に於ける食肉加工は,長崎県の片岡伊右衛門が1872年(明治五年) にペンスニというアメリカ人に製法を習って製造したものや,イギリス人ウィリアム・カーティスが1874年(明治七年) ごろに鎌倉郡川上村 (現在の横浜市戸塚区) で製造したものを源流とする.これらは豚の腿肉を使用する正真正銘のハムであった.
(ちなみに,当時のハムは食肉加工品の発色剤である亜硝酸ナトリウムを使用せずに製造されていたが,このハムに近い製法のものが鎌倉ハムクラウン商会で製造されている〈同社は全国ブランドである鎌倉ハム富岡商会とは別の会社である〉)
その後,第一次大戦において中国戦線で捕虜となり,日本に送られてきたアウグスト・ローマイヤー (August Lohmeyer) が,捕虜解放後も日本にとどまり,しばらく食肉加工担当として帝国ホテルで働いていたが,大正十年に帝国ホテルを退職して東京大崎に合資会社ローマイヤー・ソーセージ製作所を起業した.
ローマイヤーは当時のハム・ソーセージ用としては使い道がなかった豚のロース肉を使用して,ハムに似て非なる新しい食肉加工品を創出した.これがロースハムである.
上に「ハムに似て非なる」と書いたが,これはこれで立派な食肉加工品であると私は考える.ローマイヤー製法のロースハムはハムではないが,本来のハムではないことを踏まえていさえすれば,これをロースハムと呼んでも許容範囲にあるだろう.
現在も,高価ではあるが,きちんとローマイヤー製法で製造しているハム業者が存在する.
ところがこのロースハムはその後,ローマイヤー製法から横道にそれて芳しからぬ方向に変質していくのである.
(続く)
【関連記事】
ハムとは何か その二
ハムとは何か その三
ハムとは何か その四
ハムとは何か その五
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