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2013年12月 9日 (月)

「和食」とはなにか その二

 10月25日に書いた記事の続き.
 先月12日,農水省のサイトに『和食ガイドブック』というコンテンツが掲載された.一読して驚いたので,その冒頭の記述を《》に引用する.

 

日本人でいながら、あまり考えてこなかったけれど、「和食」ってなんだろう? 家庭で食べる和食といったら、ご飯とみそ汁、おかずと漬物。町の食堂の焼き魚定食も和食。カレーライスや寿司もご飯が中心だから和食のひとつだろう。麺類も餅も和食の中に入るだろう。伝統的な和食の世界はとても広い。

 

 先に無形文化遺産に登録申請したとき,政府は以下のように言ったはずだ.

 

「和食」の特徴
* 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
 日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情豊かな自然が広がっているため、各地で地域に根差した多様な食材が用いられています。また、素材の味わいを活かす調理技術・調理道具が発達しています。
* 栄養バランスに優れた健康的な食生活
 一汁三菜を基本とする日本の食事スタイルは理想的な栄養バランスと言われています。また、「うま味」を上手に使うことによって動物性油脂の少ない食生活を実現しており、日本人の長寿、肥満防止に役立っています。
* 自然の美しさや季節の移ろいの表現
 食事の場で、自然の美しさや四季の移ろいを表現することも特徴のひとつです。季節の花や葉などで料理を飾りつけたり、季節に合った調度品や器を利用したりして、季節感を楽しみます。
* 正月などの年中行事との密接な関わり
 日本の食文化は、年中行事と密接に関わって育まれてきました。自然の恵みである「食」を分け合い、食の時間を共にすることで、家族や地域の絆を深めてきました。

 

 上に記した四条件が「和食」の特徴であると国民に説明したはずである.それなのに一転して今度は《町の食堂の焼き魚定食も和食。カレーライスや寿司もご飯が中心だから和食のひとつだろう。麺類も餅も和食の中に入るだろう。伝統的な和食の世界はとても広い》と言うのだ.
 上記《「和食」の特徴》で述べている《一汁三菜を基本とする》食事スタイルは,日本人の一部階層の食事スタイルとして一時期に成立し得たものであり,今ではほとんど消えつつある食生活のワンシーンである.そこには《町の食堂の焼き魚定食》や《カレーライスや寿司》《麺類》《》の入る余地はない.そのことに気がついた政府は,慌てて前言修正を図ったようだ.
 また,『和食ガイドブック』の中の記述で,いわゆる「日本型食生活」を「和食」と区別して書いておきながら,米飯を採用した学校給食の献立を「和食」として取り上げている.例としてあげられている献立を見ると,揚げ物や乳製品が入っていて,しかも一汁二菜である.学校給食の献立は,成長期の学童を対象にした「日本型食生活=和洋折衷」の一典型であるが,しかしこれは当然ながら政府がいうところの「和食=一汁三菜を基本とする日本の食事スタイル」ではない (栄養のことを考慮すれば,学校給食は和洋折衷が優れている) .
 すなわち無形文化遺産に登録した「和食」と,『和食ガイドブック』に書かれている「和食」が異なっている.無形文化遺産の「和食」にはカレーライスが含まれないが,『和食ガイドブック』はカレーライスは《ご飯が中心だから和食》だと言う.その論理なら栄養バランス崩れまくりの日本的ジャンクフードである牛丼も和食だ.香港の粥麺専家のメニューである中華粥も,ドリアもチャーハンも,ドイツのミルヒライスもスペインのアロス・コン・レチェも「和食」になってしまう.一体何を考えているのか.無定見もここに極まれり,といえよう.同じ文書に関して,諸外国向けの説明と国内向けの説明を二つ用意するのは我が政府の常套手段ではあるが,ユネスコに二枚舌を使ってどうするのか.

 

 農水省は,『和食ガイドブック』の記述に従って「和食」紹介リーフレット英語版に,カレーライスと牛丼と立ち食い蕎麦 (註) と,サラリーマンのガッツリ昼飯の定番「カツ丼と盛り蕎麦セット」を掲載せよ.ユネスコが腰を抜かすであろう.

(註) 植木不等式氏はこれを「サラリーマンの三大栄養素」と呼んだ.(笑)

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【参考資料】 農林水産省「我が国の食文化

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