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2013年12月19日 (木)

奇想天外なゆでたまご

 味付ゆでたまごを製造する際に,現在畜舎の消毒などに広く使用されている消毒剤,いわゆる逆性石けんである塩化ジデシルジメチルアンモニウム (DDAC) を使用したとして,盛岡市の鶏卵製造・加工会社「岩手ファーム」の食品加工場を,盛岡市保健所は12月16日,無期限の営業禁止処分とした.
 同社は保健所の調べに対して最初は DDAC の使用を否定していたが,16日に認めたという.
 盛岡市保健所が発表した処分は以下の通り.
公表年月日     2013年12月16日
違反食品名     味付けゆでたまご (ママ)
適用条項      食品衛生法第55条第1項
違反内容      食品衛生法第10条違反
違反食品製造者名  有限会社岩手ファーム
違反商品製造施設の所在地  盛岡市玉山区下田字古河川原65-20
行政処分内容    営業禁止(*)

(*) 有期限である営業停止に対して,営業禁止という行政処分は,当該事業者に改善が見込めない場合に行われる.
 食品衛生法に対する知識がなかったとかであれば期限を定めた営業停止として指導が行われるのであるが,岩手ファームは意図的に DDAC を使用し,かつ使用の事実を隠ぺいするなどして,著しく保健所の心象を損ねたものと思われる.
 また新聞記事から,発覚は内部通報ではないかと推測される.

 このニュースは読売新聞が最初に報じた.一日遅れて朝日新聞.毎日新聞はさらに遅くなってから報道したが,なぜか有料ページに掲載した.
 その時点 (12月17日午前) で岩手ファームのサイトを見てみたが,何も書かれていなかった.

 私は一度しか食べたことがないが,同社の味付ゆでたまごはコンビニ等で販売されている.一部のネット情報では,キヨスクの味付ゆでたまごは岩手ファームのものだと書かれたが,誤解と思われる (キヨスクは回収広告を出していない).
 主要コンビニも,12月17日午前時点では,この事件に関するサイト上でのアナウンスをしていなかった.

 盛岡市保健所の行政処分公表から二日経過した12月18日になって,ようやく岩手ファームは味付ゆでたまごの回収広告をサイトに掲載した.
 回収広告が遅い.遅すぎる.しかも回収広告の日付が実際の公表より一日早い12月17日になっているのが妙である.なにがあったのか.
 以下,製造者である岩手ファームと,回収作業にあたる販売各社のサイトを調べてみた.

岩手ファーム

マルエツ
 JA全農たまごが販売者の商品と,マルエツ自身が販売者のものがある.
 マルエツの回収広告の文章に一部不適切な文言がある.それは《一部商品から、指定外添加物である動物用医薬品(塩化ジデシルジメチルアンモニウム)が基準値を上回って検出された為、商品を回収することになりました》である.
 DDAC はそもそも食品衛生法で使用が禁じられているから回収するのであって,「基準値を上回」っていたからではないのだが,岩手ファームは全国紙各紙の取材に対して,基準値を上回っていたから回収すると答えている.
 これからわかるのは,岩手ファームが最初に回収依頼したのはマルエツで,しかもマルエツは岩手ファームの言い分を鵜呑みにしたということである.
 岩手ファームの回収広告も最初に見たときにはそうなっていた気がするが,記録しなかったので断言できない.

サークルKサンクス
 JA全農たまごが販売者

ユニー
 JA全農たまごが販売者

JA全農たまご
 JA全農たまごが販売者のものと,(株)中島鶏卵市場のものがある.

ローソンおよびローソンストア100
 コンビニ各社の中で,ローソンの回収広告が一番遅かった.

 さて新聞報道では鶏卵をゆでる熱水に添加していたように読める.しかし,ゆでたあと塩味をつけるために卵を食塩水に漬けるが,その食塩水にも添加していた可能性はないのだろうか.
 消毒薬を使って卵をゆでるとは奇想天外であるが,なぜ味付ゆでたまごの製造ラインで DDAC を使用したのか.
 岩手ファームは新聞社の取材に対して「カビ防止の目的で使用した」と言っているが、ちょっと腑に落ちない.販売店で長期在庫するわけでもない味付ゆでたまごにカビ対策をする必要がない.別の理由があるように思われる.
 そこで DDAC の用途だが,鶏舎 (一般的には畜舎) に従業員が出入りするときに,入り口に大きなバットを置き,そこに DDAC の水溶液を入れ,ゴム長靴を消毒するために使う.何を消毒するかというと,サルモネラ菌である.
 また,鶏舎の中でサルモネラが検出されると,鶏舎内部全体に散布されることがある.
 岩手ファームは,鶏舎だけでなく,ゆでたまごを作る加工場もサルモネラ汚染されていたのではないか.そのため,ゆでたまご製造ラインでも日常的に DDAC を使用していたのではないか.サルモネラ汚染のことは言いたくなかったのだろう.そんな気がする.
 岩手ファームは新聞社の取材に「基準値以下ならいいと思っていた」と答えているが,使用禁止なのに基準値なんぞあるわけがない.こういう嘘八百の言い訳をする岩手ファームの恥知らずに呆れるが,それをそのまま記事にする新聞社も新聞社である.

 余談だが,現在既に岩手ファームのサイトは閉鎖されて,回収広告のみが閲覧できる状態にある.
 なぜ閉鎖したかというと,社長が,食の安全がどうのこうのと偉そうに書いていたからだろう.これでは恥ずかしくて閉鎖せざるを得まい.流通からも非難ごうごうに責められたに違いない.
 閉鎖前の岩手ファームのサイトではトップページに,味付ゆでたまご以外の,生卵の取引先としてJA全農,ウインファーム,横浜鶏卵,阿久津食品,キューピータマゴが特記されていた.
 気の毒なのはオムライスで有名な「日本橋たいめいけん」で,「たいめいけんのオムライスはうちの卵です」と誇らしげに書かれてしまっていた.

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