秘めやかなエチケット
Panasonic の製品でエチケットカッターというのがある.電動の鼻毛切りである.
もう何年前に買ったものか忘れてしまうくらい長く愛用してきたのだが,先日いつものように筒型のカッター部分を鼻の穴に挿入したところ,鼻毛を思いっきり引っ張られて大変痛い思いをした.どうやら刃が切れなくなったようだ.
私は家電運が悪く,色んなものが短寿命で終わったのであるが,このエチケットカッターは驚異的に長持ちした.まるで私の忠実な部下のように,長い間,鼻毛を切り続けてくれた.それで長年の働きに報いるため,鼻毛塚をこしらえて葬ることにした.うそ.
Amazon で現在の価格を調べると,エチケットカッターはたったの 836円である.一回の鼻毛カットのコストは非常に安い.これまで 836回鼻毛を切ったとすれば,一回あたり,たったの一円である.そんなに切ってません.
私の生活コストの中で一番低コストなのが鼻毛のお手入れかも知れないと思うと,少し情けないような気がしないでもないが.
さてどういうわけか替え刃も 836円で,従って本体価格はタダということになるが,販売価格体系としてそれでいいのかと思う.これじゃ消費者は皆,替え刃を買わずに新品を新たに購入することになる.私もそうしたのだけれど,Amazon は少しエコに配慮したほうがいいんではないか.
エチケットカッターは,生活家電としては最安価の部類であろう.こんなに安くてはテレビCMを打つこともかなわないだろうが,試しにやってみたらどうか.
街頭に販促員がいて,そこに通勤途中の会社員が通りかかる.
「今朝,鼻毛をカットしてきましたか?」
「ええ」
「もう一度,これでカットしてみてください」
ぶーん.紙の上にトントン.
「ほーらこんなに」
「おおっ」
というようなCMである.
エチケットカッターがやってることは電気カミソリ (古い言い方だなあ.シェーバーと言えばいいのか) と同じなのに,不遇である.それはなぜか.
ヒゲを剃るという行為は,明るい.これに対して鼻毛カットは,暗い.なんだか秘めやかな気配がする.人に見せてはいけない行為のように思われる.例えば滝川クリステルさんが鼻毛を切っているところを君は見たいか.見たいです.こらこら.
ということはつまり,仮にエチケットカッターが高額商品であったとしても,テレビCMにはなじまないかも知れない.残念である.なに言ってんだかわからないが,ともあれ我が国における鼻毛カット界を支えてきた Panasonic に心から感謝して,この稿を終えたい.
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