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2013年11月17日 (日)

本日の朝食

 今日は取り立てて書くことがないので,本日の朝飯について.
 このあいだの木曜日,仕事帰りにポンパドウルに立ち寄って朝食用のパンを買った.いつもは食パン (パン・ドゥ・ミー) を一斤買うが,たまには別の物を,というわけで,握りこぶしより一回り小さい大きさの丸いフランスパン (名前は忘れた),レーズンとクルミ入りのサワーブロートのようなパン (名前を忘れた),それから雑穀入りのロールパンみたいなもの (これも名前は忘れた) を買った.うー,どうして品名を忘れてしまうのだろう.たぶん,そのパンの見た目,見た目から想像される美味しさ,などと名前が無関係であるからだ.いや無関係は言い過ぎで,私がフランス語を皆目理解できないために名称の意味がわからないせいだ.
 私の場合だが,例えば翻訳小説で登場人物が十人を超すと,途中でわけがわからなくなる.「あれ,こいつは誰だっけ」と前のほうのページにどんどん遡って「あ,父親の弟の妻の息子だった」などと思うことがしばしばである.どういう親戚だ.
 翻訳推理小説では,表紙の次くらいに「主な登場人物」なんてページがあって,いつでも参照できるようになっていることが多い.これは私と同じ低記憶力読者が多いから,翻訳者が読者の便を図ってくれているのだろうか.それとも原作の本自体がそうなっているのだろうか.
純文学系統の本で,登場人物一覧ページがあるのはあまりないだろう.私がロシア文学を全く読んだことがないのは,登場人物をすぐ忘れるという情けない理由による.

 あ,朝飯の話だった.
 ポンパドウルのサイトを覗いて,三つのパンの名前を調べようとしたのだが,人気商品しか紹介されていない.通販ページの「テーブルロールセット」にも含まれていない.いつも棚に陳列されている定番だと思うのだが.
 小さな丸いフランスパンは金曜日の朝食に食べた.それとインスタントのキノコのスープ(註1)と,骨付きハム(註2)のスライスにミニトマトを添えて一枚食べた.ポンパドウルさま,美味しうございました.
 (註1) クノールカップスープ 「ミルク仕立てのきのこのポタージュ」 一食分のエネルギー 61kcal
 (註2) 鎌倉ハムの製品 100グラム650円ほど.うまいけれど高い.おそらく“インジェクション(後述)”はしていない正真正銘のハム.

 余談であるけれど,牛脂注入肉にはミルクカゼインなどが注入されているわけだが,このカゼインによって乳アレルギーの人が発症したらどうすんだよ,死ぬかも知れないぜ,だから牛脂注入肉は肉を偽装した恐ろしい食材なんだ,みたいな事を書いた新聞があった.その伝でいくと,私の冷蔵庫に入っている次のような食材はどうなるのか.

[丸大食品 ロースハム]
名称 ロースハム(スライス)
原材料名 豚ロース肉,還元水あめ,卵たん白,植物性たん白,食塩,ポークブイヨン,昆布エキス,たん白加水分解物,リン酸塩(Na),増粘多糖類,調味料(アミノ酸等),酸化防止剤(ビタミンC),発色剤(亜硝酸Na),カルミン酸色素,香辛料抽出物,(原材料の一部に乳,大豆を含む)

 これを道義的にハムと称してよいかは別として,この原材料表示は,丸大食品の製品に限らない.他のメーカーもほとんど一緒であるが,ここで消費者が知るべきは,普通の安価なハムには卵のたん白質が含まれていることである.その卵たん白質は,植物たん白や調味料と共に水に溶かして,食品加工分野で“インジェクション”と呼ばれる方法で肉に注入される.牛脂注入肉と同じ製造方法である.当然ながら,卵アレルギーの人は食べてはいけない.ではスライスした包装ロースハムは危険な食材なのか.
 今般のレストランにおけるメニュー問題の報道で日本のマスコミがダメなのは,景表法と食品衛生法およびJAS法等食品関連法の問題,食品アレルギーを持つ人と非アレルギーの人に関するアレルギーの問題,それから食品加工技術と料理名表示の問題を,全部一緒くたにして報道していることである.アレルゲンを含む食品や料理は,「一般的に」危険なのではなく,乳や卵等にアレルギーを持つ人にとって危険なのであるからして,問題は「アレルギー表示をどうしたらよいか」なのに,マスコミはホテル等のレストランによる産地偽装の件と一緒にして,景表法違反事件として報道している.
 消費者庁は分かっている.法律間で整合性がとれていないことも当事者だから知っている.消費者庁は自ら次の通知を出しているくらいなのである.
--------------------------------------------------------
アレルギー物質を含む食品に関する表示について
(平成25年9月20日付け消食表第257号)
第1 アレルギー物質を含む食品に関する表示指導要領
………
3 表示方法
………
(8) その他留意事項
………
ク 対面販売や外食産業に係る事業者によって販売される食品は、特定原材料の表示義務を課すものではないが、品書き、メニュー等を通じ、アレルギー疾患を有する者に対する情報提供を充実させるための自主的な取組を講ずることが望ましい。
--------------------------------------------------------

 自主的な取組=行政が指導はしない,望ましい=処罰はしない,と二重に婉曲に書いておきながら,しかるに消費者庁は所管する各法の不備について見解も,整備の方針も示すことなく,レストランに立ち入ってメニューにアレルギー表示をさせようとしているようである.レストランに立ち入って表示指導をするなら,上の通知を廃止してからでなければならぬはずだ.

 立ち入りを受けたレストランは営業停止や閉店するところも出てくるであろう.実質的な処罰である.私は,行政による処罰は法に基づいてなされなければならないと考えるので,この動きを消費者庁の暴走と,このブログに書いている.前にも書いたが,正しい目的は正しい手段によって達成されなければならないと私は考える.

 あ,全然余談になっていない.話は朝飯のことであった.
 さて雑穀のロールパンは土曜日に食べた.前日と同じくハム一枚とブロッコリの茹でたのと,牛乳を添えた.牛乳は小さめのボウルに入れ,これに少しシリアルフレーク(註3)を足してみた.ポンパドウルさま,美味しうございました.
 (註3) ケロッグ オールブラン プレーン

 余談であるけれど,この「美味しうございました」という文言は,かの東京オリンピック銅メダルのランナー,円谷幸吉が遺書に書き残したものである.円谷幸吉の自殺は Wikipedia が《日本のスポーツ史に最大級の痛恨事》と書いている通りであり,また東京オリンピックを知る世代にとって「美味しうございました」は,沢木耕太郎が『敗れざる者たち』所収の「長距離ランナーの遺書」を書いたように,忘れがたい言葉である.例えば降旗康男監督作品『駅』でも円谷の遺書が取り上げられている.ちなみに降旗監督は1934年生まれ.
 さてその遺書の冒頭は「父上様母上様 三日とろろ美味しうございました 干し柿 もちも美味しうございました」である.この「三日とろろ」とはなにか.東北地方南部,特に円谷幸吉の故郷である福島県では,正月の三日にとろろ飯を食べる習慣がある.北関東にも三日とろろの習慣があると書いているブログがあるが,群馬の生まれ育ちである私はそのような習慣は知らない.そこで“三日とろろ 群馬県”で検索してみると,同県太田市にある食品会社の商品「三日とろろ」のことばかりがヒットする.JA群馬のサイトには《「三日とろろ」は主に東北・北関東地方の正月行事で、1月3日にとろろを食べる習慣がある》と書かれているが,農家の習慣なんだろうか.今度の正月に帰省した折りに,農家に嫁いだ姉にきいてみよう.
 正月三日に「三日とろろ」を食べたと書いている群馬県南部の人のブログを一つみつけたが,この御仁は,県南部太田市の産品でありナガイモの類である大和芋と,自然薯の区別も知らぬようで,なんだか群馬の「三日とろろ」は眉唾.

 うー,余談が長すぎる.今朝の朝飯はレーズンとクルミ入りのサワーブロートのようなパンと,丸大ハム製卵たん白入りロースハムとSサイズの卵でハムエッグを作って食べた.ポンパドウルさま,美味しうございました.では.

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